昭和、男もつらかった 48 高等小学校の教科書①

 昭和初期、鹿児島の農村で生れ、農民としてこの地で82歳の生涯を全うした二夫(つぎお。父)の物語である。

 当時では珍しい一人っ子ながら、尋常小学校を出たら田畑の手伝いをさせたかった父親の吉太郎(祖父)の反対を、母親のハル(祖母)が押し切る形で、高等小学校へ進学できることになった。昭和15(1940)年の春のことである。

 では、高等小学校と尋常小学校はどう違ったのかをで考察したが、noteで父親の来し方を振り返っている娘の二三四(わたし)にはピンと来ないままだった。(前項

 そこでもう少し手掛かりを得られないかとインターネットとにらめっこしていく中で、「これは!」と思えるものに出会った。「国立教育政策研究所教育図書館近代教科書デジタルアーカイブ」である。

 なんと、明治検定制度以前の「明治初年教科書」「明治検定教科書」「国定教科書」「旧制中学校教科書」「高等女学校教科書」「師範学校教科書」「暫定・文部省著作教科書」の本文をPDF形式で閲覧できるのだ。内容には教師用の指導書や、旧植民地教科書や、終戦直後の暫定・文部省著作教科書まで含まれる。

 二夫たちが通っていた頃の尋常小学校の教科書は「国定教科書」に分類され、高等小学校の教科書もここに収蔵されている。二三四はある意味ドキドキしながら、高等小学校の収録教科書を確認してみた。

 分類は、修身、修身(女生用)、日本歴史・国史、地理、郷土地理、地理附図、算術・算数、理科、家事、裁縫、理科家事、農業、商業、簿記、工業、水産、唱歌・音楽、図画、工作、書キ方・習字、国語読本、国語読本(女生用)、国語読本(農村用)、そして英語と多岐にわたる。

 「38 教科」でも触れた「尋常小学校の教科目別週間教授時数」によれば科目(授業)の分類はもっとシンプルなので、ひとつの科目でいくつかの教科書を使用していたことが見て取れる。

 試しに、おそらく二夫たちも学んだであろう「農業」の教科書を開いてみる。これがまた「小學農業」男子用、女子用、さらに発行年による違いなど、何種類もある。明治から大正にかけて何回も行われた初等教育の制度の改訂に伴うものだろう。

 実際に二夫たちが授業で使ったのは昭和5(1930)年発行の「小學農業書 男子用」巻一、二あたりだろうと見当をつけた。その内容は次項で詳述しよう。(「高等小学校の教科書②」へ続く)

《参考》国立教育政策研究所教育図書館近代教科書デジタルアーカイブ


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