医療費控除の意外な対象12選——見落としやすい費用リスト
通院の電車代、これは対象になると思いますか?
子どもの歯の矯正、レーシック、通院の電車代。この3つ、医療費控除の対象になると思いますか。
答えは、どれも「なり得る」。医療費控除(1年間に支払った医療費が一定額を超えると、その超えた分だけ所得から差し引けて、税金が戻る仕組み)というと、病院や薬局の窓口で払った金額だけを思い浮かべる方が多いです。けれど実際は、もっと広い範囲が対象になります。
逆に、「これは入るだろう」と思っていたのに対象外、というものもあります。今日は、見落とされやすい「対象になる」もの12個と、間違えやすい「対象外」を整理します。バラバラに払っていて忘れがちな費用ほど、1年分を合わせると大きな差になります。
まず前提——医療費控除の「10万円ライン」
医療費控除は、その年の1月〜12月に支払った医療費の合計が、原則10万円を超えると使えます(その年の総所得金額等が200万円未満の方は「10万円」ではなく「総所得金額等の5%」が基準)。控除の上限は200万円です。
ポイントは2つあります。1つは、生計を一にする家族の分をまとめて合算できること。同居の家族はもちろん、仕送りしている親の医療費も対象になり得ます。もう1つは、実際に支払った人が申告すること。共働きなら、収入が多く税率が高い方でまとめると戻りが大きくなりやすいです。
つまり「1人分では10万円に届かない」と思っても、家族分と、これから挙げる見落としがちな費用を足すと、案外ラインを越えることがあります。
見落としやすい「対象になる」もの12選
通院まわり
通院の交通費(電車・バス)。診察や治療のための移動は対象です。ICカードの履歴やメモで金額を残しておきます。※自家用車のガソリン代・駐車場代は対象外。
付き添いの家族の交通費。子どもの通院や、1人での通院が難しい方に付き添う場合の付添者の交通費も対象になり得ます。
やむを得ないタクシー代。公共交通機関が使えない時間帯や状態など、必要と認められる場合。
治療そのもの
不妊治療の費用(保険がきかない自費部分を含む)。
レーシック・ICLなど、視力そのものを回復させる手術。
子どもの歯列矯正。発育のために必要と医師が判断したものは対象です(見た目を整える目的のみは対象外)。治療目的のインプラントなども含みます。
国家資格者による、はり・きゅう・あん摩マッサージ。ただし「治療のため」であることが前提で、疲れをとる目的は対象外です。
出産・入院・器具
妊婦健診・出産費用。定期健診や、分娩・入院にかかった費用。
入院時の食事代(標準的な食事療養費の自己負担分)。
医療用の器具。医師の指示で使う松葉杖・義足・補聴器などの購入費。
薬・介護
治療のために買った市販薬。かぜをひいたときに買った薬など、治療目的のものは対象です(予防や健康増進のためのビタミン剤・サプリは対象外)。
一定の介護費用。施設サービス費や医療系の在宅サービス、条件を満たすおむつ代(おおむね6か月以上寝たきりで、医師のおむつ使用証明書があるものなど)。
間違えやすい「対象にならない」もの
「入ると思っていた」でつまずきやすいのが、次の費用です。
予防接種……予防が目的のため対象外。ただし医師の指示で治療の一環として行う場合は別です。
健康診断・人間ドック……原則は対象外。ただし、そこで重大な病気が見つかり、そのまま治療に入った場合は対象になります。
美容目的の施術……二重まぶたや脂肪吸引、見た目を整えるための矯正など。
自己都合の差額ベッド代……本人や家族の希望で個室にした場合。病院側の都合や、治療上必要と医師が判断した場合は対象です。
予防・健康増進のためのサプリ・健康食品。
ここでよくある誤解を1つ。「保険がきかない自費診療は医療費控除も使えない」と思われがちですが、そうではありません。レーシックや不妊治療のように、保険適用外でも“治療”であれば対象になります。線引きは「治療か、予防・美容か」です。
いくら戻る?——具体的に試算
年収500万円の会社員(所得税率10%+住民税約10%で、合わせて約20%)を例にします。
家族の分も合わせて、1年間の医療費が18万円だったとします。控除できるのは「18万円-10万円=8万円」。戻る税金は、およそ「8万円×20%=約1万6,000円」です。
もう1つ、見落としが結果を分ける例を。窓口で払った医療費が9万円で、「10万円に届かないから申告してもムダ」と思っていたとします。ところが、通院の交通費が年2万円あった。合わせると11万円で、10万円ラインを1万円超えます。この1万円分で、約2,000円が戻る計算です。ゼロだと思っていたものが、レシートとメモ次第でプラスになるわけです。
薬剤師×FPとして、自分の体験から
実は私自身、2年前にICL(眼の中に小さなレンズを入れて視力を矯正する手術)を受けました。保険はきかず自己負担でしたが、これも治療にあたるため医療費控除の対象になり、確定申告で申告しました。戻ってきた税金は、決して小さくない金額でした。そして今も見え方はとても快適で、あのとき受けてよかったと感じています。「自費のものは医療費控除と関係ない」と思い込んでいたら、まるごと申告し損ねていたお金でした。
自分が当事者になって、あらためて実感しました。控除に入るかどうかは、知っているかどうかだけの差だと。
薬局にいても、市販薬を買った方がレシートをその場で捨てていく場面をよく見ます。「市販薬まで医療費控除に入るなんて思わなかった」という声も多いです。治療のために買ったものなら、その1枚が、年末には戻るお金につながります。
私がおすすめしているのは、家族全員分の医療費レシートと、通院の交通費メモを、月ごとに1つの封筒へ入れておくことです。特別な家計簿はいりません。1年たって封筒を開け、合計してみて10万円ラインに近ければ、そこで初めて中身を整理すればいい。「拾えるものを、捨てないでおく」。それだけで、申告できるかどうかが変わります。
持ち帰ってほしい数字
「10万円」。この一線に届くかどうかは、病院の窓口の金額だけでなく、交通費や市販薬まで拾えるかで変わります。今年の分は、まだ間に合います。レシートを1枚、捨てる前に封筒へ。
参考にした情報源
この記事は、次の公的情報をもとに作成しています(2026年7月時点)。対象・対象外の判断は個別事情で変わることがあるため、迷う費用は国税庁の該当ページや税務署でご確認ください。
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm国税庁 No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm
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