浸透|MVVは唱和しても浸透しない。日々の判断に使われて初めて浸透する
浸透
MVVは、覚えられた瞬間ではなく、使われた瞬間に浸透する
全社会で話した。
社内資料にも入れた。
採用ページにも載せた。
オンボーディングでも説明した。
ワークショップも開いた。
バリューカードも作った。
それでも、現場の行動は変わらない。
会議では、いつもの判断が繰り返される。
評価では、結局わかりやすい成果だけが見られる。
マネージャーは、自分の言葉でメンバーに説明できない。
部署ごとに、優先順位が違う。
迷ったときに、MVVへ戻る習慣がない。
この状態で、経営や人事はこう考える。
「まだ浸透していない」
「もっと発信しなければいけない」
「社員に理解してもらう必要がある」
「研修やワークショップを増やそう」
もちろん、伝えることは大事です。
でも、伝えるだけでは足りない。
MVVは、知っているだけでは組織を動かさない。
日々の判断に使われて初めて、現場に入っていく。
前回は、MVVは飾るものではなく、判断を揃えるためにあると書きました。
前回の記事はこちら
Missionは、会社が存在する理由。
Visionは、会社が向かう先。
Valueは、日々の判断基準。
この3つがつながっていると、現場は迷いにくくなります。
逆に、MVVがあっても判断に使われていなければ、会社は言葉を持っているのに、動き方が揃いません。
今回は、そのMVVがなぜ現場に浸透しないのかを書きます。
テーマは、浸透です。
浸透とは、言葉を覚えることではない
MVVの浸透というと、多くの会社は「認知」を増やそうとします。
全社員に説明する。
資料を配る。
社内ポータルに載せる。
経営者が何度も話す。
ワークショップを開く。
バリューを暗唱できるようにする。
それ自体は悪くありません。
知らない言葉は使えない。
聞いたことのない理念は、判断基準にはなりません。
まず知ってもらうことは必要です。
ただ、知っていることと、使えていることは違います。
社員がMVVを言える。
意味も理解している。
共感もしている。
大事だとも思っている。
それでも、現場で使われていないことがあります。
会議で意思決定するときに出てこない。
顧客対応で迷ったときに戻らない。
マネージャーのフィードバックに入ってこない。
評価の場面で語られない。
新しい施策を決めるときに、判断の軸になっていない。
この状態では、まだ浸透しているとは言えません。
MVVを覚えている。
でも、判断は変わっていない。
これは、浸透ではありません。
認知です。
浸透とは
迷ったときに、その言葉へ戻ることです。
判断が割れたときに、同じ軸で考え直せることです。
日々の行動や会議や評価の中で、自然に使われることです。
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発信しているのに、現場が変わらない会社
私はこれまで、
MVVをかなり丁寧に発信しているのに、現場の行動が変わらない会社を見てきました。
経営陣は本気で語っている。
人事も何度も発信している。
社内資料も整っている。
採用広報にも一貫性がある。
入社時にも説明している。
それでも、現場ではあまり使われていない。
会議で意見が割れたとき、最後は声の大きい人の意見で決まる。
顧客対応で迷ったとき、担当者ごとの感覚で判断される。
マネージャーがメンバーに注意するとき、自分の価値観で話す。
部署間で揉めたとき、会社として何を優先するかではなく、自部署の都合が前に出る。
言葉はある。
でも、現場の判断には入っていない。
この状態になると、MVVは少しずつ
「きれいな言葉」になります。
社内に掲げられている。
経営者は大事だと言っている。
採用では語られる。
全社会でも出てくる。
でも、日々の仕事では使われない。
そうなると、社員はこう感じ始めます。
「結局、現場では別の基準で動いている」
「言っていることと、実際に評価されることが違う」
「理念は大事だと言うけど、忙しくなると消える」
「きれいな言葉だけど、仕事には関係ない」
この感覚が広がると、MVVは弱くなります。
言葉そのものが悪いのではありません。
使われないことで、信頼を失っていくのです。
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MVVが浸透しない理由
MVVが浸透しない理由は、社員が理解していないからだけではありません。
多くの場合、問題は別のところにあります。
使う場面が設計されていないことです。
MVVを発信する。
説明する。
共感してもらう。
そこまではやっている。
でも、日々の仕事のどこで使うのかが決まっていない。
会議でどう使うのか。
1on1でどう使うのか。
評価でどう扱うのか。
採用でどう見るのか。
オンボーディングでどう伝えるのか。
マネージャーがどう自分の言葉に変えるのか。
部署間で判断が割れたとき、どう戻るのか。
ここが曖昧なまま、浸透だけを求めても難しい。
経営は話している。
人事は発信している。
社員も知っている。
でも、現場で使う場面がない。
この状態では、MVVは仕事の外側に置かれます。
会社の言葉としては存在する。
でも、業務の判断には入ってこない。
結果として、現場では別の基準が優先されます。
売上が強い部署では、売上だけが正義になる。
忙しい部署では、早く終わることだけが優先される。
管理側では、リスクを避けることだけが前に出る。
マネージャーは、自分の経験で判断する。
メンバーは、上司の顔色を見て動く。
MVVが使われていない会社では、空白を別の基準が埋めていきます
それが積み重なると、会社としての判断が揃わなくなります。
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問題は、浸透不足ではなく運用不足である
こういう状態になると、会社はさらに発信を増やそうとします。
もっと経営が語る。
もっと社内報で発信する。
もっと研修を増やす。
もっとワークショップを開く。
もっと社員に考えてもらう。
もちろん、それが必要な場面もあります。
でも、発信を増やすだけでは変わらないことがあります。
なぜなら、問題は浸透不足ではなく、運用不足だからです。
MVVは知っている。
共感もしている。
大事だとも思っている。
でも、会議で使われない。
判断に入ってこない。
評価に反映されない。
マネジメントの言葉になっていない。
この状態で発信だけを増やしても、現場からはこう見えます。
「また理念の話をしている」
「大事なのはわかるけど、実際の仕事では使っていない」
「結局、評価されるのは別のことだ」
「現場の判断は変わっていない」
こうなると、MVVへの信頼は下がります。
理念が悪いのではありません。
浸透施策が悪いのでもありません
言葉と日々の運用が切れていることが問題です。
MVVは、経営者のメッセージだけでは浸透しない
人事の発信だけでも足りません。
社員の共感だけでも動きません。
会議、判断、評価、1on1、採用、育成。
そうした日々の運用に入って初めて、組織の中で効き始めます。
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管理職が翻訳できないと、MVVは現場に降りない
MVVの浸透で重要になるのは、管理職です。
経営が語った言葉を、現場の仕事に翻訳するのは管理職だからです。
経営は、会社全体の方向性を語る。
人事は、制度や発信を設計する。
でも、メンバーが日々触れるのは、直属の上司の言葉です。
どんな行動が良いのか。
どこまで任せるのか。
何を優先するのか。
失敗したときにどう扱うのか。
成果だけでなく、どんな姿勢を見るのか。
ここを管理職が説明できないと、MVVは現場に降りません。
管理職がMVVを自分の言葉で話せない。
メンバーの仕事に結びつけられない。
フィードバックの中で使えない。
会議の判断に持ち込めない。
この状態では、社員にとってMVVは遠い言葉になります。
経営が言っていること。
人事が発信していること。
採用ページに書いてあること。
それで終わってしまう。
MVVを現場に入れるには、管理職が翻訳者になる必要がある
ただ伝えるのではなく、日々の仕事に接続する。
この案件では、どのValueが問われているのか。
この判断は、会社の向かう先と合っているのか。
この行動は、うちの会社が大事にしたいものなのか。
この成果の出し方を、会社として良しとするのか。
こうした問いが、マネジメントの中に入っているか。
そこが、MVV浸透の分かれ目です。
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まず、この問いを置いてほしい
MVVを浸透させたいとき、いきなり施策を増やす必要はありません。
全社会を増やす。
研修を増やす。
社内報を増やす。
ワークショップを増やす。
表彰制度を作る。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、その前に見るべきことがあります。
まず置くべき問いは、一つです。
MVVは、現場のどの場面で使われているか。
これを見た方がいい。
会議で意思決定するとき。
1on1で期待を伝えるとき。
評価で行動を振り返るとき。
採用で候補者を見るとき。
オンボーディングで会社を伝えるとき。
部署間で判断が割れたとき。
顧客対応で迷ったとき。
その場面で、MVVが使われているか。
使われていないなら、まだ浸透していません。
知っているだけです。
共感しているだけです。
掲げているだけです。
浸透を見るとは、社員がMVVを暗唱できるかではない
日々の判断に、その言葉が入っているかを見ることです。
ここが弱いと、組織には小さなズレが出ます。
これは、MVVがないからではありません。
MVVが、日々の運用に入っていないからです。
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この記事で残したいことは、ひとつです。
MVVは、唱和しても浸透しません。
日々の判断、会議、評価、マネジメントの中で使われて初めて、組織に入っていきます。
理念を伝えるだけでは足りない。
共感してもらうだけでも足りない。
使う場面を設計しなければ、MVVはきれいな言葉のまま終わります。
会社が壊れた後に、どう打ち手を作ったのか。
その話はこちらに書きました。
『死ななかったから、打ち手は作れた』
このシリーズでは、エンゲージメント、MVV、人事施策について、組織が弱る構造から順番に書いていきます。
続きも届くように、スキ・フォローしてもらえると嬉しいです。
次回は、人事施策そのものについて書きます。
施策はある。
制度もある。
サーベイも、1on1も、研修もある。
でも、組織は変わらない。
施策|人事施策を増やしても、組織が良くなるとは限らない
