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仮庵祭(Succot:スコット)の本質(2回目)――四種の植物(lulav[ルラヴ]・hadas[ハダス]・aravah[アラヴァ]・etrog[エトログ])の適格性と、祭壇を彩る巨大な柳の掟

*仮庵祭の本質に迫る連載第2回。本稿では、レビ記23章40節に記された『四種の植物』の物理的・儀礼的適格性を、口伝律法ミシュナ第2部『Moed(モエド)』の『Succah(スッカ篇)』の記述に基づき徹底解説します。

 単なる植物の紹介に留まらず、盗品や偶像崇拝(アシェラ)の排除、さらには祭壇を飾る5メートル級の巨大な柳の掟など、当時の神殿儀礼のダイナミズムを法学的視点から復元。

 インターネット上に溢れる表層的な説教を排し、2,000年前の『律法の現場』の真実に切り込みます。」


前回の復習:仮庵の物理的定義と生活規定


 前回は以下の内容を確認した。

【1】仮庵祭の起源とyom tov

 仮庵祭については「42あなたたちは七日の間、仮庵に住まねばならない。イスラエルの土地に生まれた者はすべて仮庵に住まねばならない。」(レビ23:42)に拠っている。

 仮庵祭は7日間あるが、初日と直に続く8日目がyom tovとされる。8日目については後の回で詳しく扱う。

 2日目~7日目はChol HaMoedである。

【2】仮庵(succah)の物理的定義

 仮庵については、以下の条件を満たす必要がある。

①高さについて

 10手幅以上20キュビット以内。

 これは私たちの単位では最低でも80~100センチ、最高でも10メートルの高さになる。

②壁は3方向に必要

 2方向しかないものは、仮庵の範疇に入れられない。

③日向の広さと日陰の広さの割合

 日陰の方が広くなくてはならない。

 屋根の素材は土地から生じた未加工の素材である必要がある。壁材についてはそのような厳格な規定はない。

【3】仮庵での生活と規定

 祭りの7日間、成人男性は仮庵を「本拠」とし、自分の家を「仮の住まい」としなければならない。

 この点女性、奴隷、未成年者は義務を免除される。また、病人や従者も免責される。

 以上の内容に不安を感じる方は、下のリンクから確認して欲しい。

◉仮庵祭(Succot:スコット)の本質(1回目)――ミシュナ『Succah(スッカ)』のhalachah(ハラーハー)から読み解く「仮の住まい」の規定

https://note.com/mishnah/n/n654f6a2b7f3d

四種の植物①:lulav(ルラヴ;なつめやしの葉)の有効性と長さの規定


 今回はその続きである。トーラには次のように書かれている。

 初日には立派な木の実、なつめやしの葉、茂った木の枝、川柳の枝を取って来て、あなたたちの神、主の御前に七日の間、喜び祝う。

(レビ23:40)

 これらのものについて順番に解説する。まずはなつめやしの葉から。

 盗んだlulav、もしくは乾燥してしまったものも有効ではない。
 アシェラ に使われた木から、または迷ってしまった町から取ってきたものは、有効ではない。
 もしその頂上が取れていたり、葉が切られていたりしたら、有効ではない。
 ・・・(中略)・・・
 lulavは3手幅の長さ、つまり振る為の十分な長さでなくてはならない。

(Succah 3:1)

 「lulav(ルーラヴ)」はトーラの日本語訳の「なつめやしの葉」の原語である。以下、lulavと表記することにする。適格なlulavについてここで論じている。

 1段落目は次のことを言っている。

①盗んだものであってはならない。

 自分の所有であることを要する。

②乾燥したものであってはならない。

 取って古くなったものであってはならないという事である。

③偶像崇拝に用いたものであってはならない。

 「アシェラ」についてはどこかでまとめる積りでいるが、ここでは聖なるものとして扱われ、礼拝された木々であると認識していれば足りる。それを使ってはならない。

 「迷ってしまった町」については、申命記13章14~19節に書かれているが、以前の記事で取り上げているので、不安な方はそちらから確認して欲しい。

◉イエスを裁いた『最高法院』への道(5回目):旧約聖書の裏に隠れている71人判事の法廷①

https://note.com/mishnah/n/n815f06f57953

 仮庵祭で用いるlulavにおいて、以上の条件に引っかかってはならない。

 2段落目の「もしその頂上が取れていたり、葉が切られていたりしたら、有効ではない」とは、形において完全性を欠いているものは使えないことを言っている。

 3段落目には「lulavは3手幅の長さ、つまり振る為の十分な長さでなくてはならない」について、1手幅は8~10センチであるので、lulavは少なくとも24~30センチの長さを要する。

 これは最低限の長さである。この条件はこの後扱う「茂った木の枝」、「柳の枝」についても適用される。

 次に「茂った木の枝(hadas:ハダス)」について。

四種の植物②:hadas(ハダス:茂った木の枝)と「実の比率」のハラーハー

 盗んだhadas(ハダス)、乾ききったものも使うことは出来ない。
アシェラに使われた木から、または迷ってしまった町から取ってきたものは、有効ではない。
 もしその頂上が取れていたり、葉が切られていたり、果実が葉よりも多かったりする場合は有効ではない。
 もし果実の一部を取っても有効である。しかし祭り当日に抜くことは出来ない。

(Succah 3:2)

 「茂った木の枝」は原文ではhadasと呼ばれる。以上の通り、hadasはlulavと同じ条件で不適格になる。

 hadasに特有の条件は「果実が葉よりも多かったりする場合は有効ではない」である。枝の中に黒や赤の実がなり、それが葉の数より多く見える場合は不適格とされる。

 この場合、それを取って比率を合わせれば使えるが、祭りの当日(安息日やyom tov)にそれを行うことはmelachahに抵触するため禁止される。

 次は「川柳の枝」である。

四種の植物③:aravah(川柳の枝:アラヴァ)と山の柳(tzafzafah:ツァフツァファ)の峻別

 盗んだ川柳の枝、もしくは乾燥してしまったものも有効ではない。
 アシェラに使われた木から、または迷ってしまった町から取ってきたものであったり、tzafzafah(ツァフツァファ)であったりした場合は、有効ではない。
 その葉が萎れていたり、一部の葉が落ちていたり、川沿いではなく野原で取れたりしていても、有効である。

(Succah 3:3)

 川柳の枝も基本的に同じ条件で不適格とされる。

 「tzafzafah」は山でのみ取れる種類であり、不適格とされる。なぜならトーラに「川柳の枝」(レビ23:40)とあるから。この点川沿いではなくても、雨で潤う「野原」で取れるものは認められる。

 「萎れている」程度のものは認められる。これは前述のlulavやhadasも同じ条件であるのだが、そこでは触れられなかった。ここでのみ触れられているのは、川柳はより萎れやすいからとされる。

 仮庵祭に使う4つのものの最後は「立派な木の実」(etrog:エトログ)である。次のように書かれている。

四種の植物④:etrog(エトログ:立派な木の実)とterumahの聖別

 盗んだetrog、乾ききったものも使うことは出来ない。
アシェラに使われたもの、または迷ってしまった町から取ってきたものは、有効ではない。・・・(中略)・・・汚れを持ってしまったterumahは有効ではない 。もし汚れていないなら、それは使うべきものではない。しかし使ってしまったら、有効である。

(Succah 3:5)

 etrogもほぼ同じ条件が書かれている。本文の通り、汚れてしまったterumahは使ってはならないし、たとえ汚れていなくても、terumahとして聖別したなら、使うべきではない。

 これはmachushirin(マフシリン)が関係している。etrog以外のものは鮮度を維持する為に水に漬けておくので、terumahとしたetrogも湿ってしまう。これは汚れを生じさせる状況になる。

 そのような状況は避けるべきであるという事である。しかし「使ってしまったら、有効である」とされる。

 machushirin(マフシリン)については以前の記事で触れている。不安な方はそちらから確認して欲しい。

◉mikvehについて――ミシュナ「Mikvaot(ミクヴァオート)」が規定する祭儀的清めの6等級と論理構造(前編)

https://note.com/mishnah/n/n075bf4271a97

 以上で4つのものの不適格条件は全て網羅した訳ではないが、ここではこの程度にしておく。

「喜び祝う」ための作法:ルラヴを縛る紐を巡るラビたちの論争


 これらのものはどのように用いるのだろうか?まず再びレビ記23章40節を再掲する。

 初日には立派な木の実、なつめやしの葉、茂った木の枝、川柳の枝を取って来て、あなたたちの神、主の御前に七日の間、喜び祝う。

(レビ23:40)

 4つのものを使って「喜び祝う」。これに関しては、最初に「Succah」3章8節から引用する。

 私たちはlulavをそれ自身のもの以外では縛らない。これはラビ・ユダの言葉である。ラビ・メイルは言う。「別種で作られた紐でもよい」。
 ラビ・メイルは言った。「かつてエルサレムの男たちはlulavを金の紐で縛ったものである」。彼らは彼に反対して言った。「彼らは金の紐の下に、それ自身のもので縛ったものである。」

(Succah 3:8)

 ここではlulav、hadas、川柳の枝の3つの縛り方について論じている。冒頭の「lulav」はこれら3種類の束を言っている。

 3つの見解が記されている。

①ラビ・ユダ

 これらのいずれかで縛り、他の素材、種類のものは用いない。例えば絹や麻で縛らないという事である。

②ラビ・メイル

 別種のもので縛ってよい。

③その他のラビたち

 エルサレムでは金の紐で縛っていたが、その下にはlulavを構成するもので縛っていた。

 論破されたように見えるが、halachahはラビ・メイルの見解を取っている。

 次はこれをいつ、どのように用いるのかである。

神殿儀礼の深層:祭壇を覆う「巨大な柳」と安息日の優先規定

 lulavの掟と柳の枝の掟は6日間、あるいは7日間行われる。ハレルを唱えること、喜び祝うことは8日間行われる。

(Succah 4:1)

 これが「あなたたちの神、主の御前に七日の間、喜び祝う」(レビ23:40)の具体的な日程である。

 まず「lulavの掟と柳の枝の掟」と2つの掟が問題になっている。これは非常に混乱する箇所である。なぜなら私たちは柳というと、lulavと一緒に束ねる柳を思い浮かべるからである。しかしこの箇所の「柳」はまた別のものになる。

 この「柳の掟」については「Succah」4章5節に書かれている。先に少しそれについて触れる。

 どのように川柳の掟は守られるのか?エルサレムの下にモツァと呼ばれる場所がある。彼らはそこに下りていき、大きな川柳の枝を持って来る。それから祭壇の傍らに立たせ、祭壇の上から垂れるようにするのである。

(Succah 4:5)

 仮庵祭の期間、毎日モツァと呼ばれる所へ行き、そこで大きな柳の木を切る。なぜ大きいと言えるのかというと、それは「祭壇の傍らに立たせ、祭壇の上から垂れるようにするのである」とあるからである。

 神殿の祭壇は10キュビットであるから、約5メートル。それに立てかけて、更に祭壇の上に垂れるようにするのだから、巨大なものになる。

 取りあえず、「柳の掟」については後に詳しく触れることにして、一端話を戻す。

 「lulavの掟と柳の枝の掟は6日間、あるいは7日間行われる」とあるのは、仮庵祭の期間が7日間あるので、必ず間に安息日が入ることになる。

 安息日に禁止されるmelachahに、持ち運びについて言及されている。そこで、基本的に仮庵祭の期間では、1日は掟を遵守出来ない日が出るのだが、もしも初日が安息日である場合は、話が異なる。

 これについては、トーラの次の箇所が根拠になっている。

 初日には立派な木の実、なつめやしの葉、茂った木の枝、川柳の枝を取って来て、あなたたちの神、主の御前に七日の間、喜び祝う。

(レビ23:40)

 「初日」にlulavを使ったお祝いをするのは、トーラで命令されている。そこで、この日には一般的な安息日の原則は適用されず、許容されると解釈されている。

 これは「Succah」でも確認されている。

 どのようにlulavの掟は守られるのか?もし祭りの初日が安息日であるなら、7日間守られる。もし初日が他の曜日にあたるなら、6日間になる。

(Succah 4:2)

 「柳の掟」はこれと少し異なる事情にある。トーラの中には「祭壇に柳の木を立てかけなさい」という命令は明記されていない。これは口伝律法である。次のように書かれている。

 どのように川柳の掟は7日間守られるのか?もし7日目が安息日であるのなら、川柳の掟は7日間である。しかしもし他の曜日にあたるなら、6日間になる。

(Succah 4:3)

 こちらの掟は7日目が安息日の場合には、行うべきとされている。それは仮庵祭の7日間の中で、「柳の掟」については7日目に最高潮に達するからである。

 今回はこれで終わりにする。次回はこの「lulavの掟と柳の木の掟」がどのように交錯するのかを扱う。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉三大祭りの法理学全説:トーラとミシュナから復元する過越祭・除酵祭(Pesach:ペサハ)、七週祭(Shavuot:シャヴオット)、仮庵祭(Succot:スコット)(全18記事・完結)

https://note.com/mishnah/n/n8fa728c36e30

 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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