エッセイを紡ぎ声にのせる朗読会
この企画の出発点は、すごく個人的なところにあります。
「自分の好きなものが、よくわからない」
ずっと思っていたことなんです。
俳優として、ナレーターとして、声の仕事をしてきて、声で表現することは仕事として続けてきたのに、自分は「何が好きなの?」と聞かれると、うまく答えられない。
得意なことはある。
できることもある。
でも「好き」が言語化できない。
その違和感が、ずっとありました。
声の仕事って、
誰かの言葉を届ける仕事なんですよね。
企業の言葉
商品の言葉
番組の言葉
物語の言葉
どれも大切な言葉だけど、
自分の言葉ではない。
もちろん、そこに誇りはあるし、
とてもやりがいのある仕事です。
でも、あるとき思ったんです。
自分は「声を使っている」のに、
自分の言葉を声にのせたことが、
ほとんどない、ということに。
そこで出会ったのが、日記文学とエッセイでした。
立派じゃなくていい。
結論がなくてもいい。
正しくなくてもいい。
ただ、
「自分が見ている世界」を書けばいい。
小説みたいに物語を作らなくてもいい。
評論みたいに正しさを証明しなくてもいい。
ただ、自分の感じていることを、毎日パソコンに向かって書き続けた日々。
二十三時まで営業しているカフェに、何度も救われました。
「これ、声にのせたい。」
ある日の自分の日記を声に出してみる。
同じ言葉なのに、全然違う。
声になると、温度が生まれる。
間が生まれる。
呼吸が生まれる。
ためらいが生まれる。
文字では見えなかったものが、
急に立ち上がってくる。
私の声が、私の言葉を取り戻した。
そんな風に思えたんです。
もしかしたら、
同じことを思っている人がいるんじゃないか。
自分の言葉を書いている人。
でも、それを声にのせたことがない人。
文章を書く人と、声で表現する人。
この二つの世界は、近いようで遠い。
だったら、
それをつなぐ場所を作ってみたい。
そう思って生まれたのが、
エッセイを紡ぎ声にのせる朗読会です。
このイベントのルールは、たったひとつ。
「エッセイを書いた本人が朗読する。」
声の仕事をしている人でなくていい。
朗読の経験がなくてもいい。
書いた人が、声にのせる。
これが一番大事なところです。
上手に読むことが目的じゃない。
完成度を競う場所でもない。
自分の言葉を、
自分の声で、読んでみる。
ただ、それだけです。
だけど、
ひとりでやるのと違うところは、
「編集会議」と、「朗読稽古」があります。
編集された文章と、
編集されていない感情が出会うことで、
エッセイ朗読として、皆様に届けることができるのです。
そして、このイベントは、
「聴く人」にも変化が起きます。
エッセイを聴いたあと、
自分の中に言葉が生まれるかもしれません。
「私ならどうだろう」
「自分はどう思っていたんだろう」
誰かのエッセイを聴いたあと、
次に言葉を持つのは、聴いている人になる。
自分でもなにか書いてみたいと思えるようになるかもしれません。
ここから少しお知らせがあります。
前回の朗読会でも行いましたが、
会場の小スペースで展示を行おうと思っています。
テーマは、
「子供のころの宝物は何ですか?」
この問いに対する、
みなさんの言葉を展示したいです。
物でも良いです。出来事でも良いです。
「今思うと宝物だったな」という記憶でも良いです。
会場に来る方も、来られない方も、
ぜひ応募していただけたら嬉しいです。
誰かの宝物の話が、
また誰かの言葉を呼び起こす。
そんな展示にしたいと思っています。
そして、新たな試みとして、今回「雨宿り席」というものを用意しました。
これは、会場に来られない方向けの席です。
ただ、生配信や動画配信などは、実現できませんでした。
しかし、オンラインで参加できる形として、noteを用意しました。
この記事の無料スペースに、この企画の音声を配信。
そして有料スペースには、
今回の朗読者が、「子供のころの宝物」というテーマについて
静かに対話している音声を配信しています。
派手な内容ではありません。
でも、朗読会の空気感を、できるだけ詰め込みました。
正直に言うと、
このイベントはまだ、大きな会場でできる規模ではありません。
でも、小さすぎる会場だと、採算が取れないという現実もある。
いまの世の中を見ていると、この企画は必要だと感じています。
だからこそ、もし、
「いいな」と思ってくださった方がいたら、会場に来ていただけたら嬉しいですし、「雨宿り席」から参加していただけたら、とても心強いです。
応援していただける方がいたら、
ご支援いただけると、とても嬉しいです。
この朗読会は、大きなイベントではありません。
とても静かで、
とても個人的で、
小さな勇気が集まる場所です。
自分の言葉を書くこと。
それを声にすること。
それを誰かが聴くこと。
ただそれだけのことを、丁寧に行うイベントです。
もし少しでも気になったら、
ぜひ会場でお会いできたら嬉しいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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