サーベイ|数字を取って満足している会社は、現場の本音を拾えていない
サーベイ
サーベイを取っているのに、組織の変化に気づけない会社がある。
回答率は悪くない。
スコアも大きく崩れていない。
部署別の結果も見ている。
コメントも集めている。
経営会議にも報告している。
人事も改善案を考えている。
それでも、現場は変わらない。
会議の空気は重いまま。
発言は増えない。
相談は遅い。
管理職は疲弊している。
評価への不満は残っている。
若手は前に出ない。
部署間の連携も良くならない。
この状態で、経営や人事はこう考える。
「サーベイは取っている」
「数字は見ている」
「大きく悪い結果ではない」
「次回も継続して見ていこう」
でも、ここで止まると危ない。
サーベイは、取ることに意味があるのではありません。
数字を見て、組織のどこが詰まっているかを特定するためにある。
そして、特定したあとに動かなければ、サーベイはむしろ信頼を失います。
前回は、人事施策は増やせば効くものではないと書きました。
前回の記事はこちら
サーベイ。
1on1。
評価制度。
研修。
表彰制度。
オンボーディング。
社内イベント。
施策が多くても、組織の詰まりに効いていなければ意味がありません。
大事なのは、何をやるかより先に、どこが詰まっているかを見ることでした。
今回は、その詰まりを見つけるための代表的な施策について書きます。
テーマは、サーベイです。
サーベイは、施策ではなく診断である
エンゲージメントサーベイという言葉を聞くと、それ自体が施策のように扱われることがあります。
たしかに、何も見ていない会社よりはいい。
組織の状態を定点観測することは大事です。
社員の声を集めることも必要です。
感覚だけで組織を語るより、数字やコメントを見た方がいい。
ただ、ここで間違えてはいけないことがあります。
サーベイを取ること自体は、組織を変えません。
サーベイは診断です。
健康診断を受けただけで体調が良くなるわけではないように、サーベイを取っただけで組織が良くなるわけではありません。
どこに異常があるのか。
どの部署でズレが起きているのか。
どの階層で不満が強いのか。
どの項目が、成果や離職と関係しているのか。
どこに先に手を打つべきなのか。
それを見つけるためのものです。
だから、サーベイの本番は、回答を集めたあとにあります。
結果を読み、
仮説を立て、
現場に確認し、
打ち手に変える。
ここまでやって初めて、サーベイは意味を持ちます。
---
数字があるのに、現場が見えていない会社
私はこれまで、サーベイを丁寧に取っているのに、現場の変化を拾いきれていない会社を見てきました。
回答率は高い。
レポートも整っている。
スコアも一覧化されている。
部署別の比較もある。
フリーコメントも読んでいる。
一見すると、かなりきちんと見ているように見えます。
でも、現場に入ると違和感がある。
数字では「大きな問題なし」に見える部署で、実は管理職がかなり疲弊している。
平均点は悪くないのに、若手だけが強く冷めている。
全体スコアは安定しているのに、一部のチームでは相談が止まっている。
コメントには出ていないが、会議では誰も本音を話していない。
離職が起きてから、ようやく以前のサーベイ結果に兆候があったことに気づく。
数字はあった。
でも、読めていなかった。
サーベイで危ないのは、数字が低いことだけではありません。
数字を見ているつもりで、組織の変化を見落とすことです。
平均点だけを見る。
前回比だけを見る。
回答率だけを見る。
全社スコアだけを見る。
それでは、本当に危ない場所は見えません。
組織の問題は、全体平均にきれいに出るとは限らないからです。
---
平均点は、組織の歪みを隠すことがある
サーベイを見るとき、多くの会社はまず平均点を見ます。
もちろん、それは必要です。
ただ、平均点だけを見ると、組織の歪みを見落とすことがあります。
たとえば、全社平均は悪くない。
でも、特定の部署だけ極端に低い。
部署平均は普通。
でも、若手だけ低い。
全体では安定している。
でも、管理職層だけ疲弊している。
スコアは悪くない。
でも、コメント欄には諦めが出ている。
この状態を、平均点だけで見ると危険です。
なぜなら、組織の問題は「全体が悪い」形で出るとは限らないからです。
むしろ、最初は一部に出ます。
そこに小さな歪みが出る。
そして、それを放置すると、時間をかけて組織全体に広がっていきます。
サーベイでは平均点を見るだけでは足らない
どこに差があるかを見る必要があります。
サーベイで見るべきなのは、高いか低いかだけではありません。
どこに歪みがあるかです。
---
本音は、数字よりコメントと沈黙に出る
サーベイでは、スコアだけでなくコメントも重要です。
ただし、コメントが多ければ本音が出ている、というわけではありません。
むしろ、危ない組織ではコメントが減ることがあります。
書いても変わらない。
誰が書いたか特定されそうで怖い。
どうせ読まれない。
前にも書いたけど何も変わらなかった。
もう期待していない。
そう思われると、コメントは薄くなります。
「特になし」
「問題ありません」
「現状で大丈夫です」
「特にありません」
こうした言葉が増える。
一見すると、問題が少ないように見えるかもしれません。
でも、前回書いたように、沈黙は納得とは限りません。
声が出ないこと自体が、サインであることもあります。
サーベイでも同じです。
不満が大量に書かれている状態も危ない。
でも、何も書かれなくなる状態も危ない。
数字が大きく落ちていない。
コメントも少ない。
強い不満も出ていない。
だから大丈夫、とは言えません。
本当に見るべきなのは、数字とコメントと現場の空気が合っているか
スコアは高いのに、現場の発言が少ない。
コメントは少ないのに、離職が増えている。
回答率は高いのに、改善提案が出てこない。
満足度は悪くないのに、挑戦する人が減っている。
このズレを見ないと、サーベイは表面だけの確認になります。
本音は、書かれた言葉だけでなく、書かれなかった言葉にも出ます。
---
問題は、数字がないことではなく数字を打ち手に変えていないこと
サーベイを取っている会社では、数字がないわけではありません。
むしろ、数字はあります。
見ようと思えば、いろいろ見える。
でも、その数字が打ち手に変わっていないことがあります。
サーベイ結果を経営会議で共有する。
人事がレポートを作る。
部署長に結果を渡す。
管理職に改善を依頼する。
次回のサーベイまで様子を見る。
これで終わってしまう。
すると、現場はこう感じます。
「答えたけど、何が変わったのかわからない」
「毎回サーベイは来るけど、改善は見えない」
「結局、数字を取っているだけではないか」
「本音を書いても意味がない」
この感覚が広がると、次のサーベイから本音は出にくくなります。
回答はする。
でも、深くは書かない。
無難に答える。
強い違和感は出さない。
期待しなくなる。
サーベイは、社員の声を集めるためのものです。
でも、集めた声を扱わなければ、逆に信頼を失います。
問題は、数字がないことではありません。
数字を読み、現場に返し、具体的な打ち手に変えていないことです。
サーベイ後に何も変えない会社は、声を失う
サーベイで一番危ないのは、低いスコアではありません。
低いスコアが出たあとに、何も変えないことです。
結果共有だけで終わる。
具体的な改善が見えない。
誰が何を変えるのかが決まらない。
次にどう確認するのかも曖昧。
現場には「ご協力ありがとうございました」だけが残る。
これを繰り返すと、現場は学習します。
言っても変わらない。
書いても変わらない。
数字に出ても変わらない。
だから、次からは無難に答えよう。
これが起きると、サーベイの精度は落ちます。
サーベイは、声を集める仕組みであると同時に、会社が声をどう扱うかを見られる場でもあります。
社員は、サーベイ後の会社の動きを見ています。
本当に読んでいるのか。
課題を受け止めているのか。
管理職に任せきりにしていないか。
改善が現場に返ってくるのか。
次の行動が見えるのか。
そこまで見ています。
だから、サーベイ後に何も変えない会社は、声を失います。
そして声を失った組織は、静かになります。
---
まず、この問いを置いてほしい
サーベイを見るとき、いきなりスコアの高低だけを見ない方がいい。
それは大事です。
でも、最初に置くべき問いは別にあります。
この数字は、組織のどの詰まりを示しているのか
これを見た方がいい。
上司への信頼が低いなら、管理職の関わり方に問題があるのか。
評価への納得感が低いなら、期待役割やフィードバックに問題があるのか。
会社の方向性への理解が低いなら、経営メッセージが現場に届いていないのか。
成長実感が低いなら、仕事と育成が接続されていないのか。
部署間連携が低いなら、目標や優先順位がズレているのか。
心理的安全性が低いなら、声を出しても扱われない経験があるのか。
数字を見て終わるのではなく、数字から構造を読む。
そして、構造を読んだら、現場に確認する。
ここまで進めて、サーベイは初めて組織改善につながります。
サーベイを見るとは、点数を見ることではありません。
数字の奥にある、現場の詰まりを読むことです。
ここを外すと、サーベイは続きます。
でも、組織は変わりません。
---
この記事で残したいことは、ひとつです
サーベイは、数字を取るためのものではありません。
組織のどこが詰まっているのかを見つけ、打ち手に変えるための診断です。
サーベイ後に何を変えたかで、会社への信頼は決まります。
会社が壊れた後に、どう打ち手を作ったのか。
その話はこちらに書きました。
『死ななかったから、打ち手は作れた』
このシリーズでは、エンゲージメント、MVV、人事施策について、組織が弱る構造から順番に書いていきます。
続きも届くように、スキ・フォローしてもらえると嬉しいです。
次回は、1on1について書きます。
話は聞いている。
面談もしている。
毎月時間も取っている。
でも、組織は変わらない。
1on1|話を聞いているだけでは、エンゲージメントは上がらない
