建設業で働く女性は18.4%──“入れる仕事”にする前の一枚
建設業で働く女性の比率が、2025年に18.4%と過去最高になりました(日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」、総務省労働力調査より。2026年6月更新)。少しずつでも前に進んでいるのは、いいことだと思います。ただ、全産業の女性比率45.8%と並べてみると、その差はまだ大きいんですよね。国も本腰を入れていて、2025年3月には官民共同で「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画」を策定し、2026年3月には第1回のフォローアップ会議も開かれました。「女性にもっと入ってもらおう」という掛け声は、いよいよ本気になってきました。でも私は、掛け声の前に片づけておくことが一つあると思っています。
■ まず、いまの数字を並べてみる
議論の前に、事実を押さえておきます。
・建設業の女性就業者比率:18.4%(2025年・過去最高)。全産業は45.8%
・建設業の女性就業者数:88万人(2018年以降、80万人台で推移)
・うち技術職(設計や施工管理などの専門職):約5万人で、2002年以降もっとも多い
・建設業の就業者数:477万人(ピークの1997年685万人と比べ69.6%)
・年齢構成:55歳以上が約37%、29歳以下は約12%
(出典:日本建設業連合会「建設業デジタルハンドブック」、総務省「労働力調査」、国土交通省)
女性は少しずつ増え、技術職の数も過去最高。それでも全産業の半分以下にとどまっています。一方で、現場を支える人は減り続け、高齢化も進んでいる。「人が足りないなら、これまで入ってこなかった人にも入ってもらう」──理屈はその通りです。問題は、受け入れる“仕事の形”が整っているか、なんですよね。
■ 「増やす」より先に、「入れる形」になっているか
女性活躍の実行計画では、トイレや更衣室といった設備の整備、働き方の見直し、キャリアの見える化などが柱になっています(国土交通省)。どれも大事です。ただ、私が現場の話を聞いていて感じるのは、もっと手前に壁があるということなんですよね。
それは、仕事が“その人にしかできない形”のままになっていること。
見積もりの出し方、協力会社とのやり取り、安全書類の作り方。その多くが、ベテランの頭の中にある「名人芸」で回っています。名人芸は強い。でも、名人芸のままだと、新しく入ってきた人──女性でも、若手でも、外から来た人でも──は、そこに入っていけないんですよね。教える側も「見て覚えて」としか言えない。これでは、せっかく設備や制度を整えても、戦力になる前に辞めてしまいます。
だから順番として、「人を増やす」より先に「誰でも入れる仕事の形」を作る。具体的には、業務を一度ぜんぶ書き出して、3つに仕分けることをおすすめしています。
・現場でしか判断できない仕事(社長やベテランが担う)
・手順が決まっている事務(外注やAIに任せられる。AI-OCR=紙の書類を自動でデータ化する技術なども使える)
・そもそも要らない仕事(二重チェック、使われない書類)
実際、女性の技術職が過去最高の約5万人まで増えたのも、図面作成や施工管理のように「手順とツールで進められる仕事」が広がってきたからだと思っています。逆に、現場の技能職で女性比率がなかなか上がらないのは、仕事が体で覚える名人芸の色を強く残しているからではないでしょうか。つまり、“型になっている仕事から、人は入ってくる”。これは建設業に限らず、どの業種にも当てはまる話なんですよね。
この1枚があると、「この部分なら、入ったばかりの人でもできる」という受け皿がはっきりします。
■ この「1枚」は、女性採用だけの話じゃない
ここが大事なところなんですが、業務を書き出して型にする作業は、女性を採るためだけのものではありません。
同じ1枚が、若手の定着にも効きます。若手が早期に辞める大きな理由の一つは、「何を教われるのか分からない」という不安です。手順が1枚になっていれば、教える順番が見えます。同じ1枚が、事務の外注にも効きます。手順が決まった仕事を書き出せていれば、そのまま外に出せる。同じ1枚が、いざという時の引き継ぎにも効きます。
つまり、「女性が入れる形」を作ることは、会社そのものを“人が入れ替わっても回る形”にすることなんですよね。属人化を解くというと難しく聞こえますが、やることは「頭の中にある手順を、紙に出す」だけです。
私自身、住宅営業をしていた頃は、成果が出ない時期ほど「気合いと感覚」で乗り切ろうとしていました。でも、うまくいった商談を一つずつ書き出して、“誰が辿っても同じ手順”に直してから、ようやく数字が安定したんです。感覚を型にすると、自分も、後から入る人も動けるようになる。これは営業でも現場でも同じだと思っています。
■ まとめ──採る前に、仕事を“辿れる形”に
女性比率18.4%という数字は、裏を返せば「まだ8割以上、伸びしろがある」ということでもあります。ただ、設備や制度を整えるだけでは、たぶん一気には増えません。受け入れる仕事の形が、名人芸のままだからです。
人を増やす前に、まず仕事を書き出して、誰でも辿れる形にする。その1枚は、女性採用にも、若手定着にも、外注にも、引き継ぎにも効く「共通の土台」になります。遠回りに見えて、いちばん確実な一手だと、私は思っています。
まずは、いちばん属人化している業務を一つ、紙に書き出してみるところから。それが、次に入ってくる誰かの入口になります。
あわせて読みたい
「採る前」に受け入れを整える、という同じ順番の話です。
名人芸を「1枚」にして渡す、標準化の実際です。
属人化=「社長の記憶頼み」を解く話にもつながります。
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