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“なんとなくボーナス”が若手を逃がす──評価のモヤモヤの正体

6月に入りました。夏の賞与の時期ですね。

経営者にとって賞与は、頭を悩ませる季節の行事だと思います。「去年がこのくらいだったから」「業績がまあまあだったから、少し上乗せ」。気づけば、決め方が“なんとなく”になっている。そんな会社は、実はかなり多いんです。

そして、その“なんとなく”が、いちばん辞めてほしくない若手をそっと逃がしている。今日はその話をしたいと思っています。

【「制度がない」のは、悪いことではない。けれど】

まず数字から見てみます。2025年版の中小企業白書によると、人事評価制度を設けている中小企業は全体で40.6%。これが従業員30人超50人以下になるじ52.6%、50人超100人以下では68.1%と、規模が大きくなるほど導入率が上がっていきます(出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」第2部第1章第4節)。

逆に言えば、小さい会社ほど評価制度を「設けていない」。そして白書では、設けていない最大の理由として「経営者が全従業員の状況を把握しているから」が挙げられています。

これ、悪いことではないんですよね。社長が一人ひとりの仕事ぶりを肌で分かっている。10人、20人の会社なら、それで回ります。私自身、一人で会社をやっているので、その感覚はよく分かります。

問題は、「把握しているつもり」と「本人に伝わっている」の間に、大きな川が流れていることなんです。

【モヤモヤの正体は「基準が見えない」こと】

働く側のデータを見ると、これがはっきりします。

組織コンサルティングの識学が、全国の従業員10〜300人未満の企業で働く被評価者400人に聞いた調査(2021年8月)では、自社の人事評価に不満を持つ人の理由は、

・1位「評価の基準が不明確」48.3%

・2位「評価結果が報酬に反映されない」30.9%

・3位「評価する人によって厳しさに差がある」28.1%

という順番でした(出典:株式会社識学「人事評価の”モヤモヤ”に関する調査」2021年)。

さらに、「評価結果が給与や待遇にどう反映されるか知っているか」という問いには、44.5%が「知らない」と回答。評価に不満を持つ層に絞ると、6割近くが「知らない」と答えています。

パーソル総合研究所の調査(2021年)でも、評価制度に不満を持つ人は38.3%という結果が出ています(出典:パーソル総合研究所「人事評価制度と目標管理の実態調査」)。

つまり、社員が不満なのは「評価が低いこと」そのものではないんです。「何を見て、どう決まったのか分からない」こと。ここが、いちばんのモヤモヤの正体なんですよね。

賞与に置き換えると、よく分かります。額の多い少ない以上に、「なんでこの額なのか」が説明されないと、人は納得しない。むしろ、頑張った人ほど「ちゃんと見てもらえているのか」が気になる。“なんとなくボーナス”が若手を逃がすのは、額が低いからではなく、理由が見えないからなんです。

【「定量化」の前に、もっと手前にやることがある】

では、どうすればいいのか。

識学の調査では、不満を晴らす鍵として「評価項目を定量化すること」を挙げています。たしかにそのとおりだと思います。「積極性がある」より「○○を月△件」のほうが、誰が評価しても同じになる。納得感も出ます。

ただ、私は中小企業の現場を見ていて、定量化のもう一段手前に、つまずきやすい壁があると思っているんです。

それは、「そもそも、誰が・何の仕事を・どれくらいやっているのか」が書き出されていない、という壁です。

考えてみてください。評価基準を作ろうとしても、ある社員が一日のうちにどんな業務をどれだけ抱えているか、社長の頭の中にしかない。それでは、数値の目標を置こうにも、何を数えればいいか決まりません。結局また「総合的に判断して」という感覚評価に戻ってしまう。

だから順番としては、こうなんですよね。

1. まず、社内の業務を書き出す(誰が・何を・どれくらい・月に何時間)

2. その上で、評価したい仕事に「数えられるものさし」を置く

3. そのものさしと賞与・処遇のつながりを、本人に見せる

立派な人事制度を一気に作る必要はありません。最初は紙1枚でいい。「うちの会社には、こういう仕事があって、あなたはこの部分を担っている」。それが見えるだけで、評価の会話は驚くほど変わります。

【まとめ──賞与は「金額」ではなく「説明」で効く】

賞与の季節になると、つい「いくら出すか」に意識が向きます。もちろん大事です。でも、同じ金額でも、説明があるのとないのとでは、受け取った人の気持ちはまったく違うんですよね。

「今期、あなたのこの仕事がこう効いた。だからこの額です」。たった一言でも、添えられるかどうか。これは制度の有無ではなく、業務が見えているかどうかの問題なんです。

今年の夏、賞与の封筒を渡すとき、その一言を添えられそうでしょうか。もし「うちは社長の感覚で決めている」と少しでも引っかかったら、それは制度を入れるサインではなく、まず業務を書き出してみるサインだと思っています。

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