安國愛菜さんの声で、また
朗読者で本を選ぶことが、ときどきある。
『狼と香辛料Ⅱ』を聴き始めたら、その「ときどき」が一段深くなる出来事があった。
家で、ビールを飲みながら。


『狼と香辛料Ⅱ』支倉凍砂/Audible/朗読・安國愛菜
旅の話なのに、座って聴ける本。
家で聴いている。今日は坂を上らない。買い物にも出ない。冷蔵庫から酒を出して、グラスに注いで、テーブルに置く。それだけ。
それなのに、耳の中ではロレンスとホロがもう北の教会都市に着いている。商売の話を始めている。ホロが林檎を欲しがる気配がする。こちらはビールなので、林檎は出てこない。
この本を聴こうと思ったのは、前から気になっていたのもあるけれど、朗読が安國愛菜さんだったから、というのが半分くらいある。小野不由美さんのゴーストハントを聴いていたときも、この人だった。あれは怖い話のはずなのに、どこかユーモラスで、夜に聴いても妙に明るかった。怖いと笑いが同じ声から出てくる。あれはずるい、と思っていた。
ホロの声がいい。「ぬ」と「じゃ」が、嫌味なく置かれる。賢いふりの女が、ほんとうに賢いところを、声でだけ見せてくる。ロレンスの声には、商人の疲れがちゃんと入っている。怪異を喋っていた声と、賢狼を喋っている声が、家のなかで地続きになっていて、なんだか得な気がする。
2巻はロレンスが謀略にはまる。自称賢狼のホロでも解決策が見つからない、というところまでは概要に書いてあるから書く。窮地でホロがどう動くのかは、まだ途中なので何も書けない。書けないけれど、たぶんあの声なら、ぎりぎりまで楽しんでから助けるんだろう、とは思っている。
家にいるのに、リュビンハイゲンの宿屋にいる気がしてくる。あちらでも誰かが酒を飲んでいる。たぶん、同じような顔をしている。
グラスが空になったので、もう一杯注ぐ。続きを聴く理由ができた。
*漫画は新宇佐美式六号で描きました。
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