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野やぎさんが、エッセイを書く上で意識しているコツ・世界観の滲ませ方とは?舞台朗読で培われた「リズム感」をエッセイに活かす方法

2026年3月2日〜3月31日にnoteで開催したコンテスト「書く人生がはじまった瞬間」にて、審査員特別賞・みくまゆたん賞を受賞されたのが、人気noterの野やぎさん。

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今回はその副賞として、5月8日20:00〜に開催された「公開インタビュー・スペース」から、インタビュー記事をお届けします。

当初は「zoomでやりましょうか」と話そうと考えていたのですが、野やぎさんから「スペースでやりましょうか?」とお声がけをいただき、公開スペースを開催する運びとなりました。

野やぎさんは朗読経験があるので、説明がお上手です。お話から得る学びも多く、上質なエッセイ講座を特等席&裏口入学で受講したような、不思議な気持ちになりました。

インタビュー本文は、こちらからどうぞ!


「エッセイの世界観は、読み手の頭の先にあるんです」

そう語るのは、会社員noterの野やぎさん。子育てをはじめたころにnoteを始め、それ以来エッセイや小説などを執筆しています。文章から紡がれる野やぎさんならではの視点、エッセイから紡がれる世界観にはファンも多く、多くの読者を抱えています。

過去には「freee #給付金をきっかけに コンテスト PowerToスモールビジネス賞」「未来のためにできること 文藝春秋SDGsエッセイ大賞 優秀賞」「ベストレビュアー賞(創作大賞2024・2025)」など数多くのコンテストへの受賞歴も。

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野やぎさんは、インタビューの中で「世界観は、相手の脳みその先にある」と、エッセイを綴る上で意識しているコツについて、語ってくださいました。

note活動の他にも、朗読会などの活動もされています。野やぎさんによると、朗読することで「声に出して読むことで、リズムのズレに気づいたりする」とのことでした。

今回のインタビューでは、そんな野やぎさんに「エッセイを書くコツ」をたっぷり伺いました。

■ noteを始めたきっかけは、役者の先輩だった

みく:まず始めに、野やぎさんがnoteをはじめたきっかけについて教えてください。

野やぎ:役者の先輩が有料noteを書いていて、ご祝儀のつもりで買ったのが最初ですね。そこから登録しました。noteはプラットフォームの管理がしっかりしていて、失敗も成功も“浄化”しようとしないところが好きです。書きやすいんですよね。

みく: 「野やぎ」という名前が、以前からユニークだなと思っていて。名前は自分で考えられたのでしょうか?

パーソナル編集者の、みずのさんにつけてもらいました。

当時は対面イベントがあって、壁打ちしたり「エッセイの種を10個見つけてください」という勉強会があったんです。その時に「野やぎ」という言葉のフックが凄いって、気に入っていただけたのが、このペンネームに決めた理由です。

プロフィールは“お店の看板”だから「月◯本書いてます」と入れるといいと言われて、今も「月2本くらいのペースです」と書いています。

■ エッセイを書く上で意識しているのは、共感より「ですよねぇ」

みく:野やぎさんが文章を書く上で心掛けていることについて教えてください。

野やぎ:序盤で読者の心を掴みたい時は、読み手が想像しやすい体験を最初に置くと読んでもらえる気がします。

真夜中の親指シュッシュから、こんなに世界が広がるとは。

受賞作の冒頭。寝かしつけのことですが、「えっ?何のこと?」とハッとしちゃいますよね

あと、声に出して読むことも大事。朗読ってメタ認知なんですよ。声にするとズレが分かるんです。

みく:確かに、音読って大事ですよね。野やぎさんの文章って、冒頭から「安心して読める」雰囲気が漂っているのも、魅力と感じます。

野やぎ:読んでくれる人と一緒に楽しみたいんです。だから冒頭で「面白そうでしょ?」「安心していいですよ」と提示できると、読み手も構えずに入ってこれるというか。

僕は、共感の「わかる~!」より「そうっすよねぇ」の距離感が好きなんです。エッセイは共感しすぎるものだと、魂を持っていかれる感じもあるので、その軸じゃないものもあったらいいのかなと思っていて。

読み心地がいいとか、のど越しがいいとか。でもぱっと振り返ると「ささくれが残る」とか。そういうものを表現できたらいいなとは考えています。

■ 野やぎさんの「世界」はどこにあるのか

みく:野やぎさんはエッセイを書くにあたり、工夫していることは何かありますか?

野やぎ:読者に伝わる言葉をチョイスするために、頭の中にでてきた言葉を「分解」するプロセスを踏みます。

まずは、自分が書きたいものを書きます。その時に「読者に伝わりづらい言葉・時代性のある内容」があると伝わらないので、必要なら分解して一般化した言葉にするし、時には「ここは読み取れる人に届けばいい」と割り切ることもあります。

みく: 割り切りも大切ですよね。野やぎさんのエッセイは、2〜3行で景色が切り替わるような文章が印象的です。いろんな世界を見せてくれるというか。世界観の作り方で意識していることはありますか?

野やぎ:世界観というキーワードでしばらく考えていたのですが、みくまゆさんは逆に「エッセイの世界観」ってどこにあると思いますか?

みく:何気ない日常にも、その人の見える世界を見せるのがエッセイの醍醐味かなと思っていて。同じオムツ替えるでも、人によっては雪だるまや、お餅に見えるに見えるみたいな感じでしょうか……。

野やぎ:僕は、世界観は「相手の脳みその先」にあると思っています。世界観を再生する先が「どこ」にあるかで、書き心地が違う気がします。

相手に深く届く必要はないと思ってはいるのですが、そのあたりを意識することで読み手に届く深度も違う気がします。

たとえば、自分の何かしたことが「滑稽だな」って思うことがあるじゃないですか。それを書く時に、頭の中で分解して「あれは〇〇に似ているな」とかをいくつかパターン出ししていって、振り返った時に「自分が一番コレだ!」と思ったものと、相手が想像したものが一致していたら嬉しいですね。

アイススケートのようにすり足を繰り出しトントンと背中をやさしく叩く。ツー、トン。ツーツー、トントン。そろり、そろり。その姿、まるで能である。
いま思い出すと……どう考えても謎の儀だが、当時は真剣に寝かしつけ方法を模索して辿り着いた境地だった。

受賞作より。ここは「あの動きは、能だ!」とは思っていないとのことでした。

みく:書き手が「世界観をつくる」ではなくて、「相手の脳みその先」にあるという考え方が面白いです。どうしてそう考えるようになったのでしょうか。

野やぎ:舞台朗読の経験が大きいですね。舞台朗読って、一度離脱すると戻れない。音が耳に入り、頭の中で言葉になり、想像が生まれる。想像を再生できるのは相手の脳みその中にあるという考えがあるので、「この世界を見せよう」みたいなものは、あまり考えていないかもしれません。


野やぎさんが参加する、エッセイを書いて読む朗読会も6/6に開催されるそうです。気になる方はぜひ!

■ リズムと「呼吸」のつくり方

みく: 野やぎさんの文章は、川の流れみたいに引っ掛かりがないのに、要所でガツンとくるんですよね。

野やぎ: 朗読経験があるので、最後はリズムで削るようにしています。句読点もかなり変えます。「タンタタンタン」ってリズムで読めないなと思ったら直したり。黙読した時の「音」を気にしています。

みく: 好きなリズムってありますか?

野やぎ: 「お寿司焼肉食べ放題」ですね。語感がいい言葉って、中身関係なく読めるんですよ。迷ったら「5・7・5」にすることもあります。

みく: 改行やシーンの切り替えも絶妙ですよね。

野やぎ:途中で読み返せる場所があるといいなぁと思って、擬音でシーンをかえるなどの呼吸ポイントを入れています。

視点が変わるところで、シーンを替えたり、行、フィラーなどの「呼吸ポイント」を入れています。たとえば「ぐるぐるぐる」は、子どもが回っている描写なんですが、実は「あ行」で終わらないようにしているんです。

長男が生まれて、パートナーと交代での寝かしつけは苦戦の連続だった。すべてがはじめましてのフルコンボ。爆誕した命というやつは、全方位に無防備だから超多忙。しかし、慣れない育児にも人はなんとか適応しようとするもの。なんとか編み出したのが、この方法だった。

ぐるぐる、ぐるぐる。

まったくの余談だが、長男はいつもの抱っこより少し低空の位置でツーっと床と平行移動してトン。

受賞作より

「~た」で終わると「あ行」で終わるじゃないですか。「あ行」で終わって「あ行」で始まると、シーンが切れない。だから「ぐるぐるぐる」で呼吸を作っているんです。そこから「まったく余談ですけどね~」って繋げています。

みく:文章を書く時に、リズムを考えるようになったきっかけはありますか。

野やぎ:はい。朗読の経験が活きている気がします。たとえば「~すると」の「と」が上がるのか、下がるのか。どこに向かうかを考えたりします。それを考えることで、その世界がコントロールできるんですよ。黙読した時の「音」を気にします。

■ 安心して、書き続けるための工夫・心構えとは?

みく:野やぎさんは普段から、安定感のあるエッセイやSNSが多いので、「こういうことを書いちゃだめだな」というのを意識して書いているような気がしていて。書かないと決めていることはありますか?

野やぎ: 小説を書くときは、「意味なく人を殺さない」と決めています。
たとえ物語の中の出来事であっても、誰かが死ぬのは悲しいじゃないですか。だからこそ、命を軽々しく扱いたくないんです。

その一方で、「書く」という行為そのものは、どんな内容であれ誰かを傷つけてしまう可能性があるとも思っています。だからといって「書かない」と線を引くわけではありません。

ただ、それを書くなら、それ相応の覚悟と磨き込みが必要だと思うんです。
最終的には、書き手の責任になりますから。

みく: 読み手の気持ちだけじゃなく、自分への「もしも」まで冷静に考えているところが、本当にすごいなと思いました。

書くことはネガティブにするとしんどい。自分を守る場所を作ることも大事

みく:エッセイを書き続けるって、大変だと思うんです。野やぎさんは、書いていて辛いことってありますか?

野やぎ: 僕は、基本的に「書くことは楽しい」と思っているんです。でも、楽しいだけでは続かない時期もある。だからこそ、自分を守るための「好き勝手に書ける場所」をひとつ持っています。誰も読まない有料マガジンですね。あれは、保険みたいなものです。

世の中には「一度逃げると、逃げ道を奪われる」と考える人もいます。でも僕は、逃げ道があるからこそ頑張れる人もいると思うんです。

書くことがしんどくなって、ネガティブに受け止めてしまって、もう辞めようかな……と追い詰められるくらいなら、続けられる工夫を持っていたほうがいい。

「辞め時」を自分で決めておくのもひとつの方法ですし、保険があるからこそ踏ん張れる人もいる。選択肢は、多いほうがいいんですよ。

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書き続けるための工夫から、言葉の選び方、視点の捉え方、心構えまで……。

野やぎさんの文章における「読み心地の良さ」は、日頃の心掛けや経験から培われた思考と、朗読で鍛えられたリズム感、そして「読み手と一緒に楽しみたい」という思いやりから生まれているのだと感じました。今後の野やぎさんの活動も、心から応援しています。

取材・文 / みくまゆたん

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