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エンゲージメント|危ない組織は、荒れる前に静かになる

エンゲージメント


会社の危機は、人が辞めた日に始まるわけではない。

もっと前に始まっている。

会議で、誰も質問しなくなった日。
新しい方針に対して、反論も違和感も出なくなった日。
決まったことに表面上はうなずくのに、実行の熱が消えた日。
現場から提案が出なくなり、相談が遅れ、管理職だけが忙しそうに動いている日。

その時点で、組織はもう弱り始めている。
でも、数字だけを見ると危機には見えない。

退職者はまだ増えていない。
社員満足度も大きく崩れていない。
人間関係も悪くない。
社内の雰囲気も、極端に荒れているわけではない。

だから、経営も人事も見誤る。

「まだ大丈夫だろう」
「不満が爆発しているわけではない」
「離職が増えてから考えればいい」
「満足度はそこまで悪くない」

でも、本当に危ない会社は、先に荒れるのではない。

先に、静かになる。

これまで、マネジメントやリーダー不在の話を書いてきました。

マネジメントしているつもりで、現場を壊していた話。

リーダー不在で、成長が止まった会社の話。

そこで見えていたのは、人の能力不足だけではありません。
会社の方向性と、現場の仕事が切れていく怖さでした。

今回からは、そのズレが組織にどんな影響を与えるのかを書いていきます。

テーマは、エンゲージメントです。


会議室の空気は、数字より先に変わる


私はこれまで、数字上は大きな問題がないのに、現場の熱だけが消えていく会社を見てきました。

どの会社も、最初は「うちはまだ大丈夫」と言います。

退職者が急増しているわけではない。
社員満足度が極端に低いわけでもない。
人間関係が崩壊しているわけでもない。
現場から強い不満が噴き出しているわけでもない。

数字だけを見れば、たしかに危機には見えません。
でも、現場に入ると違和感がある。

会議室の空気が重い。
誰も踏み込まない。
意見を求めても、返ってくるのは沈黙か、当たり障りのない言葉だけ。
方針が共有されても、質問が出ない。
施策が決まっても、実行の温度が低い。

不満が爆発しているわけではない。
ただ、熱がない。

この状態を、単なる空気の問題で片づけると見誤ります。

ここで起きているのは、エンゲージメントの低下です。

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エンゲージメントは、満足度ではない


エンゲージメントという言葉は、曖昧に使われがちです。

社員が会社を好きか。
働きやすいと感じているか。
上司との関係が良いか。
今の職場に満足しているか。
離職しなさそうか。

それらも無関係ではありません。
ただ、経営の文脈で見るなら、エンゲージメントはもっと実務的に捉えた方がいい。

エンゲージメントとは、会社の方向性を理解し、自分の仕事に意味を持てている状態です。

自分の仕事は、会社のどこに効いているのか。
自分の役割は、事業の成果にどう関係しているのか。
なぜ今、この方針なのか。
なぜこの仕事をやる必要があるのか。
自分には、何を期待されているのか。

ここが見えている人は、ただ作業をこなして終わりません。

自分で考える。
違和感があれば声を出す。
必要なら提案する。
方針の背景を理解しようとする。
自分の役割を、会社の成果に結びつけて動く。

逆に、ここが見えなくなると、社員は目の前の仕事だけを処理するようになります。

不満が爆発するわけではない。
反発するわけでもない。
すぐに辞めるわけでもない。

ただ、仕事が自分ごとではなくなる。
この状態が続くと、組織は静かに弱くなります。

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満足していても、前に進まない組織はある


満足度で見えるのは、居心地です。

今の職場に不満があるか。
人間関係に大きな問題がないか。
働きにくさを感じていないか。
待遇や環境に納得しているか。

これは大事です。
ただ、会社が必要としているのは、居心地の良さだけではありません。

変化に向かう力です。

満足している。
でも、前に出ない。

辞めるほどではない。
でも、会社の未来に関心を持てていない。

不満は少ない。
でも、挑戦もしない。

居心地は悪くない。
でも、自分の仕事が会社の成長にどう関係しているかを説明できない。

この状態は、表面上は平和に見えます。
しかし、経営から見るとかなり危険です。 


会社が変化しなければいけない局面で、現場が動かない

新しい方針を出しても、受け身になる。
数字が悪くなっても、自分ごとにならない。
問題が起きても、誰かが何とかするだろうという空気になる。

つまり、満足度が大きく崩れていなくても、組織が強いとは限りません。

満足度は、今の職場に不満があるかを見るものです。
エンゲージメントは、その人が会社の未来に力を出せているかを見るものです。

ここを見間違えると、組織は「不満の少ない停滞」に入ります。

荒れていない。
でも、前に進まない。

辞めていない。
でも、力は出ていない。

問題が起きていないように見える。
でも、組織の中から熱が消えている。

この状態を、社員満足度だけで見抜くのは難しい。

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問題は、人ではなく接続が切れていること


こういう状態になると、原因を人に置きたくなります。

社員の意識が低い。
若手が受け身だ。
管理職が弱い。
現場に主体性がない。

そう片づけるのは簡単です。
でも、私が見てきた会社で、本当にそれだけだったケースはほとんどありません。

問題は、別のところにありました。

会社がどこへ向かっているのか。
なぜその方針なのか。
自分の仕事は何に効いているのか。
何を期待されているのか。
どこまで自分で判断していいのか。

そこが曖昧なまま、実行だけが現場に降りている。

経営は方針を出している。
管理職は現場に伝えているつもりでいる。
メンバーも仕事はしている。

でも、その間にあるはずの意味が抜け落ちている。
この状態で、社員に主体性だけを求めても難しい。

人は、自分の仕事の意味が見えないままでは、前に出にくい。
会社の方向性が理解できないままでは、判断しにくい。
期待されている役割が曖昧なままでは、責任を持ちにくい。

エンゲージメントが落ちている会社で起きているのは、単なるモチベーションの問題ではありません。

会社の方向性と、現場の仕事と、個人の判断の接続が切れている。

ここを「やる気の問題」として扱うと、打ち手を全部間違えます。

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まず、この問いを置いてほしい


施策の話は、まだしません。

イベントを増やす。
福利厚生を整える。
アンケートを取る。
面談の回数を増やす。
研修を入れる。

それ自体が悪いわけではありません。
ただ、順番を間違えると、施策が増えるだけで組織は変わりません。

まず置くべき問いは、一つです。


社員は、自分の仕事が会社のどこに効いているかを説明できるか


これを、明日、誰かに聞いてみてほしい。

答えが返ってこなかったとき。
返ってきた答えが、会社の方向性とズレていたとき。
本人の言葉から、役割の意味が見えてこなかったとき。

そこに、問題の入口があります。

エンゲージメントを見るとは、社員の機嫌を確認することではありません。

会社が向かう方向と、現場で行われている仕事と、個人の判断がつながっているかを見ることです。

ここが切れると、組織には小さな変化が出ます。
これは、離職より前に出るサインです。

人が辞めたときには、組織の内側ではかなり前からズレが起きています。

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この記事で残したいことは、ひとつです。


エンゲージメントは、社員の満足度を見るためのものではありません。

会社の方向性と、
現場の仕事と、
一人ひとりの判断がつながっているか
を見るためのものです。

人が辞めてからでは遅い。
不満が表に出てからでも遅い。

組織が静かになったとき、すでに危険信号は出ています。


会社が壊れた後に、どう打ち手を作ったのか。
その話はこちらに書きました。
『死ななかったから、打ち手は作れた』

このシリーズでは、エンゲージメント、MVV、人事施策について、組織が弱る構造から順番に書いていきます。

続きも届くように、スキ・フォローしてもらえると嬉しいです。

次回は、エンゲージメントが落ちた組織で最初に起きることを書きます。

大きな問題が出る前に、何が消えていくのか。


次回
沈黙|人が辞める前に、組織は先に静かになる


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