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求人8倍でも新人が辞める──建設業、"採る前"に整える一枚

「人が採れない」。建設業の経営者と話していると、必ずと言っていいほどこの言葉が出てきます。数字を見ると、たしかにその通りなんですよね。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年11月分)」によると、建設躯体工事従事者(鉄筋・型枠・とび等)の有効求人倍率は8.04倍。全職業の中で堂々のトップです。全職業の平均は1.18倍ですから、その差はおよそ7倍。1人の求職者を7社が奪い合っている計算になります。

ただ、私が最近ずっと引っかかっているのは、この「採れない」の裏側です。やっとの思いで採用した人が、しばらくして辞めていく。この「採っても続かない」問題のほうが、実は根っこが深いのではないか。今日はそんな話を、公的データと、先日お会いした採用のプロの言葉をもとに書いてみます。

■ 小さい会社ほど、新人が早く辞めている

まず、見過ごされがちなデータから。厚生労働省が2025年10月24日に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」を見ると、就職後3年以内に辞めた人の割合は、新規高卒者で37.9%、新規大卒者で33.8%。3人に1人以上が3年以内に離職しています。

もっと注目したいのは、会社の規模による差です。同じ調査の事業所規模別のデータを並べると、こうなります。

【新卒3年以内離職率(事業所規模別・高卒/大卒)】

・従業員5人未満:高卒63.2%/大卒57.5%

・5〜29人:高卒54.6%/大卒52.0%

・30〜99人:高卒45.2%/大卒41.9%

・1,000人以上:高卒26.3%/大卒27.0%

(出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2025年10月24日公表)

5人未満の会社では、高卒新人の63.2%が3年以内に辞めています。1,000人以上の会社の26.3%と比べると、2倍以上です。小さい会社ほど、採るのも大変なのに、辞められるのも早い。建設業は小規模な事業者が多い業界ですから、この数字はまさに自分ごとだと思うんですよね。

採用にはお金がかかります。中途採用なら1人あたり80〜100万円という試算もあります。新卒でも、募集広告から入社後の教育まで含めれば、決して安くはありません。せっかくかけたそのコストが、3年経たずに半分以上消えていく。これは採用の失敗というより、「受け入れ」の設計の問題ではないか、と私は考えています。■ 採用の前に、"今の会社の状態"を直す

先日、採用支援を本業にしている経営者の方とじっくりお話しする機会がありました。求人広告の制作から始まって、いまは採用の上流から関わっているプロの方です。その方の言葉が、すごく腑に落ちたんですよね。

「求人媒体という"手法"から売らないんです」。

どういうことか。多くの会社は「人が足りない→とりあえず求人を出す」と考えます。でもその方は、求人を出す前に、まず"今の会社の状態"を見るそうです。ネット上のクチコミが低いまま放置されていないか。無料で使えるハローワークや採用サイトを活かせているか。そして何より、社内に人を受け入れる態勢があるか。ここが欠けたまま媒体にお金を突っ込んでも、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものだ、と。

この「手法(媒体・ツール)は最後。まず現状を直す」という順番、建設業の現場にもそのまま当てはまると思うんです。求人票の書き方を工夫する前に、入ってきた新人が「何を、誰に、どう教わればいいか」が決まっているか。ここが曖昧だと、どんなにいい人を採っても、育つ前に辞めてしまう。

■ "受け入れられる形"は、一枚から作れる

では、受け入れの態勢はどう作るか。私がいつもおすすめしているのは、大がかりなマニュアルづくりではなく、まず業務を一枚の紙に書き出すことです。

やることはシンプルで、新人が関わる仕事を全部書き出して、3つに仕分けるだけ。

【業務の3仕分け】

・現場でしか教えられない仕事(段取り、安全の判断、職人の技)→ ベテランが直接教える時間を確保する

・手順が決まっている事務・作業(日報、写真整理、資材の発注、書類の転記)→ 手順書にして誰でもできる形にする、AIや外注に回す

・そもそも要らない仕事(二重の記録、形だけの書類)→ やめる

この一枚があると、新人に「まずこれをやってもらう」「これは先輩に聞く」という地図ができます。何を教わればいいか分からないまま放置される、という一番の離職原因が減るんですよね。しかもこの一枚は、採用だけでなく、ベテランが急に休んだときの穴埋めにも効きます。一石二鳥です。

ここで大事なのは、順番です。人を増やす前に、まず今ある仕事を「受け入れられる形」に整える。手法(求人媒体・採用ツール)はその後でいい。採用のプロが「手法から売らない」と言うのは、まさにこの順番のことだと思うんです。■ まとめ:採るより前に、整える

建設躯体工事の求人倍率8.04倍という数字は、「人を採るのがどれだけ大変か」を突きつけてきます。でも、その大変な思いをして採った人が、5人未満の会社では6割以上辞めていく。これが今の現実です。

だからこそ、私は「採る前に整える」ことを提案したいんです。求人を出す前に、業務を一枚に書き出して、受け入れられる形を作る。これは採用コストを守ることでもあり、今いる社員が働きやすくなることでもあります。

御社では、新しく入った人が「何を、誰に、どう教わるか」を、一枚の紙で説明できる状態になっているでしょうか。もしまだなら、求人を出す前に、まずその一枚から始めてみませんか。

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採ったあとだけでなく、"採る途中"にも落とし穴があります。

「人を増やす前に整える」を、もう一歩具体化した記事です。

入った人が"続く"かどうかは、評価の伝わり方も効きます。

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