ヘブル語併記:ヨブ記文語訳(13)
ヘブル語併記:ヨブ記文語訳(13)
v1.2
1.翻訳ポリシー
本翻訳は、聖書本文の忠実な逐語訳ではなく、其の物語の持つ精神を日本の古典文学が持つ格調高い文語の響きの中に再創作した芸術的試みであり、意訳及び脚色を含みます。原典が持つ荘厳さと劇的な展開を、独自の様式で表現することを目的としています。
翻訳にあたっては、以下のポリシーを遵守しました。
簡潔さと律動感: 古典の持つ言葉の経済性を範とし、不要な助詞や装飾を極限まで削ぎ落としました。ヨブ記に特有の激しい苦悩の叫びと、友人の語る因果の法則の対比も、この律動の中に活かされています。
古典文語の基調: 古典文語を基調としつつ、現代の読者にも通じる可読性との均衡を図りました。擬古文の俗調を避けつつ、芸術的文語として再構成することを目指しています。
厳格な様式: ひらがなは古風なものを含め極力漢字に置き換えました。また、尊敬語謙譲語を一切用いないことで、神と被造物、そして人間の根源的な関係をより直接内かつ力強く表現しています。
【制作背景について】
この文語訳は、制作者の明確なコンセプトに基づき、AIとの共同作業によって生成・編集されました。聖書原典はパブリックドメインですが、本翻訳はそれを基に独自の文体へと変換した、新たな創作的表現を目指す試みです。教育・研究・私的利用といった非営利の目的において、読者の皆様が自由に引用し、分かち合われることを歓迎いたします。ただし、本文の無断改変や商用利用はお控えください。
2.註解
本訳は、ヘブル語原典の持つ詩的構造と意味の深さを、日本の古典文語の様式美のうちに再構築する試みである。本稿にはシュア人ビルダデの第三の弁論と、それに対するヨブの反論を収録する。第三の弁論は極めて短く、主題が人間の卑小さへ収斂してゐる。
女より生れし者(25:4):
ビルダデが人間の不完全さと罪深さを強調するために用ゐた表現である。神の絶対的な清らかさの前に、人間は如何に無力であるかを示してゐる。
虚無の上に(26:7):
ヘブル語「תֹּהוּ」(トーフー)。創世記1:2の「トーフー・ワボーフー」の前半をなす語にして、空虚・形なき状態を指す。神が形なき空しきところに地を懸け給ふといふ驚異の御業を表現してゐる。
御座の表を覆ひ(26:9):
ヘブル語の解釈において、此処は「御座」と「満月」の二系統の理解が存在するが、本訳は荘厳なる神の統治の像を採り、「御座」としてゐる。
海を静め(26:12):
原語の動詞は訳の伝統に幅があり、「海を鎮める」あるいは「海を揺り動かす」とも解される。本訳は神の大能による平定の描写を採る。
ラハブ(26:12):
聖書詩篇において、海・混沌、または高ぶる敵対勢力を象徴する怪物的表象として現れる。神が混沌の力を制し、世界に秩序を立て給ふことを示す詩的表現と解される。
逃ぐる蛇(26:13):
神話的怪物を思はせる詩的表象にして、レヴィヤタンに重ねて解する説も有力である。神の息吹と御手の前に、混沌の勢力の屈するさまを描写してゐる。
3.ヘブル語併記文語訳
ヨブ記 第二十五章
25:1 シュア人ビルダデ答へて曰く、
וַיַּעַן בִּלְדַּד הַשּׁוּחִי וַיֹּאמַר׃
ヴァッヤアン ビルダド ハッシューヒー ヴァッヨーマル。
答えた/ビルダデが/シュア人/そして言った。
25:2 主権と畏るべき威厳は神にあり。神は其の高き所にて平和を造る。
הַמְשֵׁל וָפַחַד עִמּוֹ עֹשֶׂה שָׁלוֹם בִּמְרוֹמָיו׃
ハムシェール ヴァーファハド インモー、オーセー シャーローム ビムローマーヴ。
主権/および恐れが/彼と共にある/造る/平和を/彼の高き所で。
25:3 其の軍勢は数へ尽くされんや。其の光は誰の上に昇らざるや。
הֲיֵשׁ מִסְפָּר לִגְדוּדָיו וְעַל־מִי לֹא־יָקוּם אוֹרֵהוּ׃
ハイェーシュ ミスパル リグドゥーダーヴ、ヴェアル ミー ロー ヤークーム オーレーフー。
あるか/数が/彼の軍勢に/および上に/誰の/ないか/昇ら/彼の光が。
25:4 然れば人、如何にして神の前に正しからんや。女より生れし者、如何にして清からんや。
וּמַה־יִּצְדַּק אֱנוֹשׁ עִם־אֵל וּמַה־יִּזְכֶּה יְלוּד אִשָּׁה׃
ウーマ イツダク エノーシュ イム エール、ウーマ イズケ イェルード イッシャー。
そしてどのように/正しいだろうか/人が/共に/神と/そしてどのように/清いだろうか/生まれた者が/女から。
25:5 視よ、月すら輝かず、星も神の目には清からず。
הֵן עַד־יָרֵחַ וְלֹא יַאֲהִיל וְכוֹכָבִים לֹא־זַכּוּ בְעֵינָיו׃
ヘーン アド ヤーレーアッハ ヴェロー ヤアヒール、ヴェホーハーヴィーム ロー ザックー ヴェエーナーヴ。
見よ/月まで/そしてない/輝か/および星々が/ない/清く/彼の目に。
25:6 況して蛆虫なる人、虫けらなる人の子は如何に。
אַף כִּי־אֱנוֹשׁ רִמָּה וּבֶן־אָדָם תּוֹלֵעָה׃
アフ キー エノーシュ リンマー、ウーヴェン アーダーム トーレーアー。
まして/さらに/人は/蛆虫である/および子が/人の/虫けらである。
ヨブ記 第二十六章
26:1 ヨブ答へて曰く、
וַיַּעַן אִיּוֹב וַיֹּאמַר׃
ヴァッヤアン イーヨヴ ヴァッヨーマル。
答えた/ヨブが/そして言った。
26:2 汝如何に力なき者を助け、勢ひなき腕を救ひしや。
מֶה־עָזַרְתָּ לְלֹא־כֹחַ הוֹשַׁעְתָּ זְרוֹעַ לֹא־עֹז׃
メ アザルター レロー ホーアッハ、ホーシャアター ゼロア ロー オズ。
どのように/あなたは助けたか/ない者に/力が/あなたは救ったか/腕を/ない/勢いが。
26:3 汝如何に知恵なき者に教へを与へ、大いなる知識を示せしや。
מַה־יָּעַצְתָּ לְלֹא חָכְמָה וְתוּשִׁיָּה לָרֹב הוֹדָעְתָּ׃
マ ヤーアツター レロー ホフマー、ヴェツーシーヤー ラーロヴ ホーダアター。
どのように/あなたは助言したか/ない者に/知恵が/および健全な知識を/多く/あなたは知らせたか。
26:4 汝誰に向かひて言葉を放ち、誰の霊、汝より出でしや。
אֶת־מִי הִגַּדְתָּ מִלִּין וְנִשְׁמַת־מִי יָצְאָה מִמֶּךָּ׃
エト ミー ヒッガドター ミッリーン、ヴェニシュマト ミー ヤーツァアー ミンメッカー。
誰に/あなたは告げたか/言葉を/および霊が/誰の/出たか/あなたから。
26:5 死者の霊らは水の下にて震ひ慄き、其処に住む者らもまた然り。
הָרְפָאִים יְחוֹלָלוּ מִתַּחַת מַיִם וְשֹׁכְנֵיהֶם׃
ハーレファーイーム イェホーラールー、ミッタハト マイム ヴェショフネーヘム。
死者の霊らが/身悶えする/下から/水の/および住む者たちが。
26:6 陰府は神の前に露はなり、滅びの淵も覆ひなし。
עָרוֹם שְׁאוֹל נֶגְדּוֹ וְאֵין כְּסוּת לָאֲבַדּוֹן׃
アーローム シェオール ネグドー、ヴェエーン ケスート ラーアヴァッドーン。
裸である/陰府は/彼の前に/およびない/覆いが/滅びの淵に。
26:7 神は北の天を虚無の上に広げ、地を無き処に懸く。
נֹטֶה צָפוֹן עַל־תֹּהוּ תּוֹלֶה אֶרֶץ עַל־בְּלִי־מָה׃
ノーテ ツァーフォーン アル トーフー、トーレ エレツ アル ブリー マー。
広げる/北を/上に/虚無の/懸ける/地を/上に/ない/何ものも。
26:8 神は水を密雲の中に包めども、雲は其の下にて裂けず。
צֹרֵר־מַיִם בְּעָבָיו וְלֹא־נִבְקַע עָנָן תַּחְתָּם׃
ツォレール マイム ベアーヴァーヴ、ヴェロー ニヴカ アナーン タフターム。
包む/水を/彼の密雲の中に/およびない/裂け/雲は/それらの下で。
26:9 神は御座の表を覆ひ、其の上に雲を広ぐ。
מְאַחֵז פְּנֵי־כִסֵּה פַּרְשֵׁז עָלָיו עֲנָנוֹ׃
メアヘーズ ペネー ヒッセー、パルシェーズ アーラーヴ アナーノー。
覆い隠す/面を/御座の/広げる/その上に/彼の雲を。
26:10 神は水の面に境界を引き、光と闇の境となす。
חֹק־חָג עַל־פְּנֵי־מָיִם עַד־תַּכְלִית אוֹר עִם־חֹשֶׁךְ׃
ホク ハーグ アル ペネー マーイム、アド タフリート オール イム ホーシェフ。
境界を/円く引いた/面に/水の/まで/境/光の/共に/闇と。
26:11 天の柱は揺らぎ、神の譴責によりて驚き恐る。
עַמּוּדֵי שָׁמַיִם יְרוֹפָפוּ וְיִתְמְהוּ מִגַּעֲרָתוֹ׃
アンムーデー シャーマイム イェローファーフー、ヴェイトメフー ミッガアラートー。
柱が/天の/揺らぐ/および驚く/彼の叱責から。
26:12 其の力によりて海を静め、其の知恵によりてラハブを打ち砕く。
בְּכֹחוֹ רָגַע הַיָּם וּבִתְבוּנָתוֹ מָחַץ רָהַב׃
ベホーホー ラーガ ハッヤーム、ウーヴィトヴーナートー マーハツ ラーハヴ。
彼の力で/彼は静めた/海を/および彼の知恵で/彼は打ち砕いた/ラハブを。
26:13 其の息によりて天は晴れ渡り、其の御手は逃ぐる蛇を刺し貫く。
בְּרוּחוֹ שָׁמַיִם שִׁפְרָה חֹלְלָה יָדוֹ נָחָשׁ בָּרִיחַ׃
ベルーホー シャーマイム シフラー、ホーレラー ヤードー ナーハーシュ バーリーアッハ。
彼の息で/天は/晴れ渡る/刺し貫いた/彼の手が/蛇を/逃げる。
26:14 視よ、之は其の御業の端に過ぎず。我等が聞くところは、如何に微かなる囁きぞ。其の大能の雷鳴は誰か理解し得んや。
הֶן־אֵלֶּה קְצוֹת דְּרָכָיו וּמַה־שֵּׁמֶץ דָּבָר נִשְׁמַע־בּוֹ וְרַעַם גְּבוּרָתָו מִי יִתְבּוֹנָן׃
ヘン エッレ ケツォート デラーハーヴ、ウーマ シェーメツ ダーヴァール ニシュマ ボー、ヴェラアム ゲヴーラートー ミー イツボーナーン。
見よ/これらは/端である/彼の道の/および何と/微かな/言葉を/聞くか/彼において/および雷鳴を/彼の大能の/誰が/理解し得ようか。
4.ヘブル語単語集
以下に、今回登場した重要なキーワード及び本稿において複数回登場する頻出語彙を網羅して記載する。
תֹּהוּ (トーフー) : 空虚、形なき状態、荒涼。創世記のトーフーワボーフーの前半要素にも通じる。(重要語彙)
רָהַב (ラーハヴ) : ラハブ。海の怪物、または高ぶる敵対勢力の象徴。(重要語彙)
נָחָשׁ בָּרִיחַ (ナーハーシュ バーリーアッハ) : 逃げる蛇。レヴィヤタンとも結びつく神話的生物。(重要語彙)
שְׁאוֹל (シェオール) : 陰府。(重要語彙)
אֲבַדּוֹן (アヴァッドーン) : 滅びの淵。(重要語彙)
רְפָאִים (レファーイーム) : 死者の影ども、亡霊たち。(重要語彙)
עָנָה (アーナー) : 答える。
אָמַר (アーマル) : 言う。
אֱנוֹשׁ (エノーシュ) : 人。
מָה (マー) : 何、如何に。
לֹא (ロー) : ない。
מִי (ミー) : 誰。
עַל (アル) : 上に。
הֵן (ヘーン) : 見よ。
כֹּחַ (ホーアッハ) : 力。
מַיִם (マイム) : 水。
שָׁמַיִם (シャーマイム) : 天。
עָנָן (アナーン) : 雲。
עִם (イム) : 共に。
מִן (ミン) : から。
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