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仮庵祭(Succot:スコット)の本質(1回目)――ミシュナ『Succah(スッカ)』のhalachah(ハラーハー)から読み解く「仮の住まい」の規定

*三大祭りの最後を飾る「仮庵祭(Succot:スコット)」。本稿では、一般に流布する情緒的な解説を排し、旧約聖書の最高権威「トーラ」(モーセ五書』と、口伝律法「ミシュナ」の厳格な規定を参照しながら、その真実に迫ります。

 仮庵(succah)の高さ・壁・屋根に求められる物理的条件から、machushirin(マフシリン)の概念を用いた素材の選別、さらには雨天時の免責が象徴する神学的意義までを網羅。

 日本語圏において、2,000年前の仮庵祭の現場を鮮やかに再現します。

 これまで過越祭・除酵祭、七週祭について解説してきた。今回から三大祭りの最後である仮庵祭について扱う。


はじめに:トーラ(モーセ五書)が定める「不変の定め」


 まずは旧約聖書の最高権威であるトーラ(モーセ五書)から引用する。

 39なお第七の月の十五日、あなたたちが農作物を収穫するときは、七日の間主の祭りを祝いなさい。初日にも八日目にも安息の日を守りなさい。 40初日には立派な木の実、なつめやしの葉、茂った木の枝、川柳の枝を取って来て、あなたたちの神、主の御前に七日の間、喜び祝う。 41毎年七日の間、これを主の祭りとして祝う。第七の月にこの祭りを祝うことは、代々にわたって守るべき不変の定めである。 42あなたたちは七日の間、仮庵に住まねばならない。イスラエルの土地に生まれた者はすべて仮庵に住まねばならない。 43これは、わたしがイスラエルの人々をエジプトの国から導き出したとき、彼らを仮庵に住まわせたことを、あなたたちの代々の人々が知るためである。わたしはあなたたちの神、主である。

(レビ23:42~43)

 読者の方々には現段階では不明な点が多いと思う。以下の記事の中で明らかにする。

 取りあえず、ここでは仮庵祭が第7の月(ティシュレ)の15日から7日間行われ、8日目は直に一体の祭日が続いていることを認識していればよい。

 以前にも書いたが、これをまとめると以下のようになる。

①仮庵祭の1日目と8日目

 yom tov(ヨム・トーヴ)である。

②仮庵祭の2日目~7日目

 Chol HaMoed(ホル・ハモエド)である。

 安息日とyom tovにおいては、melachah(メラハー)と呼ばれる39の創造的な活動が禁止される。ただしyom tovにおいては、食事の準備は認められる。

 Chol HaMoedにおいては、許容の範囲はもう少し広がる。しかしその具体的な内容は以前の記事にまとめたので、不安な方はそちらで確認して欲しい。

◉Chol HaMoedについて――ミシュナ『Moed Katan(モエド・カタン)』から読み解く、認められない労働の境界線

https://note.com/mishnah/n/nee6fe580a83d

 今回は上記トーラの箇所から、「42あなたたちは七日の間、仮庵に住まねばならない。イスラエルの土地に生まれた者はすべて仮庵に住まねばならない。」(ibid.)を扱う。

 まず、「仮庵」はどのような様式のものであるのか、口伝律法ミシュナ「Succah(スッカ)」1章1節から引用する。

仮庵(succah:スッカ)の物理的定義:ミシュナ『Succah』1章1節より

 仮庵は20キュビットを越えると無効になる。ラビ・ユダは有効であると言っている。
 また、10手幅に達していない仮庵、3つの壁を持たない仮庵、太陽が照る部分が影になっている部分よりも広い仮庵は無効である。

(Succah 1:1)

 ここでは高さについて、壁について、中の日向の広さと日陰の広さの割合について言っている。

高さの制限と「住居」としての適格性


①高さについて

 10手幅以上20キュビット以内。

 これは私たちの単位では最低でも80~100センチ、最高でも10メートルの高さになる。

 10メートルを超えるような高さのものは、最早「仮庵」とは呼べず、長期間に耐える構造を持っているものと見なされる。

 他方で床から天井まで80~100センチにも満たないようなものは、「7日間住む」ものとは認められない。

三方の壁と日陰の割合


②壁は3方向に必要

 2方向しかないものは、仮庵の範疇に入れられない。その素材については後で触れる。

③日向の広さと日陰の広さの割合

 日陰の方が広くなくてはならない。

 この節の続きは次の通りである。

 古い仮庵。Beit Shammaiは無効であるとし、beit Hillelは有効であるとする。古い仮庵とは何であろうか?祭りよりも30日以前に立てられたものである。しかし祭りの為だけに立てたものであるならば、たとえ年の始めに立てたとしても有効である。

(ibid.)

 ここでは、仮庵祭に先立つ30日前以内であるなら、それは掟の為に立てられたものとして有効と見なされることを言っている。それ以前のものは、掟の実行の為とは解釈されない。

 しかしもしも明示的に仮庵祭の為と周知して作るなら、それは1年前の仮庵祭が終わった後、すぐに立てたものであっても許容される。

 「年の始め」がややこしい表現であるが、ここでは第7の月の1日が1年最初の日であることにかけて、「1年前の仮庵祭の直後であっても」という趣旨を言いたいらしい。

 次は仮庵の素材についてである。

屋根の素材規定:土地の産物と「汚れ」の概念

 もしぶどうや蔦を育てて仮庵を覆ってしまった場合、無効になる。しかし有効な部分がそれ以上の大きさであるなら、あるいは無効な部分を外すなら、有効になる。
 仮庵の有効性に関して、次の一般的な原則が言える。汚れを持っているかもしれないもの、土地から生じていないものは、何でも使ってはならない。しかし汚れを持っていないもの、土地から生じているものは、何でも使ってよい。

(succah 1:4)

 1段落目は、まだ土に付随しているものを仮庵の屋根にしてはならないことを言っている。しかし「有効な部分がそれ以上の大きさであるなら、あるいは無効な部分を外すなら、有効になる」。

 有効な素材の割合が無効な素材の割合よりも大きいなら、あるいは無効な素材を取り外し、なお「仮庵」に必要な条件を満たすなら、それは認められる。

 2段落目は次のことを言っている。

加工やmachushirin(マフシリン)による無効化の境界線


①人間の作った道具や食べ物、飲み物は祭儀的な汚れを受けるものである。それらを使ってはならない。

 これは一言で言うと、人間の意思が介在したものは素材として使えないという事である。

 「人間の作った道具」については、この点で説明は不要であろう。「食べ物、飲み物」についてはmachushirin(マフシリン)について言っている。

 口に入れるものは所有者が意図して水気に晒さない限り、汚れを受ける状態にはならない。まだ人が用いるものとして意図されていないのである。

 逆に言うと、所有者が水気に晒していないものは、たとえ食べられるものでも、「まだ自然のまま」である。

 この段落は以上の意味で「人の加工しているものは、仮庵の屋根に使えない」という事を教えている。

 machushirin(マフシリン)については以前の記事で触れている。不安な方はそちらから確認して欲しい。

◉mikvehについて――ミシュナ「Mikvaot(ミクヴァオート)」が規定する祭儀的清めの6等級と論理構造(前編)

https://note.com/mishnah/n/n075bf4271a97

地面から生じた未加工素材の重要性


②土地から生じていないものは使えない

これは「大地から生じていないものは使ってはならない」ことを言っている。動物の皮などは仮庵の屋根には使えない。

 以上から、仮庵(以下、succah[スッカ]と記載)の屋根を構成するのは地面から生えたものであり、かつ未加工の、神がお作りになったままの素材でなければならないことになる。

一般的には竹竿、細い木の板、常緑樹の枝などがよく使われるらしい。

 ただし、壁については別の規則が示されている。次のように書かれている。

 もし仮庵が木々の間に作られていて、木が壁の役割を果たしているなら、それは有効である。

(Succah 2:4)

 壁面については、土地に付従したものをそのまま使うことが許される。屋根にあったような厳しい条件は適用されない。

 それは次のトーラの本文に関わっている。

 わたしがイスラエルの人々をエジプトの国から導き出したとき、彼らを仮庵に住まわせたことを、あなたたちの代々の人々が知るためである。

(レビ23:43)

 彼らが宿営を旅立つ時、昼は主の雲が彼らの上にあった

(民10:34)

 succahは荒野を40年間旅したイスラエルの民に倣い、御旨に全てを委ねる機会と言えるが、特に屋根の素材によってそれを表したのである。

 次に「あなたたちは七日の間、仮庵に住まねばならない」(レビ23:42)の「7日間住むこと」について解説する。まずは「Succah」2章9節から。

「七日間住む」ことの実践と精神性

 7日間の間、男は仮庵をその住まいとし、自分の家は仮の住居としなくてはならない。雨が降った場合、そこを去ることは許されるのだろうか?お粥が傷んでしまった時。
 彼らはこの事を寓話で説明する。どのように比べるのだろうか?主人の為にぶどう酒を水で割りに来た奴隷に対して、奴隷の顔に水をかける主人である。

(Succah 2:9)

 まず「男は」と男性に限定されている点について述べる。「Succah」2章8節に次のように書かれている。

 女性、奴隷、未成年者は仮庵の掟の義務を免れる。未成年者でも母の助けの必要のない子は、仮庵の中に住む。

(Succah 2:8)

 仮庵の掟の遵守は男性の中でも成人男性のみに課せられている。これは次の一般的な原則にも関わっている。

 全ての時間に関わる命令について、男性は有責で、女性は有責ではない。全ての時間に関わらない命令について、男性も女性も有責である。

(Kiddushin 1:7)

 時間的に定められた掟の実行は基本的には成人男性のみの責任である。ただし、ニサンの月の14日の日没後の過越の食事など、例外もある。

 次に住まいとして使うことについてだが、「7日間の間、男は仮庵をその住まいとし、自分の家は仮の住居としなくてはならない」とは、この期間は普段の自分の家は仮の住まいであり、succahが自分のメインの家としなくてはならないことを言っている。

 雨が降った場合については「お粥が傷んでしまった時」という喩えが不明だが、次の段落と合わせると、一応の理解は出来る。

降雨による「主人の拒絶」という寓話


 仮庵から退去してよい条件として「主人の為にぶどう酒を水で割りに来た奴隷に対して、奴隷の顔に水をかける主人」の場合と書かれている。これは奉仕する奴隷に対して、適切に働いていないので、主人が拒絶する場面を言っている。

 ここでは掟に従いsuccahを作ったが、神が激しい雨で拒絶なさっていることを示唆している。

 次に掟の免責条件についてである。以下のように書かれている。

掟の免責条件:病者と他に従事する者

 掟の実行に従事している者は、仮庵の掟を免除される。病気の人やその世話をする人たちも同様である。
 私たちは仮庵の外で軽く飲食することは出来る。

(Succah 2:4)


 「掟の実行に従事している者」とは、例えばトーラを学ぶ為に旅をしている人、ユダヤ人を救う為に旅をしている人を指す。

1つの差し迫った掟の実行に従事している間、他の掟の実行については免責される。

 病気の人とその付添の方たちも免責される。仮庵での生活は負担が重いので、健康を優先する趣旨と思われる。

 今回の解説は以上である。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉三大祭りの法理学全説:トーラとミシュナから復元する過越祭・除酵祭(Pesach:ペサハ)、七週祭(Shavuot:シャヴオット)、仮庵祭(Succot:スコット)(全18記事・完結)

https://note.com/mishnah/n/n8fa728c36e30


 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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