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応募者は待ってくれない──“遅い選考”が招く辞退、8割の現実

「求人を出しても応募が来ない」。経営者の集まりに行くと、必ず出てくる話題です。ただ、最近の調査をいくつか読み込んでいて、私は別の問題のほうが気になりました。それは、せっかく来た応募者に「対応の遅さ」で逃げられている会社がとても多いこと。今日は求人広告の話ではなく、応募が来た“あと”の話をしたいと思います。

「達成率92.9%」の中身は、目標の引き下げ

マイナビが2026年3月に公表した「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」によると、2025年に中途採用の人数目標を達成した企業は92.9%。前年の65.2%から27.7ポイントも跳ね上がり、過去最高でした。

数字だけ見ると「採用は楽になった」ように見えます。でも、中身は逆なんですよね。

【マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」より】
・採用目標人数の平均:2023年30.8人 → 2024年28.7人 → 2025年16.7人
・実際の採用人数の平均:2023年21.8人 → 2025年12.3人
・正社員の不足を感じる企業:40.1%。不足の中身は「量」69.6%に対し「質」が55.6%(前年比+6.7pt)に増加
・求めるスキルや経験に満たない人は「採用しない」:62.1%(前年比+7.7pt)。会社の規模が小さいほど高い
・出典:https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260327_109053/

採用目標の人数が3年でほぼ半分に下がったから、達成率が上がった。つまり「採れるようになった」のではなく、「採れない前提で計画を作り直した」会社が増えたということです。採用の難易度そのものは、何も下がっていません。むしろ、要件に満たない人は採らないという「厳選」が強まっているので、一人ひとりの応募者の価値はこれまで以上に重くなっています。

8割の会社が「遅さ」で辞退されている

そのうえで、もう一つの調査を紹介します。マンパワーグループが企業の人事担当者400名に行った調査(2024年公表)では、リードタイム(応募から内定までにかかる時間)について、こんな数字が出ています。

【マンパワーグループ調査(2024年公表)より】
・リードタイムが原因で応募者に辞退された経験がある企業:約8割
・応募から内定までの期間は「1カ月以内」が37.8%で最多。「2週間以内」26.0%、「1週間以内」15.5%
・選考が長引く理由:面接日程の調整、見極めの慎重さ、社内の決裁・体制、人手不足
・出典:https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/240911.html

応募者は、複数の会社に同時に応募しています。だから返事の早い会社から順に面接が進み、先に内定が出ます。求人広告にお金をかけて、やっと来てくれた応募者を「忙しくて返信が3日後」で逃がす。これが実際に、約8割の会社で起きているわけです。

「応募が来ない」と「応募者を逃がしている」は、外から見ると同じ「採用できない」に見えます。でも、打ち手はまったく違います。前者は広告やお金の話、後者は段取りの話。そして後者は、今日から直せます。

「朝来た応募は、昼までに返す」

先日お会いした、採用支援の会社を5期目で営む経営者のお話が、まさにこの問題への答えでした。

この方の会社には、営業担当がいません。お客様はすべて紹介と口コミ。それでも仕事が途切れない理由が「手法から売らない」という方針です。求人広告の依頼が来ても、すぐには出稿しない。その前に、放置されたままのクチコミ、使っていない無料の求人媒体、応募が来たときの返信体制といった「受け入れる側」の穴を先に直すそうです。応募対応は「朝来た応募には昼までに返事を返す」を徹底していると聞きました。

印象的だったのは、広告に1回数十万円を払うより、自社の採用ページや無料媒体を整えて「翌年に残る財産を作りましょう」と提案する、という話です。広告は掲載期間が終われば流れていきますが、整えた受け皿は残り続ける。採用費を「消えるコスト」ではなく「残る資産」で考える発想で、これは経営全般に効く視点だと思いました。

応募対応は「業務」として書き出せる

建設業の社長とお話ししていると、日中は現場に出ていて、応募メールに気づくのは夜、返信は週末、という方が少なくありません。怠けているわけではないんです。応募対応が「誰の業務か」決まっていないから、後回しになる。それだけのことなんですよね。

私がおすすめしたいのは、応募対応をひとつの業務として紙に書き出すことです。たとえばこの4つに分かれます。

【応募対応を4つに分ける】
・応募の受付確認:その日のうちに定型文で返す
・面接日程の調整:候補日を最初から3つ提示する
・面接:会って見極める
・結果連絡:いつまでに返すかを面接の場で先に伝える

この4つのうち、社長にしかできないのは「面接」だけです。受付確認・日程調整・結果連絡は、文面の型さえ一度作れば、事務の方に渡せます。社内に人がいなければ、外部に出すこともできます。御社では、応募メールの一次対応は「誰の仕事」になっていますか?

まとめ──広告は水物、受け皿は資産

人が採れない時代に、求人広告の予算を増やす前にできることがあります。それは、応募してくれた一人を取りこぼさない段取りを整えることです。私も一人で会社をやっている身として、「忙しくて返せない」が一番もったいないと感じています。応募対応の流れを1枚に書き出して、「その日のうちに返る会社」になる。まずはそこから始めてみませんか。

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