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「その説明、もやっとします」──新規開拓に詰まる会社の41%が見落としている、“言葉の整理”という最初の壁

先日、ある経営者の方と1対1のオンライン面談をしていました。業歴は28年。整体の世界で1つの独自メソッドを碨いてきた方です。多拠点運営から1人法人化を経て、いまは全国に生徒がいるスクールを軸に活動されています。

その方が、私のサービス紹介をひと通り聞いたあとで、こう言ってくれました。

「すごく面白そうな話だなとは思いました。ただ、初見だと、もやっとして分かりにくいんですよね。"こんな人がこうなる"っていう具体例があれば、一気に伝わると思います」

胸に刺さりました。私は、コンセプト→経歴→問題意識→進め方→収益モデル、と順番に積み上げる説明をしていたんです。きれいに並んでいるつもりが、相手の頭には何も入っていなかった、ということなんですよね。

しかも、この方は私に紹介の話を持ちかけてくれていました。「困っている経営者がいたら繋ぐ」と言ってくれていた。そんな人に「もやっと」と言われたということは、本来この方経由で生まれるはずだった紹介を、私自身が消していたということなんです。

「商品サービス力の強化」が課題NO.1の意味

タイミングよく、その翌日に大同生命サーベイの最新レポートが出ました。2025年4月に全国5,985社の中小企業経営者へ調査したもので、テーマはまさに「新規顧客・販路の開拓」でした。

レポートにはこう書かれています。

【中小企業の新規顧客・販路開拓の課題(複数回答)】

・商品サービス力の強化 41%
・開拓に必要な人材の確保 35%
・市場・顧客ニーズなどの情報収集・調査分析ノウハウの習得 35%
・開拓に必要な予算の確保 19%
・開拓に必要なIT活用ノウハウの習得 13%
・出典:大同生命サーベイ2025年4月度調査レポート(2025年5月26日公表)

トップが「商品サービス力の強化」というのが、最初は意外でした。新規開拓と聞くと、人手とか予算とか、もっと"足りないもの"の話になると思っていたからです。でも経営者自身が「うちの商品・サービス、まだまだ弱いな」と感じている。これが4割を超えている、というのが今の数字なんですよね。

ここで私が引っかかったのは、「強化」って何をすることなのか、という点です。新製品の開発? 値下げ? パッケージの刷新? たぶん、その全部なんでしょう。でも、整体師の方に「もやっとする」と言われた身からすると、もう1つ手前に大きな壁があるように思えてきます。

それは、「いまある商品やサービスを、相手にちゃんと伝えられているか」という壁です。

言葉が整っていない会社で、新規は増えない

私はこれまで、住友林業で12年9ヶ月、住宅営業をやってきました。当時の私は、自分の取り扱う住宅商品のスペックは細かく言えるんです。木の樹種、構造、断熱性能、保証期間。でも、目の前のお客さんの暮らしと、その商品がどう結びつくのかを言葉にできていたかというと、正直、怪しい時期もありました。

商品スペックの説明と、相手の暮らしに刺さる言い換えは、別物なんですよね。

中小企業庁が2025年5月に公表した「2025年版中小企業白書」でも、経営理念やビジョンを従業員に共有している企業のほうが、売上高もその増加率も高いというデータが出ています。経営者の頭の中にあるものを、相手に伝わる言葉に変換できる会社は、それだけで業績が違うということなんですよね。出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」

同じ大同生命サーベイの中で、もう1つ面白い数字があります。「新規顧客・販路の開拓に取り組んでいる企業」の50%が、直近1年で顧客数が「増加した」と答えています。一方、「取り組んでいない企業」では19%しか増えていません。

【直近1年の顧客数の増減(新規開拓の取組状況別)】

・取り組んでいる企業:増加50%/変わらない37%/減少13%
・取り組んでいない企業:増加19%/変わらない60%/減少21%
・出典:大同生命サーベイ2025年4月度調査レポート

差は31ポイント。要するに、新規開拓に動いた会社のほうが、ちゃんと顧客が増えているということです。でも、その「動く」の中身が、自社ホームページ刷新・SNS発信・展示会出展のような"打ち手"だけだと、私のように「もやっと」で終わってしまう可能性があるんです。

打ち手を出す前に、自社の説明が相手の頭に絵を描かせられるかを、もう1回確かめる必要があるんですよね。

具体例から入るだけで、説明は変わる

整体師の方に指摘されたあと、私は自社サービスの紹介を組み直しました。最初の30秒だけを徹底的に書き換えたんです。

以前の言い方はこうでした。

「中小企業の業務を整理して、外部パートナーと一緒に解決する事業コーディネーターをやっています。人を増やす前に、仕事を分けましょう、というコンセプトで…」

書き換えた後はこうです。

「たとえば、職人さん30人くらいの建設会社の社長さんで、見積もりも採用もSNSも全部抱えて、夜中まで止まってしまっている方、いませんか。そういう"なんでも抱える社長さん"の代わりに、仕事を仕分けして、適切な人に割り振る役、というのが私の仕事なんです」

長さはほぼ同じです。でも、相手の頭に絵が浮かぶ確率は全然違うはずなんですよね。

これは、特別な技術ではないと思っています。整体師の方も、こう言ってくれていました。「私のサービスも、施術前後のお客さんの変化を見せれば一発で伝わるんです。たぶん、大場さんも同じだと思いますよ」と。

中小企業の経営者の多くが、目の前のお客さんを救った経験や、これまで助けた現場の話を、たくさん持っています。にもかかわらず、自社紹介の場になった瞬間に、急に抽象論に戻る人が多い。私自身もそうでした。具体例は手元にあるのに、説明では使わない、というよくある罠です。

「業務の書き出し」と「言葉の書き出し」は同じこと

私はふだん、お客さんと話すときに「業務を1枚に書き出してみましょう」と提案しています。問い合わせ受付から請求まで、どんな工程があって、誰が、何のツールで、月何時間かかっていて、その人が休んだら止まるのか。これを1枚に並べてみるだけで、自社の状態が見える、というやり方です。

今回、自分が「もやっとする」と言われて思ったのは、これと全く同じことを、自社サービスの説明にもやらないといけないということでした。

過去半年で支援した事例を1件ずつ書き出す。どんな会社の、どんな状況に、どんな打ち手で、どこまで進んだのか。今もまだ進行中の案件であれば、いまの段階だけでも記録しておく。これを並べると、自分が"何の会社か"が自分自身で見えてくるんですよね。

商品・サービス力の強化というと、つい新商品の開発のような大きな話に向かいがちです。でも、業歴の長い経営者の方ほど、すでに強いものを持っていて、それを言葉にできていないだけ、というケースは本当に多いと感じています。

新規開拓の効果を感じた施策の上位は、「新しい商品・サービスの開発(26%)」と「自社ホームページやSNSでの情報発信(23%)」でした。情報発信が効くと出ているのに、その肝心の中身が「もやっと」していたら、もったいないんですよね。

おわりに──説明できないことは、紹介もされない

紹介って、結局のところ、紹介してくれる人が「あ、いまの話、あの人の出番だ」と思い出してくれた時に生まれるものなんです。記憶に残らない説明は、紹介の場面でも引き出されないんですよね。

整体師の方が私にくれた一言は、商品サービス力という"中身"の話ではなく、それを"どう伝えるか"の話でした。でも、今の中小企業の課題の入り口は、案外この一段手前にあるのかもしれません。

もし、自社の説明を「いま誰かにしてみてください」と言われて、コンセプトと経歴から入ってしまう癖があるとしたら、最初の30秒を具体例だけで言い切る練習を、ぜひ1回だけやってみてください。それだけで、来月の名刺交換の景色が変わるかもしれません。

私自身も、ここから言葉の書き出しをやり直します。一人で営んでいる会社だからこそ、自分の説明が会社の説明そのものになるので、サボれないんですよね。

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