沈黙|人が辞める前に、組織は先に静かになる
沈黙
組織が弱るとき、最初に消えるのは不満ではない。
声です。
会議で質問が出ない。
方針に対して、誰も踏み込まない。
違和感があっても、その場では言わない。
決まったことに反対はしない。
でも、実行の熱は上がらない。
現場から提案が出なくなり、相談も遅くなる。
この状態を見て、経営や人事は安心してしまうことがあります。
「大きな不満は出ていない」
「反発されているわけではない」
「現場も納得しているはずだ」
「離職が増えているわけではない」
でも、それは本当に納得なのでしょうか。
ただ、言うことをやめただけかもしれない。
組織は、荒れる前に静かになる
そして、その静けさは、安心ではありません。
期待が下がったサインです。
前回は、エンゲージメントは社員満足度ではない、という話を書きました。
前回の記事はこちら
満足している。
でも、前に出ない。
辞めるほどではない。
でも、会社の未来に関心を持てていない。
不満は少ない。
でも、挑戦もしない。
エンゲージメントとは、社員の機嫌を見るためのものではありません。
会社の方向性と、現場の仕事と、一人ひとりの判断がつながっているかを見るためのものです。
今回は、その接続が切れ始めたときに最初に起きることを書きます。
テーマは、沈黙です。
沈黙は、納得ではない
会議で反対意見が出ない。
一見すると、意思決定がスムーズに進んでいるように見えます。
経営が方針を出す。
管理職が説明する。
現場は黙って聞く。
誰も反論しない。
決定事項はそのまま通る。
表面上は、問題がないように見える。
でも、ここで見落としてはいけないことがあります。
反対がないことと、納得していることは違います。
本当に納得している人は、理解しようとします。
わからないことがあれば質問します。
違和感があれば確認します。
実行するために、具体的な条件を聞きます。
一方で、期待が下がっている人は、あまり聞かなくなります。
聞いても変わらない。
言っても拾われない。
どうせ上が決める。
余計なことを言うと面倒になる。
自分が踏み込まなくても、誰かがやるだろう。
こうなると、会議は静かになります。
それは、納得ではありません。
関与をやめた状態です。
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現場の声は、いきなり消えるわけではない
私はこれまで、組織が止まっていく会社で、何度も同じような変化を見てきました。
最初から、誰も話さなくなるわけではありません。
はじめは、少しだけ発言が減ります。
以前なら出ていた質問が出なくなる。
会議後に個別で出ていた相談が減る。
施策に対する違和感が、表ではなく裏で話されるようになる。
「これ、どうなんですかね」と言う人が減る。
「やった方がよくないですか」と提案する人も減る。
それでも、仕事は回ります。
むしろ、表面上は静かなので、経営からは安定して見えることもあります。
でも、現場の内側では少しずつ変化が起きています。
会社に期待している人ほど、最初は声を出す
「この方針だと、現場ではこう詰まります」
「この数字を見るなら、こっちも見た方がいいです」
「お客様からは、こういう反応が出ています」
「このままだと、メンバーが動きにくいです」
こういう声は、組織にとって面倒に見えることがあります。
でも、本当は重要です。
なぜなら、それは現場がまだ会社を自分ごととして見ている証拠だからです。
期待が残っているから、言う。
変えられると思っているから、伝える。
自分の仕事が会社に影響すると感じているから、踏み込む。
逆に、その期待が下がると、人は黙ります。
不満がなくなったのではありません。
関心が薄くなったのです。
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危ないのは、不満よりも無関心
不満が出ているうちは、まだ扱えることがあります。
もちろん、不満が多い状態は良いわけではありません。
放置すれば、組織は壊れます。
ただ、不満には情報が含まれています。
何に納得していないのか。
どこで詰まっているのか。
何が現場と合っていないのか。
どの判断に違和感があるのか。
不満は、組織のズレを教えてくれることがある
一方で、無関心は見えにくい。
声が出ない。
質問が出ない。
提案が出ない。
相談が遅れる。
会議ではうなずく。
でも、深くは関与しない。
この状態になると、経営や人事は問題を拾いにくくなります。
「何か困っていることはありますか」と聞いても、
「特にありません」と返ってくる。
「意見はありますか」と聞いても、
「大丈夫です」と返ってくる。
でも、その「大丈夫です」は、本当に大丈夫という意味ではないかもしれません。
もう言っても仕方ない。
今さら変わらない。
自分が言うことではない。
そこまで関わる必要はない。
そういう諦めが、短い言葉に変わっているだけかもしれません。
組織にとって本当に怖いのは、不満が出ることではありません。
何も出てこなくなることです。
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問題は、発言力ではなく期待が下がっていること
こういう状態になると、原因を個人に置きたくなります。
発言力がない。
主体性がない。
若手が受け身だ。
管理職が場を作れていない。
現場が考えていない。
そう見えることはあります。
でも、沈黙している組織で起きているのは、単なる発言力の問題ではありません。
問題は、言っても変わらないと思われていることです。
方針に対して質問しても、結局決まった通りに進む。
現場の違和感を伝えても、判断に反映されない。
提案しても、検討されたのか分からない。
相談しても、上司のところで止まる。
会議で話しても、次の行動に変わらない。
この経験が積み重なると、人は声を出さなくなります。
経営は聞いているつもりでいる。
管理職は伝えているつもりでいる。
人事は場を作っているつもりでいる。
でも、現場から見ると、声が扱われていない。
このズレが続くと、発言は減ります。
それは、社員の能力が急に落ちたからではありません。
会社への期待が下がっているからです。
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まず、この問いを置いてほしい
沈黙している組織に対して、
いきなり「もっと発言しよう」と言っても、あまり意味がありません。
発言を促す。
会議で指名する。
意見を出す場を作る。
アンケートを取る。
1on1で聞く。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、順番を間違えると、現場はさらに冷めます。
なぜなら、声を出しても何も変わらない状態のまま、声だけを求められるからです。
まず置くべき問いは一つ
現場は、声を出せば何かが変わると思えているか。
これを見た方がいい。
会議で発言が少ないとき。
提案が出なくなったとき。
相談が遅れているとき。
若手が受け身に見えるとき。
管理職だけが忙しくなっているとき。
その手前で、現場は何を経験してきたのか。
言ったことは拾われたのか。
違和感は判断に反映されたのか。
提案は検討されたのか。
相談したあとに、具体的な支援はあったのか。 会議で出た話は、次の行動に変わったのか。
ここを見ずに、沈黙だけを責めても組織は変わりません。
沈黙は、原因ではありません。
結果です。
会社の方向性と現場の仕事が切れ、声を出す意味が薄れた結果として、組織は静かになっていきます。
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この記事で残したいことは、ひとつです
沈黙は、納得ではありません。
現場が会社に期待することをやめ始めたサインです。
人が辞める前に、提案が消えます。
不満が爆発する前に、質問が消えます。
組織が壊れる前に、会議室の熱が消えます。
会社が壊れた後に、どう打ち手を作ったのか。
その話はこちらに書きました。
『死ななかったから、打ち手は作れた』
このシリーズでは、エンゲージメント、MVV、人事施策について、組織が弱る構造から順番に書いていきます。
続きも届くように、スキ・フォローしてもらえると嬉しいです。
次回は、組織が静かになったあとに起きる、もう一つの問題について書きます。
言葉はある。
理念もある。
方針もある。
でも、現場の判断には使われていない。
次回
MVV|理念は飾るものではなく、判断を揃えるためにある
