【医師国試バイブル50】第7回:夏にやるべきこと・やってはいけないこと──6年生の夏の分岐点【リーフェ医学情報】
要約: マッチング・卒試・国試対策が交錯する6年生の夏。
この時期の過ごし方が、2月の合否を大きく左右します。
夏に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を仕分けし、忙しさに飲まれず本質に集中するための分岐点を示します。
7ヶ月ロードマップ、試験の全体像、教材選び、計画の立て方、そして必修・一般臨床の攻略法
——ここまでで、戦うための準備は整いました。
今回は少し視点を変え、「今この夏を、どう過ごすか」に焦点を当てます。
6年生の夏は、人生でも指折りの多忙な時期です。
マッチング、卒業試験、そして国試対策。3つが同時に押し寄せ、多くの人が優先順位を見失います。
だからこそ、ここで一度立ち止まって、「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を明確にしておく。
それが、秋以降の失速を防ぐ最大の予防策になります。
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この記事でわかること
マッチング・卒試・国試が交錯する6年生の夏の「全体像」と優先順位
この夏に必ずやるべきこと(メジャー着手・教材の一本化・生活リズム)
忙しさに飲まれてやりがちな「やってはいけないこと」の回避法
著者:原田
所属:株式会社リーフェホールディングス 経営企画室 部長
資格・経歴:
法学部卒|政治学研究科 修士・博士|政治学者、政治学教員、学生指導歴20年以上
医学生に特化した個別指導塾「医学生道場」のファウンダー
自己紹介:
幼少期より病気がちで、こんにち無事に生活できているのは、医療とそれに関わる人たちのお陰です。将来の医療者として、社会に貢献できる医療系学生の方を積極的にサポートしていきます。
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はじめに——なぜ「夏」が分岐点なのか
医師国家試験は2月。まだ半年以上先です。
それなのに、なぜ「夏」がそれほど重要なのでしょうか。
理由は、6年生の夏が「まとまった勉強時間が取れる、最後のまとまった機会」だからです。
秋になると、多くの大学で卒業試験が本格化します。
卒試は6年間の全範囲が対象で、大学によっては1〜3か月にわたり、ほぼ毎日何かしらの科目試験が続きます。
その対策に追われる秋は、国試の新規学習に割ける時間が大きく減ります。
さらに、夏から秋にかけてはマッチング——研修先を決める「医学生の就職活動」——も本格化します。
病院見学、面接、小論文、筆記試験。
遠方の病院を複数受ければ、スケジュールはかなりハードになります。
つまり、秋は「卒試とマッチングで、国試対策が細切れになる季節」なのです。
だからこそ、比較的まとまった時間が取れる夏のうちに、国試対策の「幹」をどこまで作れるかが、その後を大きく左右します。
夏に土台を築けた人は、秋に多少ペースが落ちても立て直せる。
逆に夏を無為に過ごすと、秋の失速がそのまま直前期の焦りに直結します。
この夏は、遊びと勉強のどちらかを選ぶ話ではありません。
限られた時間で、何に集中し、何を手放すかを決める、戦略的な分岐点なのです。
本論——夏の「やるべきこと」と「やってはいけないこと」
まず全体像:この夏、あなたは3つを同時に抱えている
対策を語る前に、夏の現実を直視しましょう。
6年生の夏は、次の3つが重なります。
第一に、国試対策。
本シリーズの計画では、この夏はメジャー科目に着手・集中する時期です。
第二に、マッチング。
6月頃から本格化し、10月下旬あたりまで続く就職活動です。
病院見学や面接の準備に、まとまった時間を取られます。
第三に、卒業試験の準備。
大学によっては初夏から始まり、多くは秋にピークを迎えます。
卒試に受からなければ、そもそも国試を受験できません。
この3つは、どれも無視できません。
しかし、すべてに全力を注ぐことは不可能です。
だからこそ、優先順位と「やらないこと」を決める必要があります。
以下、やるべきこと・やってはいけないことを、具体的に仕分けします。
やるべきこと①:メジャー科目に着手し、「幹」を作り始める
夏に最も優先すべき国試対策は、メジャー科目(循環器・呼吸器・消化器・腎・内分泌・血液・神経)への着手です。
第1回でお伝えした通り、メジャーは出題数が多く配点も大きい「主戦場」で、時間の約半分を注ぐべき領域です。
そして、マイナー科目や公衆衛生の理解も、実はメジャーの病態理解の上に成り立っています。
👇 第1回の記事はこちらからです
夏のうちにメジャーの「幹」を作り始めておけば、秋に卒試やマッチングで時間が細切れになっても、すでにある幹に枝葉を足していく形で対応できます。
逆に、夏にメジャーに手をつけずにいると、秋以降にゼロから主戦場を攻略することになり、時間的にかなり苦しくなります。
完璧を目指す必要はありません。
1周目は全体像をつかむだけで十分。
まずはメジャーに触れ、国試の世界に体を慣らすことが、この夏の最重要ミッションです。
やるべきこと②:教材を「一本」に決めきる
第3回で教材選びを扱いましたが、夏は「使う教材を一本に確定させる」最後のタイミングでもあります。
👇 第3回の記事はこちらからです
QBを演習の軸に据え、映像講座を使うならどれにするかを決め、「これで最後までいく」と腹を括る。
夏のうちにこれを済ませておかないと、秋以降も「あの教材のほうがいいのでは」と迷い続け、貴重な時間を溶かします。
教材の乗り換えは、進めば進むほどコストが大きくなります。
夏の早い段階で軸を固定し、あとは淡々とそれを回す。
この「決断」こそが、夏にやるべき重要な仕事の一つです。
やるべきこと③:生活リズムを「試験モード」に寄せ始める
見落とされがちですが、生活リズムの調整もこの夏に始めるべきことです。
国試は2日間・朝から夕方までの長丁場。
直前になって急に朝型に変えようとしても、体は簡単には切り替わりません。
夏のうちから、少しずつ朝に勉強する習慣をつけ、本番の時間帯に頭が働くリズムを作り始めておくと、直前期に慌てずに済みます。
マッチングや実習で不規則になりがちな時期だからこそ、意識して「崩しすぎない」ことが大切です。
やってはいけないこと①:マッチング・卒試を言い訳に、国試をゼロにする
最もやってはいけないのが、「今はマッチングで忙しいから」「卒試があるから」と、国試対策を完全に止めてしまうことです。
確かにマッチングも卒試も重要で、時間を取られます。
しかし、国試対策をゼロにした期間は、後で必ず取り返しが必要になります。
そして夏に空いた穴は、より忙しい秋には埋められません。
大切なのは、忙しい時期こそ「ゼロにしない」こと。
1日1〜2時間でも、あるいは1日10問でもいい。
完全に止めるのではなく、細くても続ける。
第4回の計画術でお伝えした通り、ゼロの日を作らないことが、まとめてやる日を待つより効果的です。
マッチングや卒試で忙しい日は分量を落としていい。
ただし、火を消さないことです。
👇 第4回の記事はこちらからです
やってはいけないこと②:完璧主義で、1周目から抱え込む
夏は「まだ時間がある」という気持ちから、つい1周目から完璧に理解・暗記しようとしてしまう人がいます。
これは典型的な失敗パターンです。
1周目で全てを完璧にしようとすると、進みが遅くなり、夏の間にメジャーすら終わらない、という事態を招きます。
第1回でもお伝えした通り、国試対策は複数周する前提です。
1周目は「全体像をつかむ」だけで十分。
分からないところは付箋を貼って先へ進み、2周目・3周目で深めていく。
夏に大切なのは、深さよりも「まず一通り触れて、全体を見渡す」ことです。
完璧主義は、この試験では最大の敵になります。
やってはいけないこと③:模試の判定に一喜一憂して、心を折る
夏には、大手予備校の模試を受ける機会も出てきます。
ここで判定の数字(EやDといった評価)に一喜一憂して、必要以上に落ち込むのは避けるべきです。
夏の模試は、まだ助走段階のスナップショットにすぎません。
この時点でE判定でも、これから伸びる人はいくらでもいます。
見るべきは、判定という結果ではなく、「間違えた問題の中身」です。
どの分野が弱いのか、なぜ間違えたのか。
模試は、順位を確認する道具ではなく、弱点を教えてくれる道具です。
数字に心を折られて夏に失速するのは、最ももったいない負け方です。
判定は気にせず、中身だけを冷静に復習に活かしてください。
バランスの取り方——「捨てない、でも抱え込まない」
3つを同時に抱える夏の本質は、「どれも捨てない、でもどれも抱え込みすぎない」というバランスにあります。
マッチングの準備は必要な分だけ効率的に進め、卒試対策は国試と重なる範囲を意識して一石二鳥を狙い(卒試の勉強がそのまま国試の基礎固めになる部分は多い)、国試のメジャーは細くても止めずに続ける。
完璧を求めず、しかしどれもゼロにしない。
この綱渡りのようなバランス感覚こそが、6年生の夏を乗り切る鍵です。
結論 & むすびに代えて
6年生の夏という分岐点の過ごし方を、やるべきこと・やってはいけないことに分けて整理しました。畳み込みます。
夏が重要なのは、まとまった時間が取れる最後の機会だからです。
秋は卒試とマッチングで国試対策が細切れになります。
だから夏にやるべきは、
①メジャー科目に着手して幹を作り始める
②教材を一本に決めきる
③生活リズムを試験モードに寄せ始めること。
逆にやってはいけないのは、
①マッチング・卒試を言い訳に国試をゼロにする
②完璧主義で1周目から抱え込む
③模試の判定に一喜一憂して心を折ることです。
そして全体を貫く原則は、「捨てない、でも抱え込まない」。
3つのタスクのどれも完全には手放さず、しかしどれにも溺れない。
この夏を、そのバランス感覚で乗り切れた人が、秋以降も崩れずに走り続けられます。
最後に、少しだけ気持ちの話を。
6年生の夏は、本当に大変です。
周りが夏を楽しんでいるように見えて、焦りや孤独を感じることもあるでしょう。
でも、忘れないでください。
この夏の頑張りは、決して無駄になりません。
ここで作った幹が、秋のあなたを支え、冬のあなたを合格へ運びます。
完璧でなくていい。
火を消さずに、一歩ずつ。
それだけで、あなたは確実に前へ進んでいます。
夏の分岐点を越えれば、いよいよ本格的な科目別対策が始まります。
次回・第8回からは、メジャー科目の筆頭——循環器を、「暗記ではなく機序で解く」アプローチで攻略していきます。
6年生の夏は、"捨てない、でも抱え込まない"。火を消さずに越えた者が、秋に強い。
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FAQ
Q1. マッチングの準備で、国試の勉強がほとんどできません。焦るべきですか?
A. 焦る必要はありませんが、「完全に止めない」工夫はしてください。
マッチングは6年生全員が通る道で、この時期に勉強ペースが落ちるのは当然です。
大切なのは、面接や病院見学で忙しい日でも、1日10問でもQBに触れるなど、「ゼロの日を作らない」こと。
マッチングは一時的なもので、10月下旬には落ち着きます。
その時に国試モードへスムーズに戻れるよう、細くても火を絶やさないことが肝心です。
マッチング期間中は分量を落としてOK、と割り切りましょう。
Q2. 卒業試験の勉強と国試の勉強は、別々にやるべきですか? 時間が足りません。
A. できる限り一石二鳥を狙ってください。
卒業試験は6年間の全範囲が対象なので、その勉強内容は国試の基礎固めと重なる部分が非常に多いです。
卒試対策として各科目を復習することが、そのまま国試のメジャー・マイナーの土台になります。
完全に切り分けて二重に勉強するのではなく、「卒試の勉強をしながら、これは国試にもつながっている」と意識するだけで、負担感はかなり減ります。
ただし、大学独自の細かい出題(卒試だけに出る内容)に深入りしすぎないバランスは意識してください。
Q3. 夏休みに、少しは遊んでもいいのでしょうか?罪悪感があります。
A. 適切な休息はむしろ必要です。
6年生の夏は長丁場の受験生活の中盤で、ここで完全に燃え尽きると、勝負どころの冬に力が残りません。
大切なのは「メリハリ」です。
やるべきこと(メジャー着手・火を絶やさない習慣)を確保したうえでなら、リフレッシュの時間を持つことに罪悪感を抱く必要はありません。
むしろ、適度に息抜きをして心身を保つことも、7ヶ月を完走するための立派な戦略です。
「ゼロにしない」原則さえ守れば、休むことは前進の一部です。
参考文献・出典
※マッチング・卒業試験の日程や運用は、年度・大学によって異なります。
所属大学の公式スケジュールを必ずご確認ください。
マッチングの最新情報は医師臨床研修マッチング協議会の公式サイトをご参照ください。
関連リンク
【医師国試バイブル50】第8回:循環器①──虚血性心疾患・不整脈を「機序」で解く(次回配信予定)
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