狭小物件の飲食店 居酒屋からアクアリウムレストランへのリノベーション「ノーチラス上野」
前回まで集客を実現する空間デザイン第一章として以下4つの実例をご覧頂きました。
case1:手術室がまる見えの眼科クリニック(クリニック内装デザイン)
case2:宇宙船のような近未来SF建築デザイン(ショールーム建築設計)
case3:かわいい空間を追求した東進衛星予備校オフィス(オフィス内装デザイン)
case4:ハイテク医療のイメージをクリニック空間に具現化(クリニック内装デザイン)
第2章 物件の物理的なハンデに対するソリューションデザイン
既存物件における空間デザインというのは、既に決められた枠内に様々な機能を落とし込まなければならず、物理的な制約・ハンデはつきものです。こ第2章では物理的なハンデ(狭さ・形状・方位等)のある物件におけるソリューションデザインの実例を以下3つご紹介します。
case1:狭小居酒屋から高級飲食業態へのリノベーション

case2:床が斜めになっている映画館跡の飲食店

case3:総ガラス張り物件の眼科クリニック

では今回はcase1狭小居酒屋から高級飲食業態へのリノベーションをご紹介します。
アクアリウムレストラン・ノーチラス(東京・上野)
創作フレンチのお店です。クライアントは個室居酒屋をチェーン展開している企業です。当時コロナ渦で、居酒屋業態が非常に厳しい状況にあったため、ターゲット層を変え、尚且つ客単価を上げるために店舗の内装を改装し、業態変更しようということでした。
実は今回の上野のお店を改装する前年、同じくコロナ渦に同オーナーが経営する新宿三丁目の居酒屋さんをアクアリウムダイニングに改装する際のデザインも担当しました。

上がその店舗です。新宿三丁目ということで、少し夜の匂いが強めの内装です。コロナ渦でも予約半年待ちという人気店になりました。当時この店舗以外の居酒屋は全て赤字店舗だったそうですが、このアクアリウムダイニング1店舗の利益だけで、他の全店の赤字をじゅうぶんカバーできたとのことです。

それなら既存の居酒屋をどんどんアクアリウムダイニングに業態変更していこう、ということでこちらの上野の居酒屋もアクアリウムダイニングに改装することになりました。

まず当該居酒屋店舗の状況を確認し、大きな課題が浮上しました。
やや高級な創作フレンチという飲食業態としてはあまりにも狭い。
現場は狭い通路の両サイドに個室がぎっしり並んでいる状態でした。

厨房の位置は変えないという条件でしたので、この細長い空間に客席を再配置します。

上記平面図のように、最低限必要な席数を確保するとメイン通路が85㎝しか残りませんでした。お客さんどうしが通路ですれ違う際に、お互い半身になって避けないとすれ違えない、かなり狭い通路です。

フレンチレストランなどやや客単価の高い飲食店の場合、やはりゆったりした空間にテーブルが並ぶイメージがあり、相応の空間が必要です。
狭くても高級業態が成り立つような、お店に来たお客さんが納得できる口上が必要
あまりにも狭い店舗で高級業態を展開する場合、狭くてもお客さんが納得できる理由が必要です。

たまたま診た「スノーピアサー」という列車の映画がヒントになりました。「高級な客室列車であれば、通路が狭くても違和感ないのではないか」と思いました。

『海底を走る豪華列車の旅。車窓から魚たちを眺めながら、優雅な食事のひと時をお楽しみください』
こちらが当該店舗のコンセプトです。これなら、狭くても違和感なく楽しんで頂けると考えました。

もちろん我々空間デザイナーは、この口上を文章ではなく、空間でお客様に届けなければなりません。説明しなくてもここが海底列車の中だということを、一歩この空間に踏み込んだ瞬間に伝えることが重要です。

店舗内装のイメージは、上野という場所柄、デート客をターゲットとしてデザインし、カップルシートを多めに確保しました。

列車の車窓を模したフレームに水槽を設置しています。

通路を挟んで反対側には個室が並んでいます。

4人掛けの個室です。こちらもかなり狭い空間なのですが、狭さを感じさせないようミラーを多用しています。

カップルシートを囲うエッチングガラスは水が流れる様子をイメージしたもの、天井の波打つステンレス板も水面を想起させます。

一番奥には少し大きめの個室もあります。


半円形の水槽を囲むカップルシートもあります。

写真では分かりにくいですが、席に座ると周囲の円筒形ガラスの内側に中心の水槽が映り込み、360度水槽に囲まれているような幻想的な風景を楽しめます。

エレベーターホールから店内を見たところです。

以上、狭小店舗で高級飲食業態を成り立たせるためのコンセプトを考案した事例でした。
次回は同じく飲食店設計事例、奈良の大仏さんの近くにある居酒屋さんをご紹介します。

※集客を実現する店舗空間デザインはコチラの記事をご覧ください

▶弊社の設計事例についてはコチラの作品集をご覧ください
2025.8.6

【この記事を書いた人 松本 哲哉】
一級建築士・宅地建物取引士・大阪芸術大学非常勤講師
株式会社KTXアーキラボ一級建築士事務所 主宰
株式会社マツヤアートワークス 代表取締役
2024年度イタリアDAC認定デザイナーランキング世界9位(日本国内1位)
▶ウィキペディア 松本哲哉(建築家)
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