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製造業向け|作業する人に、全部を考えさせる仕事の渡し方は危ない

現場で仕事を渡す時、つい情報を全部渡したくなることがある。

図面一式。
仕様書。
過去のやり取り。
お客様からの注意事項。
材料の都合。
納期の事情。

何も渡さないよりは、もちろん良い。

ただ、全部渡せば親切かというと、そうとも言い切れない。

受け取った側は、そこから自分の作業に必要な情報を探すことになる。

どこを見ればいいのか。
自分に関係あるのはどこなのか。
どこまで判断していいのか。
分からないまま進めていいのか。

情報が多いほど、作業者が安心するとは限らない。

むしろ、作業そのものに入る前に迷わせてしまうことがある。

切断する人には、まず間違いのない寸法がいる

切断する人に必要なのは、まず間違いのない寸法指示だと思う。

長さ。
幅。
数量。
材料。
向きがあるなら、その向き。

ここが整理されていれば、切断作業は進めやすい。

もちろん、幅広く見られる人がいれば心強い。

切断の段階で、後の組立で困りそうな寸法に気づく。
材料取りが悪いことに気づく。
図面の矛盾を拾う。

そういう気づきに助けられることはある。

ただ、それを切断する人全員に毎回求めるのは少し違う。

切断する人が、図面全体の意図やお客様とのやり取りまで毎回読み解かないと動けない。
それでは、切る前に考えることが多すぎる。

構造や材料取りなど、専門的に見た方がいい部分は現場側で見るべきだと思う。
でも、それは全員が全部を背負うという意味ではない。

考える人が先に考える。
切断する人には、切断に必要な形で渡す。

そこを分けないと、現場の判断は人によって変わってしまう。

仕上げる人には、寸法よりも見る場所がいる

仕上げる人に、切断寸法の細かい説明はあまり必要ないことが多い。

それより必要なのは、どこを仕上げるのかだ。

見える面なのか。
手が触れる場所なのか。
角を落とすのか。
木口をきれいに見せるのか。
裏面まで同じ仕上げが必要なのか。

仕上げる人が知りたいのは、製品全体の設計思想よりも、今自分が触っている場所をどこまで仕上げればいいのかだと思う。

ここが曖昧だと、人によって仕上がりが変わる。

見えない面まで丁寧にやる人もいる。
必要最低限で流す人もいる。
気になるところを全部直そうとして時間がかかる人もいる。

どれが正しいかは、作業者の性格だけでは決まらない。

最初に渡された指示で決まる。

仕上げ範囲が決まっていないのに、人によって仕上がりが違うと責めるのは少し違う。

それは作業の問題というより、渡し方の問題かもしれない。

全員が全部を分かる必要はない

現場には、全体を見られる人が必要だ。

前工程の違和感に気づく人。
後工程で困るところを先に拾う人。
図面と現物のズレを早めに止める人。

こういう人がいると、不良になる前に止められる。

ただ、それを全員に求めると、仕事が重くなる。

切断する人全員に、組立後の構造まで考えさせる。
仕上げる人全員に、材料取りや加工工程まで読ませる。
検査する人全員に、見積やお客様とのやり取りまで把握させる。

理想としては強そうに見える。

でも、現実の現場では時間も経験も限られている。

全員が全部を分かる必要はない。

大事なのは、誰が全体を見るのかを決めることだと思う。

作業する人には、その作業で迷わない指示を渡す。
全体を見る人には、前後の工程や不良の芽を拾ってもらう。
現場リーダーや経験者は、作業者が気づきにくいところを先に見る。

役割を分けるから、仕事は安定する。

全員が全部を見る職場は、一見すると強そうに見える。
でも実際には、誰が判断するのかがぼやけることもある。

誰かが気づくだろう。
誰かが止めるだろう。
誰かが確認するだろう。

そうなると、かえって危ない。

悩んだら、担当に報告・相談する

作業する人に、すべてを判断させる必要はない。

切断する人は、切断に必要な寸法と数量が分かればいい。
仕上げる人は、仕上げる場所が分かればいい。
組み立てる人は、向きや順番が分かればいい。
検査する人は、合否の線が分かればいい。

そのうえで、作業中に違和感が出たら止める。

寸法が合わない。
図面と現物が違う。
仕上げる範囲が分からない。
このまま進めると後ろの工程で困りそうに見える。

そういう時まで、無理に自分で答えを出さなくていい。

悩む部分があったら、担当に報告する。
判断に迷ったら、相談する。
止めた理由を伝える。

このルールだけ決めておけば、作業者は余計な判断を背負わなくて済む。

大事なのは、何も考えなくていい職場を作ることではない。

考える場所を間違えないことだと思う。

作業者は、自分の作業に集中する。
違和感があれば止める。
判断する人に渡す。

それでいい。

全員が全部を考える必要はない。
でも、誰も何も気づかなくていいわけでもない。

「迷ったら止めて相談する」

この線があるだけで、現場はかなり動きやすくなる。

作業者を迷わせないことは、甘やかしではない

作業する人に余計な判断をさせない。

こう書くと、少し甘やかしているように聞こえるかもしれない。

でも、品質を安定させるためには必要なことだと思う。

必要な情報だけを渡す。
迷う部分を減らす。
判断する人を決める。
異常があれば止める。

こうしておけば、作業者は作業に集中できる。

反対に、何でも作業者に考えさせると、現場は不安定になる。

切断する人は切断に集中できない。
仕上げる人は仕上げに集中できない。
組み立てる人は順番に迷う。
検査する人は合否の線を探す。

そのたびに確認が増える。

「これはどっちですか」
「ここまでやりますか」
「この面も仕上げますか」
「この寸法で合っていますか」

確認が多い人が悪いように見えることもある。

でも本当は、作業する人に考えさせすぎているだけかもしれない。

必要な情報を、必要な人に渡す

作業が遅い。
確認が多い。
人によって仕上がりが違う。
同じところで何度も止まる。

そういう時、作業する人だけを見てしまいがちだ。

でも、仕事の渡し方を見ると違う景色が見えることがある。

切断する人に、切断に必要な情報が渡っているか。
仕上げる人に、仕上げる場所が分かる形で渡っているか。
組み立てる人に、向きや順番が分かるようになっているか。
検査する人に、合否の線が渡っているか。

そこが曖昧なら、現場で迷いが出るのは自然だ。

作業者に全部を考えさせる仕事の渡し方は、一見すると自主性を求めているように見える。

でも実際には、考えるべきことの整理を現場に押し付けているだけかもしれない。

できるだけ、作業する人には余計なことで迷わせない。

必要なことだけを、必要な形で渡す。

悩んだら報告する。
判断に迷ったら相談する。
おかしいと思ったら止める。

そこだけ決めておけば、作業者は全部を背負わなくていい。

切断には寸法。
仕上げには範囲。
組立には向きと順番。
検査には合否の線。
迷ったら担当へ戻す。

仕事を安定させるには、それで十分な場面も多い。

現場で本当に考えるべきなのは、作業者にどこまで考えさせるかではなく、誰がどこまで先に考えておくか。

そこなのだと思う。


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