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十六年前の光で、願いごとをする

七夕の夜、神様と一杯やっていた。

窓の外は曇っていて、星はひとつも見えない。それでも机の上には笹の小枝を置いて、短冊も用意した。雰囲気だけはある。織姫と彦星が年に一度会える日ですよね、ロマンだなあ、とグラス片手に言ったら、神様が涼しい顔でこう返してきた。アルタイルは、地球から十六光年ほど離れておる、と。

十六光年。

つまり、いま見えているあの光は、十六年前に出たものらしい。ということは、今夜わたしたちが見上げている彦星は、十六年前の彦星で。今夜のあの二人は、もう会い終わっているのか、それともまだ会っていないのか。指を折って数えているうちに、さっきまで平べったかった星空が、急に奥行きを持って立ち上がってきた。距離、というものが、こわい。

神様はグラスを揺らしながら、会えたかどうかは、いま決まる話ではない、と言った。それきり黙ってしまった。

短冊を持ったまま、しばらく固まっていた。

願いごとを書こうと思っていたのに、この願いが届くのはいつなんだろう、と考え出したら、手が止まった。十六年後に叶う願いだとしたら、そのころわたしはいくつになっているんだろう。何を願っていたかなんて、たぶん忘れている。

それでも、と思う。届くのが十六年後でもいいから、書いておこうか、とも思う。

結局、短冊はまだ白いままだ。グラスだけ、二杯目に入った。

*漫画は新宇佐美式六号で描きました。


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