見出し画像

建設業の若手が3年で4割辞める──OFF-JT21.2%の構造

「採用してもすぐ辞める」「育てる前に出ていく」。建設業の経営者から、最近よく聞く話です。

厚生労働省の最新データ(令和6年度 能力開発基本調査・2025年7月公表)を見ていて、私はちょっと立ち止まりました。建設業の正社員以外(パート・契約社員等)に対するOFF-JT(業務から離れた研修。会社が時間を取って実施する集合研修や外部講習)実施率は、21.2%。全産業の業種別ランキングで、運輸・郵便業(21.9%)と並んで最下位です。

そして同じ厚労省の「新規学卒就職者の離職状況」では、建設業に就職した高卒の3年以内離職率は42.4%。全産業平均(高卒38.4%)より、4ポイント高い水準が続いています。

「教える時間がない」「教える人がいない」を3年続けると、若手は静かに、でも確実に消えていく。建設業はその構造の真ん中にあるんですよね。

「教える時間がない」が、3年で4割を生み出す

数字をもう少し並べてみます。

令和6年度 能力開発基本調査では、正社員へのOFF-JT実施率は産業によって大きく開いています。複合サービス事業93.3%、電気・ガス・水道88.2%、学術研究・専門技術サービス86.4%が上位。一方、生活関連サービス・娯楽業は50.1%、教育・学習支援業は52.3%と低位です。

業種別の数字を見ると、建設業は決して上位ではありません。とくに正社員以外の数字(21.2%)が物語っているのは、「現場の人手で時間を埋めるしかない」という業界の構造そのものです。

ここに、若手の離職率が重なります。建設業の3年以内離職率は、2021年3月卒で35.6%、高卒に絞ると43.2%、短大卒41.5%、大卒30.7%。2022年3月卒でも大卒30.1%・高卒42.4%と、ほぼ横ばいです(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。

辞める理由は「給料が安い」だけではないんですよね。私はいくつかの中小建設業の社長と話していて、辞める若手の話を聞くと、共通項が見えてきます。

最初の1ヶ月、誰に何を聞けばいいか分からなかった。先輩は現場に出ていて、夕方戻ると疲れていて聞きづらかった。「見て覚えろ」と言われたが、何を見ればいいかが分からなかった──こうした声が重なっていきます。


「教える時間がない」の正体は、教える側の善し悪しではなく、「教える材料がない」ことだと私は考えています。

現場のプロほど、書類と段取りで詰まる

先日、建設業や製造業の中小企業に外部人事として入っている独立コンサルさんと、3社合同のミーティングに同席しました。建設業の現場理解が深く、ドライバー職、リフト職、施工職など、人手不足職種の採用に長く向き合ってこられた方です。

業務形態は月額固定。月15万円帯で、現場感のあるサポートを月に2〜3社、長期で並走している。私から見ても、業界に深く入り込んだプロフェッショナルです。

そのご本人が、雑談のなかでぽつりと言ったんですよね。

「もう一人、事務員を雇っているような感覚で仕事してます」

求人原稿の改善、面接の流れの設計、入社後の定着支援。1社あたりの稼働で発生する書類・市場リサーチ・歩留まり数値の集計・原稿の修正。専門性が高い人ほど、現場のサポートが重くなって、自分の手元の書類で詰まっていく。

私はこの言葉を聞いて、「建設業の現場でも、まったく同じことが起きているんじゃないか」と思いました。

現場のベテラン棟梁や現場監督さんも、技術と知識を一番持っている人です。だからこそ、見積もり、安全書類、現場日報、協力会社の管理、若手への指示が全部その人に集まる。「教える時間がない」の本当の意味は、「教える人がいない」ではなく、「教えるべき人がほかの作業で埋まっている」ことなんですよね。

「教える材料」を1枚作るところから

ではどうすればいいか。私が建設業の社長におすすめしているのは、まず「教える材料」を1枚だけ作ることです。

私たちが普段「業務の棚卸し」と呼んでいるものを、ぐっとシンプルに「業務の書き出し」と呼びかえています。難しい言葉ではなく、「お客さまから問い合わせをいただいてから、現場が完了してお金をいただくまで、誰が、何のツールで、どのくらいの時間をかけて、休んだら何が止まるか」を、A4の紙1枚に書き出す作業です。

実際、工務店向けの業界調査では、業務をマニュアル化した工務店で作業時間が平均20%削減できたというデータも報告されています(出典:syokunin.work/2025年最新版工務店マニュアル化ガイド)。20%という数字は、月160時間働いている人で言えば、月32時間。週1日相当の時間が、戻ってくる計算です。

ただ、私が伝えたいのは「効率化のため」ではありません。「教える材料」のためです。

書き出した1枚があれば、若手は最初の1ヶ月で「今日自分はどこのステップにいるか」が分かる。先輩は、目の前の1ステップだけ教えればいい。「見て覚えろ」が、「この紙のここをやってみて」に変わる。教える時間が短くなって、教えられる側の不安も小さくなる。

OFF-JTで研修費を払うのは、その次の段階です。先に、社内に「教える材料」が1枚あること。これがOJT(現場で実際の仕事を通じて教えるやり方)を回す土台だと、私は思っています。

人を増やす前に、教える材料を

人手不足だから、採用を強化する。採用してもすぐ辞めるから、もっと採る。これを繰り返していると、教える側のベテランも疲弊して、結局会社全体が回らなくなります。

建設業の若手3年離職42%という数字は、若手の問題ではなく、教える材料が社内にない構造の問題なんですよね。

人を増やす前に、まずA4の紙1枚から。御社の業務の入口から出口までを、書き出してみる。たぶん、思っていたより多くて驚くと思います。でもその1枚が、若手が辞めない会社の最初の1ページになります。

御社の業務、いま、何ステップありますか。

あわせて読みたい

採用してもすぐ辞める。3年離職42%の手前にあるのは、入社後の受け入れ準備です。

1人辞めることのコストは、想像より大きい。退職型倒産が過去最多のいま、見直すべきもの。

マニュアル未整備のままだと、現場が個人の対応力で吸収するしかなくなる。教える材料がない構造、ここでも同じ。



合同会社ShakeHands
人手不足を、構造から整理する事業パートナー
人が足りない。でも「採用」が正解とは限らない。
合同会社ShakeHandsは、中小企業の人手不足・事業拡大に向き合い、採用・外注・AI活用の選択肢を整理し、最適な打ち手を設計するパートナーです。
売るための提案ではなく、経営判断としての選択を一緒に考えます。

――――――

▶〈ワリフル〉建設業の人手不足を「業務の分解」で整える

人を増やす前に、まず仕事を分ける。60分の無料相談で、御社の「業務分解シート初稿(1枚)」をお持ち帰りいただけます(相談・コンサル料は0円)。


いいなと思ったら応援しよう!

みの|中小企業の人手不足解消コーディネーター 「役に立った!」、「こいつ、好き!」って思ったらサポートをお願いします(*^^*)