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【子育てエッセイ】#32 あの頃の、必死だった僕たちへ

ふとした時に、子どもたちの写真や

動画を見返してしまうことがよくある。


仕事の、行き帰りの電車の中だったり。


夜、家族みんなが寝静まったあと、

束の間の、ひとり時間だったり。


スマホのアルバムを開いて、

「ちょっとだけ」のつもりで眺め始めるのだけれど、

思った以上に、時間が経っていることも少なくない。


不思議なもので、

まだ半年も経っていない出来事なのに、

ずいぶん昔のことのように、感じられる瞬間がある。


その一方で、

もう何年も前の出来事なのに、

昨日のことみたいに、思い出せる場面もある。


長女が、初めて補助輪なしの自転車に乗れた日。


次女が、まだ言葉にならない言葉で

一生懸命なにかを伝えようとしていた頃。


家族で出かけた公園や、旅行先での何気ないやりとり。



写真や動画に残るのは、

たいてい楽しい時間や、おもしろい瞬間だ。



誰かが笑っている。

誰かがふざけている。

子どもたちの成長が見てとれる。


そんな “これまで” を眺めているだけで、

すこし、胸があたたかくなる。


「こんなこともあったなぁ」

って、

そんな小さな感動を何度も挟みながら、

気づけば心がほぐれている。



でも、

しばらく見ていると、別のことも思い出す。


写真や動画には、残っていない時間のことを。


楽しい出来事と、おもしろい出来事のあいだに、

たしかに存在していたはずの時間のことを。



たとえば、

家族の誰かが体調を崩したことをきっかけに、

じわじわと全員に風邪が広がっていった時期。


最初はひとりだったはずなのに、

気づけばみんなが咳をしていて。


夜中に何度も起きて。

でも、仕事も家事も育児も、待ってはくれなくて。

誰ひとりとして余裕がない。


そんな状態が何日も続いたこともあった。


そして、そんな時に限って、

ほんの些細なことがきっかけで、

妻とぶつかってしまったりする。


ただ、余裕がなかった。

自分も限界だったし、相手も限界だった。

頭では分かっている。


それでも、

言わなくていいことを言ってしまったり、

やさしくできなかったりする。



子どもたちに対してもそうだ。


普段なら笑って受け止められることなのに、

余裕がなくて、

ついガサガサとした関わり方になってしまう。


思い出すだけで、

すこし胸が苦しくなるような時間。


できれば忘れてしまいたいような出来事。


そんなものも、

家族の “これまで” にはたくさんあった。


ただ、写真には残っていない。

動画にも映っていない。



でもやっぱり、

それらの時間も含めて、

“家族” なんだよね。


笑っていた日だけじゃなくて、

余裕がなくて、うまくできなかった日も。


やさしくできた日だけじゃなくて、

どうにもならないくらい疲れていた日も。



その全部を通って、

今の、僕たち “家族” がいる。



だから、写真を見返しながら感じるのは、

「楽しかったなぁ」だけではない。


「あの時、本当に大変だったなぁ」とか、

「それでも、よくここまで来たなぁ」とか、ね。



夫婦の “これまで” 。


子どもたちの “これまで” 。


家族の “これまで” 。



振り返ってみると、そのどれもが、

いまの僕たちにつながってる。


うまくできたことばかりじゃない。

反省したいこともたくさんある。


それでもね、

こうして思い返した時に浮かんでくるのは、

やっぱり “愛おしさ” の方が大きくて。


好きだよ、と思う。


子どもたちにも。

妻にも。


そして、

あの頃の、必死だった僕たちにも。



これから先も、

きっと楽しいことばかりではないだろう。


また余裕を失う日もあるだろうし、

ぶつかる日もあるだろう。


それでも、

それぞれが自分自身のことを大切にしながら、


そして、

お互いのことも大切にしながら、


“これから” の時間を、

一緒に重ねていけたらいいなと思うよ。








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