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ケケケのトシロー 第二部(1)

ヤンキーのカズに絡まれ老人狩りにあったトシローはキダローという不思議な術を使う男と知り合う。彼は悪霊退治を使命にもつケケケの妖術使いだった。非力で情けなさ100%のトシローは、最初はキダローの強さに惹かれ行動を共にし彼から妖術を学ぼうとするが、キダローがカズの仲間をゴキブリに変え抹殺したことからその非情さに疑問を持つ。一方不帰橋と呼ばれる場所が昔から悪霊が蘇る場所であり、そこをキダローと共に護っていたフキさんが悪霊により命を落とす。そこから悪霊どもの攻勢が始まった。命を助けたことでトシローを慕っていたカズも音信不通になり、トシローは彼を追って反社組織権藤会本部へ走る。そこに待っていたのはサトーという人間の姿を借りたキダローと因縁のある網乾左母二郎の悪霊だった。キダローの正体もわかり、仲間である瀬戸内海小豆先生と共に戦い勝利を手にする寸前のところでサトーはカズに乗り移り逃走。そして妻、真由美が連れ去られそうになるのを間一髪のところでキダローとトシローは真由美を助けたが網乾らの悪霊の総攻撃により三人は絶対絶命のピンチを迎えた。そしてキダローは自分の身を盾にしてトシローと真由美を救い、自らは悪霊共々大爆発を起こし消えたのだった。

第一部のあらすじ

キダローがいなくなりその死闘現場で彼の錫杖を拾ったトシローは、実は里見家の血筋である妻の真由美とともに瀬戸内海小豆先生を訪ねそこで新たな仲間を得る。その名を大川ヨシロー。犬川荘助の血を継ぐものだった。彼と必死の修行を行いそのなかでケケケの秘密を少しずつ知るトシローは新たなる敵との闘いに自ら飛び込んでいくのだった。しかしその敵はキダローが命をかけて倒した相手を上回る強大な力を持つ。果たしてトシローたちは打ち勝つことができるのか? そして『ケケケ伝』にまつわる因縁と真実の力とはなんなのか? 新たなる敵とは? 新たなる仲間はまだいるのか?

この物語のあらすじ

 新たな出会い 1


(本文2187文字)

 全くいつもの朝の風景が目の前にある。
昨夜の死闘は俺だけが見た映画のクライマックスだったのかと思うほど周りは幾分あわただしいが平日のいつもの朝だ。「おはようございます」「おはようさん」の挨拶がマンションのエントランスに響く。学校へ行く小学生が何やら楽しそうに喋りながら連れだって通っていく。ゴミ当番の奥さんが街路灯の上から狙いをつけているカラスを負けじと睨んでいる。

 俺はマンションの植栽の中を覗いていた。いや、植栽の中やで。隣の家とかちゃうで。北島さんとこ覗いてもしゃーないし。どうせやったら可愛い大学生とかのねーちゃんが住んでる…… あかんあかん。話を戻す。俺は何をあちらこちら覗いているかというと、キダローのなにか手掛かりになるものでも落ちていないかと思って探しているのだ。あれだけの大爆発をおこしたのだ。キダローにも多少のダメージはあるかもしれない。奴のことだから大丈夫だとは思うが…… ケープもあるし。

 それと真由美のことが正直心配だった。普段と同じ日常の朝だけれど、まだ悪霊がそこらへんで隙を伺っているかもしれない。できるだけ一緒に行動したほうがいいと思う。しかし瀬戸内海小豆せとないかいあずき先生の事も気がかりだし、昨夜のことを報告しなければならない。キダローも『後の事は小豆ちゃんがわかっている』と言ってた。しかし真由美を外へ連れ出すのもどうなのか? 狙われやすくなるのではないか? まだ疲れていびきMaxで寝ているだろう。どうしよう。

「あら、オオツカさんおはようございます。なにしてるんです?」
背中に声をかけてきたのは三階に住む古屋ふるやさんのところの娘さんだ。お父さんとはサラリーマン現役時代によく通勤電車で一緒になっていた。野球好きで何回か一緒に観に行ったこともある。京阪ジャガーズの熱狂的ファンで、娘のランちゃんも小さい頃から球場に連れていかれお父さんの血を引き継いでいる。ウチの娘とは10才くらいはなれているから娘たちも小学生くらいの時は可愛がっていて、まあまあご近所では付き合いが濃いほうだ。

「ああ、ランちゃん、おはよう。昨日は勝った?」
「それそれ、やっと連敗脱出! 長かったわ~」
「そうか、ほな、お父さんも今日は鼻歌で出勤やなあ」
「そうなんですよ。昨日は朝から兄と電話でケンカしててね、機嫌悪いままやったんやけど、これで皆、一件落着です」
ランちゃんにはお兄さんがいて確か東京で働いてるらしい。兄ちゃんの方は子供の時からなぜか野球に興味が無く、今は格闘技にはまってるとか。お父さんのがっかり感は当時からよく聞かされていた。

「そうかいな、お兄ちゃんは元気なん?」
「ええ、元気ですよ。近いうちに転勤でこっちへ帰ってくるとか言ってました」
「そうなん? それやったらお父さんもお母さんも喜んでるんとちゃうの」
「それがね、兄貴、一緒に住むのはいやや言うて…… それで昨日も喧嘩になったみたいで……」ランちゃんは誰も聞いてないのにわざわざ俺の耳元で小声で言い、クスクスと笑う。まあ、他所の家のことだから突っ込んで訊くのはやめとこう。

「て、おじさんは何をしてるの」
「あ、ああ俺? ちょっと探し物をね」
「なんか失くしたんです?」
「いや、俺のとは違うの。知り合いのもんがね」
「ふーん。何を?」
「いや、何をというか……なんか」
「あ、おじさん、なんか怪しいなあ……」
「いや、別に、怪しいもんやないよ」
 ランちゃんの目が真由美のそれに似ている。女というのは疑いの目つきは世界共通なのだろうか。

「わたしね、探し物得意なんですよ。だいたい見当つくんです。一緒に探してあげます」
「いや、ええよ。あんた会社いかなあかんやろ」
「今日は休みなんですよ。それでコンビニにパン買いに行って帰りやから」
そう言ってコンビニの袋を俺に見せる。ああそう言えばウチの娘もパン買うてくれたなあ。一年に一回くらいやけど。

「あのな、ごめんやけど。これというものを探してるわけじゃないねん。例えば財布とかメガネとかな。もしかしたらなんかあるかもしれんなあと言う感じで……」俺はますます怪しい説明をしていた。
「ふーん、わかりました」え、わかったんかいな、ホンマかいな、そうかいな。♬ベンキョーしまっせ 引っ越しの~サ〇イ♪ていうCMあったなあ。

 彼女は目を閉じ唇に軽く右手の人差し指を当てる。静かにしなさいという指図か?
「あの、何してんの?」
「ちょっと待ってね……」彼女は目を閉じたまま言い、そのまま集中してるのがわかった。この気配、おい、ちよっと。
 すると植え込み奥の方でシャランと金属的な音が鳴ったような気がした。
「え、まさか」
「あ、あの辺違います?」
 
 植え込みの根元のほうから覗くと何かがあるように見える。少し痛いのを我慢して腕を伸ばし探る、あかん届かんか。悪戦苦闘しているとランちゃんがゴミ当番の奥さんから箒を借りてきてくれた。そしてそれで目当てのものを手繰り寄せる。やっと手が届くところへ引っ張り出せそれを掴んだ時、涙があふれてきてしまった。

「え、おじさん。どうしたん? え、なんで?」

 俺がぽろろと涙を落とし掴んだのはキダローの錫杖の杖頭だった。
心配して背中をさすってくれるランちゃんに「ありがと、ありがと」と言いながらも俺は落ちるものをぬぐえずにいた。泣き虫はいまだに治らない。

 続く

 第二部 (2) 
     (3)
     (4)
     (5)
    


 第一部全32話はこちらから全て読めます。



 

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