【女子校受験対策】 - 2027年度入試対応 最新版 - 行動観察の極意
本記事は、これまでにお届けしてきた、慶應義塾幼稚舎・横浜初等部対策の「運動の極意」「絵画・造形の極意」「行動観察の極意」に続く一本です。共学校と女子校の違いをよく理解していただくためにも、ぜひ前の記事もご一緒にお読みください。
合格するのは、ご家庭で育まれた価値観が道具の扱いに透けて見える子
雙葉・白百合・東洋英和・立教女学院など
女子校〈行動観察〉徹底解説と家庭での具体対策
二月の考査の部屋を、ひとつ思い浮かべてください。
幾つかの机が、ほどよい間隔をあけて並んでいます。それぞれの机には、子ども用のお箸と、白いお皿、そして大豆が二十粒ほど入った深皿が置かれています。子どもたちは、ひとり一つの机に向かって立っています。
先生からの指示は、短いものです。これからお箸を使って、大豆を深皿から白いお皿に移してください。やめ、と言ったらお箸を置いてください、という、シンプルなものです。
何人かの子は、先生のお話が終わらないうちに、もうお箸へ立ったまま手を伸ばしかけています。
一方で、椅子をていねいに引いて、きちんと座って姿勢を正し、それからお箸へ手を運ぶ子もいます。
二分の時間に、何粒の豆が運べたか。その数字は、評価の中心ではありません。
私学の女子校が、この種の課題で見ようとされているのは、その二分の前後に見て取れる、何でもなさそうな一連の所作のほうです。
お箸の試験は、豆の数を競うものではない
椅子をていねいに引いて座り直すところから、先生のお話を背すじを保って聞く時間、お箸を取り上げる手つき、指を添える位置。豆を運び終えたあとに「やめ」の声で箸を置く間。それから立ち上がって椅子を机の下にしまい、後ろを振り返らずに自分の待機場所まで戻る数十秒。
豆を移す動作は、この一連の所作の流れの中に組み込まれた、一瞬にすぎません。
先生方は、お箸を扱う活動の間だけでなく、子どもが部屋に入ってきたその時から、退室の扉が閉まる直前まで、その流れの全体を、ていねいに見ていらっしゃいます。
もちろん、お箸の扱い方それ自体も見られないわけではありません。
たとえば、お箸の先を、お皿のふちに、トントンと打ちつけて先を揃え直す子がいます。よその子に先を越されまいと、一粒目を急いで掴みたい、その気持ちが手に出てしまうのでしょう。けれども、その音が机の上に響いた瞬間に、評価はある意味、もう終わってしまっています。
食卓でお箸を皿に打ちつけることが許されないのは、お箸を扱うお作法のいちばん基本です。
もうひとつ。お箸を持ち上げるときに、先のほう、つまり口に運ぶ側を握って取り上げる子がいます。
これも同じです。お箸を正しく持ち上げるとき、指がかかるのは、中央から上の三分の一の部分です。これから自分が口に運ぶことになる先端を、最初から握り込んでしまう様子は、その子の家の中で衛生観念が教えられていないと判断されてしまう可能性もあるのです。
これら二つの点を考えるだけでも、お箸を扱う試験においては、お箸遣いの巧みさというものは、それほど重要ではないことがお分かりいただけると思います。
それよりも、おはしという毎日用いる道具の扱いについて、ご家庭がどれほど意識しているか、ということがはっきりとわかってしまうと言えるのです。
それはすなわち、「家庭の文化」が見られているとさえ言えるものです。
申し遅れました。私は幼児教室「慶楓会」で小学校受験コースの主任を務めております、松下と申します。十年あまり私立小学校の教壇に立ち、入学考査にも携わってまいりました。
今日は、女子校を志望していらっしゃるご家庭に向けて、女の子だけの学校における行動観察という試験をどのように受けとめれば良いのか、そしてその入学に向けた準備として家庭の日常をいかに積み重ねていけばよいか、その勘どころを、私の経験からお話しさせていただきたいと思います。
幼児教室で授業をしていると、授業のあとに、お母様が時折私のところに尋ねていらっしゃることがあります。「うちの子はおとなしくて、お友達の輪に入っていけません。受験で、行動観察の試験は大丈夫でしょうか」。
そういうお問い合わせに、私はよく、ひとつのお返事を差し上げていました。
たしかにお友達の輪の中に自分から入っていくことも時には大切ですが、それだけが大切なのではありません。周囲をよく見て判断し、自分が今、何をすべき時なのかを判断できるのも大切な力です。ところでお子様は、ご家族の分のお箸を、毎日並べていらっしゃいますか。
行動観察での振る舞いについて質問をしたはずが、急にお箸の話をされて、少しぽかんとされるお母様が、ときどきいらっしゃいました。
お箸を並べることと、行動観察の考査と、そのつながりが見えていらっしゃらなかったのです。
しかし私は、ここに明確なつながりがあると考えています。
お箸をていねいに並べ、それを正しく扱うことを大切にする暮らしの中に、女子校の行動観察で見られている力の芽が含まれているのです。
女子校の行動観察が、見ているもの
雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、横浜雙葉小学校。白百合学園小学校、湘南白百合学園小学校。東洋英和女学院小学部、立教女学院小学校、聖心女子学院初等科、日本女子大学附属豊明小学校、光塩女子学院初等科。
慶楓会にお通いになっている女の子たちのご家庭が目指していらっしゃる志望校のうち、女子校を取り上げれば、おおよそこのあたりに集まります。
ご存じの方も多いかと存じますが、これらの女子校では、ペーパーや個別考査と並んで、行動観察の試験が考査の柱に据えられています。
これまで、このnoteでは、慶應義塾幼稚舎と横浜初等部の行動観察を主題にした記事を、別途お届けしてまいりました。
これらの学校の、最近の考査における行動観察の課題は、四、五人の集団で行う球入れ、玉を投げ合う遊び、限られた道具を分け合うための相談。身体ごと動く活動の中で、その子の本来的な性質が、ぽろりと出てしまう。そういう試験の組み立てになっていました。
女子校の行動観察にも、共通する部分はあります。家庭で培われたふるまいが、そのまま表に出る、という芯です。
ただ、見られるところの中心が、少しだけ違います。
この先では、こうした視点について詳しく解説します。
ここからが、この記事の本題です。
十年あまり私立小学校の教壇に立ち、その後も女子校を志望されるご家庭を毎年数十組お預かりしてきた経験を踏まえてはっきり申し上げます。合格されたご家庭とかなわなかったご家庭のあいだにあるのは、ペーパーの点数の差でも、面接での話し方の差でもありません。
その差は、当日の考査の部屋で急に生まれるものではないのです。もっと前、それぞれのご家庭の食卓や、ふだんのお声かけ、そしてお道具の扱い方の中に、日々、少しずつ育まれていくものです。書店に並ぶ受験対策本にも、大手教室のマニュアルにも、正面から書かれることの少ない、ご家庭の内側にしまわれているところです。
女子校の先生方は、その内側を、限られた考査の時間の中で、驚くほど正確に読み取っていらっしゃいます。
以下では、女子校の考査で実際に見られている具体的な場面を、一つひとつ細かくご覧に入れてまいります。
風呂敷を包む手の中に、何が入っているのか。借りた道具の扱いには、その子のおうちの何が現れるのか。先生の「やめ」のひと言で、子どもたちのふるまいが二手に分かれてしまう、その分かれ目はどこにあるのか。そして、グループでの相談の場面で、女子校の先生方が本当に注目していらっしゃるのは、いちばん声の大きな子ではありません。それでは、いったい、どのお子様のどんな一言なのでしょうか。
これらの観点を、ご家庭の毎日のどこから、どんな順序で積み重ねていっていただければよいのか。年中さんの春から始められるご家庭と、年長さんの秋から慌てて始められるご家庭とでは、当日、お子様の背筋の伸び方が違ってきます。
合格に近づいていくご家庭ほど、意外な場面で意外な所作を、日々ていねいに重ねていらっしゃいます。女子校のお受験を、本気でお考えのご家庭に、ぜひ、最後までお読みいただきたく存じます。
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