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工事写真は「撮る」より「片づける」で日が暮れる──現場の残業をつくる、見えない事務

建設や設備工事の現場を回っている社長と話していると、必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。「日中は現場、書類は夜」。日が落ちてから事務所に戻って、ようやくパソコンに向かう。その夜の作業の中でも、地味に時間を食っているのが「工事写真の整理」なんですよね。撮るのは一瞬。でも、片づけるのに日が暮れる。今日はこの“見えない事務”の話を、現場の社長の顔を思い浮かべながら書いてみます。

残業の正体は「気合」ではなく「事務の置き場所」

まず数字から入ります。施工管理(現場の工程・品質・安全をまとめる仕事)の残業は、感覚の話ではなく、調査ではっきり出ています。

  • 月平均45時間超の残業をしている技術者:13.09%

  • 1か月の最大残業時間が「45時間超」:42.60%

  • 同じく「80時間超」:19.13%

(出典:国土交通省「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」令和5年)

建設業は2024年4月から時間外労働の上限規制(原則 月45時間・年360時間)が本格的に適用されています。ここに並んだ「45時間超」という数字は、すでに法律のラインに触れているか、踏み越えているかの瀬戸際だということです。働き方の問題であると同時に、会社を守る問題になっているんですよね。

民間の調査でも、施工管理の平均残業は月38.5時間。会社員全体の平均13.0時間(厚生労働省)とくらべると、ざっと3倍です(出典:セコカンプラス/ten-navi)。なぜこうなるか。昼間は現場に張りついて監督するから、写真・記録・報告書といった事務は夕方以降にまとめてやるしかない。つまり残業の正体は、本人の能力でも気合でもなく、「事務の置き場所が夜しかない」という時間設計の問題なんです。

工事写真は、撮って終わらない仕事

数ある事務の中でも、工事写真がやっかいなのは「撮影で終わらない」ところです。流れを書き出すと、こうなります。

  • 撮影:小黒板(工事名・種別・寸法などを書いた黒板)を写し込んで撮る。準備と記入だけで人手が要る

  • 整理:事務所に戻って、撮影日・工種・場所ごとにフォルダ分け

  • 台帳化:エクセルや専用ソフトに貼り付けて、提出用の写真台帳をつくる

ある写真管理ソフトの導入事例では、「デジカメで撮った写真をパソコンに取り込んで整理するだけで、1日1時間以上かかることもあった」と紹介されています(出典:Photoruction 平山建設事例)。1案件で毎日1時間。これが2案件、3案件と並走したら、それだけで夜が消えてしまう。撮影点数の多い設備や土木の現場なら、なおさらです。

ここで一度、立ち止まって考えてみてほしいんです。あなたの会社で、工事写真の整理に毎月どれくらいの時間が使われているか、即答できるでしょうか。撮影は現場で目に見えるから意識されやすい。でも、夜の事務所でひとりコツコツやっている整理や台帳づくりは、誰の目にも触れないまま、まるごと一人の肩に乗っていることが多いんです。

「忙しい」の中身は、たいてい混ざっている

いろいろな現場の社長と話していて感じるのは、「忙しい」の中身がほとんど“混ざっている”ということです。自分にしかできない仕事と、人に渡せる仕事と、そもそも要らない仕事が、ぜんぶ一緒くたに「業務」という大きな袋に入っている。だから手のつけどころが分からず、結局ぜんぶ自分で抱えてしまう。

工事写真というありふれた事務も、分けてみると景色が変わります。

  • 現場でしかできない:撮影、立ち会いでの確認

  • 事務所で巻き取れる:写真の取り込み・フォルダ分け・台帳づくり

  • そもそも見直せる:撮りすぎていないか、提出に本当に要る写真はどれか

一枚に書き出すときのコツは、難しく考えないことです。左に「やっている作業」、まん中に「やっている人」、右に「だいたいの月の時間」。これだけで十分です。書き出した瞬間に、「この時間、本当に監督がやる必要あるんだっけ?」という問いが自然に立ち上がってきます。

電子小黒板(黒板をデジタルで写し込む仕組み。国土交通省の基準を満たせば正式な納品データとして使えます)のような道具を入れるのも一つの手です。ただ、私が強くお伝えしたいのは、道具を入れる前に「どの作業を、誰が、月に何時間やっているか」を一枚の紙に書き出すほうが先だ、ということ。順番が逆だと、道具だけ増えて現場はそのまま、という“あるある”にはまります。

人を増やす前に、まず仕事を分ける

人手が足りないと、つい「採用しなきゃ」と考えがちです。でも、工事写真みたいに当たり前にやっている事務こそ、「撮る」と「片づける」に分けてみると、社長や現場監督が抱えなくていい部分が必ず見つかります。そこを先に手放せれば、新しく人を増やさなくても、夜が少し短くなる。

今日の夜、事務所でパソコンに向かうその作業を、一度だけ紙に書き出してみてください。「これ、自分じゃなくてもいいな」が一つ見つかれば、それが手放しの第一歩です。あなたの会社の“見えない事務”は、どこに隠れているでしょうか。

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