見出し画像

採れない時代の、業務の引き算──人を足す前に、まず仕事を分ける

人が足りない。だから採用しよう。

これは正しい順番のように見えて、いま、思ったように回らなくなっているんですよね。

厚生労働省の最新の雇用動向調査(令和7年上半期)を見ると、企業が「埋めたいのに埋まっていない求人」=未充足求人は全国で約136万人ぶん、欠員率は2.6%でした。宿泊・飲食サービス業では4.8%、運輸業では4.1%にのぼります。

さらにこの調査からは、「正社員の採用予定がある」企業が減って、「採用予定がない」企業が増えている、という少し意外な傾向も読み取れます。

人手は足りない。なのに「採る予定はない」。

これは矛盾しているようで、じつはそうではないんです。採りたくても採れない、採れたとしても賃上げの原資がない——だから採用という入口そのものを、半ばあきらめはじめている会社が増えている、ということなんですよね。

(出典:厚生労働省 令和7年上半期雇用動向調査結果の概況)

■採用は、想像以上にお金がかかる

中途で一人採るのにかかるお金は、いまや一人あたりおおよそ80万〜100万円と言われています。求人広告費や人材紹介の手数料が、年々上がっているからです。

そして、これだけかけて採っても、その人が定着してくれる保証はどこにもない。

特に小さい会社ほど、この賠けが重くのしかかります。帝国データバンクによると、2025年度の「人手不足倒産」は441件で過去最多。そのうち建設業が112件と、全体の約4分の1(25.4%)を占めて最多でした。しかも倒産した会社の約75%が、従業員10人未満の小さな会社なんですよね。

(出典:帝国データバンク 人手不足倒産の動向調査〔2025年度〕)

人を増やせば解決する、という前提が、いちばん体力のない会社から先に崩れている。これが今の現場の風景だと、私は思っています。

■「採る」の前に、「減らす・分ける」

ここで一度、立ち止まりたいんです。

人が足りないと感じたとき、本当に足りないのは「人」なのか。それとも「いま社内で抱えている仕事の量」なのか。

私がいつもおすすめしているのは、採用の前に一度、業務を全部書き出してみることなんですよね。紙一枚でいい。誰が・何の仕事を・月に何時間やっているか。そうやって書き出すと、たいてい仕事は三つに仕分けできます。

ひとつ、自分たちにしかできない仕事。ふたつ、外に出せる仕事(経理、請求書づくり、写真整理、問い合わせ対応など)。みっつ、そもそも要らない仕事。

たとえば建設業の会社で書き出してみると、こんなふうに分かれることが多いんですよね。

「自分たちにしかできない仕事」は、現場の段取り、職人さんとのやりとり、見積もりの最終判断、お客さんとの打ち合わせ。ここは会社の心臓部なので、社長や現場監督が握っていていい。

「外に出せる仕事」は、請求書づくり、入金の照合、工事写真の整理、協力会社の台帳管理、電話の一次受け。このあたりは、やり方さえ決まっていれば、社内の人でなくても回せる部分が多いんです。

「要らない仕事」は、誰も見ていない日報、二重に作っている台帳、いつのまにか毎週やっている“とりあえずの会議”。書き出してみると、案外こういう仕事が時間を食っていたりします。

この三つに分けるだけで、「人が足りない」と思っていた正体が、じつは「社長一人に仕事が集まりすぎていただけ」だった、と気づくことは本当によくあるんですよね。

■「外に出すのは不安」への答え

とはいえ、「外注は品質が不安」「指示が伝わらなくて、結局自分でやり直す」という声もよく聞きます。これはもっともな心配なんです。

でも、その不安のほとんどは、外注そのものが原因ではなくて、「何をどこまで頼むかが、言葉になっていない」ことから来ているんですよね。

ここでも効いてくるのが、さっきの“書き出した一枚”です。

誰が・何の仕事を・どういう手順でやっているかが一枚になっていれば、外に頼むときも「ここからここまでをお願いします」と渡せる。新しく人を採ったときも、その一枚がそのまま教える材料になる。

つまり、業務を書き出して整理しておくことは、外注のためだけじゃなくて、採用を成功させるための準備でもあるんです。

■国も「採用」より「省力化」を後押ししている

じつはこの流れ、国の制度にもはっきり表れています。

2026年も続く「中小企業省力化投資補助金」は、人手不足の会社が“人を増やさずに”仕事を回せるよう、機械やシステムの導入費用を補助する制度です。カタログから選ぶ型と、自社向けにつくる一般型があって、補助率は経費の2分の1など。賃上げをした会社には補助率が上乗せされる仕組みもあります。

(出典:中小企業省力化投資補助金 公式サイト/中小企業庁 ミラサポplus)

国が「人を採るのを手伝う」のではなく、「人を増やさずに済む投資を手伝う」側に動いている。これは、採用一択の時代が静かに変わりつつあることの、わかりやすいサインだと思うんですよね。

■増やす前に、整える

念のため言っておくと、採用が悪い、という話ではまったくありません。人を増やすべき場面は、当然あります。

ただ、順番なんです。

業務を書き出して、要らない仕事を捨てて、外に出せる仕事を出す。そのうえで「それでも足りない」となったとき、はじめて採用が活きる。

整理しないまま人を足すと、新しく入った人にも“ぐちゃぐちゃのままの仕事”が乗っかって、結局またすぐ詰まる。そして「やっぱり人が足りない」ともう一人……という追いかけっこになる。これは私が現場で何度も見てきた景色なんですよね。

人を増やす前に、まず仕事を分ける。

採れない・賃上げもしんどい今だからこそ、この引き算が効いてくると、私は思っています。

■あわせて読みたい

採用以外の選択肢を、もう少し具体的に。


「探す」より「手放す」。経理が見つからないときの一手。


抱えた仕事を見える化する、という同じ入り口の話。


──────────

合同会社ShakeHands 代表 大場 実

「人を増やす前に、まず仕事を分ける」——建設業を中心に、業務の書き出し(業務分解)から人手不足の整理をお手伝いしています。

──────────

▶〈ワリフル〉建設業の人手不足を「業務の分解」で整える

人を増やす前に、まず仕事を分ける。60分の無料相談で、御社の「業務分解シート初稿(1枚)」をお持ち帰りいただけます(相談・コンサル料は0円)。


いいなと思ったら応援しよう!

みの|中小企業の人手不足解消コーディネーター 「役に立った!」、「こいつ、好き!」って思ったらサポートをお願いします(*^^*)