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世の中おかしい。──シリーズ扉



小さな違和感から、当たり前を読み直す


世の中おかしい。
ニュースを見ているとき、歴史の説明を読んでいるとき、あるいは日常の中で何気なく使われている言葉に触れたとき、そう感じることがあります。

けれど、このシリーズで書きたいのは、誰かを怒鳴ることでも、自分の考えだけを正解として押しつけることでもありません。

なぜ、その説明が当たり前になったのか。
どのような立場から、その物語は語られているのか。
何が強調され、何が省かれているのか。
一度立ち止まり、別の角度から読み直してみると、それまで見えていなかった前提や構造が浮かぶことがあります。

このシリーズは、社会や歴史の中に残った小さな違和感を、できるだけ丁寧にたどっていく記録です。


このシリーズで書いていること


政治、歴史、制度、教育、環境、文化、食、ブランド、嗜好品。

扱う題材はさまざまですが、見つめているものは、それほど違いません。私が気になるのは、事実そのものだけではなく、その事実がどのような言葉や物語によって理解されてきたのかということです。

私は広告やイベントの現場で30年以上、人に何かを伝える仕事をしてきました。

同じ事実でも、どの順番で見せるか、どんな名前をつけるか、どの映像や言葉を繰り返すかによって、人の受け止め方は変わります。ブランドの価値も、イベントの印象も、情報だけでつくられているわけではありません。

その経験から、ニュースや歴史の説明に触れたときにも、
なぜ、この言葉が選ばれたのか。
なぜ、この説明だけが残ったのか。
と考える癖がつきました。

このシリーズでは、通説を否定すること自体を目的にはしていません。資料や数字、時代背景をたどりながら、すでに出来上がっている説明を、いったん分解して考え直しています。

ここにあるのは、最終的な答えではありません。
もう一度考えるための、ひとつの見方です。


はじめての方へ

まず読むなら、次の3本から選んでみてください。

歴史資料の読み方、商品の価値を支える物語、国家の歴史を表す数字。題材は異なりますが、いずれも「当たり前に見えるものが、どのようにつくられたのか」を考えた記事です。


1|邪馬台国はなぜ見つからないのか

邪馬台国はどこにあったのか。その答えを求めるとき、私たちは『魏志倭人伝』を客観的な記録として扱い、『日本書紀』を政治的な史書として疑いがちです。けれど、国家が編纂した歴史書に、その時代の政治や価値観が含まれるのは、中国の史書も同じです。外から書かれた記録だから正しく、自国で書かれた記録だから信用できないという考え方自体に、偏りはないのでしょうか。

邪馬台国の場所を推理するのではなく、私たちが史書の権威をどのようにつくっているのかを問い直した一本です。

→「邪馬台国はなぜ“見つからない”のか」を読む


2|私たちは「モノ」ではなく「演出された物語」に金を払っている。

ダイヤモンド、ハイブランド、ヴィンテージデニム。同じような素材や品質でも、そこに付けられる値段は大きく異なります。

値札に乗っているのは、素材や技術だけではありません。希少性、歴史、憧れ、「選ばれた側にいる」という感覚まで含めて、長い時間をかけてつくられた物語が価値を支えています。価格と品質、物語と実体はどこで重なり、どこから離れていくのか。私たちがお金を払っている価値の正体を考えた一本です。

→「私たちは『モノ』ではなく『演出された物語』に金を払っている。」を読む


3|中国四千年という不思議

「中国四千年の歴史」という言葉は、あまりにも自然に使われてきました。けれど、現在の国家の歴史と、その土地にかつて存在した文明の時間は、本来同じものではありません。
日本に古い遺跡があるからといって、「日本は三万八千年の歴史を持つ国だ」とは言いません。メキシコも、マヤ文明の始まりから現在の国家の歴史を数えてはいません。

では、「四千年」という数字はどこから来て、なぜ疑われないまま歴史になったのでしょうか。数字が説明を省略し、いつの間にか正しさをまとう過程を考えた一本です。

→「中国四千年という不思議」を読む


📘連載一覧

ここからは、これまでの記事を大きく三つの入口に分けて紹介します。
現在の関心に近いところから、気になる一本を選んでみてください。


歴史と教科書を読み直す

教科書や通説の中で簡潔にまとめられてきた出来事を、当時の国際関係、史料、軍事、交易、宗教などの側から読み直します。

👁️ Vol.2|侍50万人 vs 黒船艦隊1,000人──徳川幕府は“怯えていなかった”という歴史の真実。
本当に「日本は怯えていた」のか?
黒船の軍事力だけでなく、当時のアメリカの国力、江戸の武士階級、幕府の外交判断を重ね、「黒船に怯えて開国した」という物語を見直した記事です。
🔹 記事を読む

👁️ Vol.4|義和団事件の真実──“列強 vs 民衆”の不均衡が生んだ絶望
“列強 vs 民衆”の不均衡が生んだ絶望。
菊池寛の『大衆明治史』を手がかりに、北京籠城、八カ国連合軍の救援、列強による略奪、その中で描かれた日本軍の行動をたどります。教科書では数行で終わる事件を、当時の記録から読み直した一本です。
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👁️ Vol.5|鉄砲伝来“漂着事故説”の嘘──ポルトガル船はなぜ種子島に来たのか?
ポルトガル船はなぜ種子島に来たのか?
明のジャンク船に同乗していたポルトガル人の鉄砲を、日本側が購入し、分解し、短期間で国産化していく。その背後にあった硝石、南蛮貿易、宗教、人身売買までをたどり、「鉄砲が伝わった」という一行では見えない構造を考えました。
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👁️ Vol.6|ザビエルとイエズス会── “布教”ではなく“侵略の対象”?
日本は“布教”ではなく“侵略の対象”だったのか?
ザビエルの来日を、宗教の伝来だけではなく、南蛮貿易、日本人奴隷、イエズス会の組織、当時の帝国拡張という背景から読み直します。日本がカトリック勢力を警戒した理由を、宗教弾圧とは別の角度から考えた記事です。
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👁️ Vol.9邪馬台国はなぜ“見つからない”のか
史書は“答え”ではなく、“意図”でできている
『魏志倭人伝』と『日本書紀』の扱われ方の違いから、私たちが史書に与えている権威と、歴史資料を読む際の前提を問い直しました。
🔹 記事を読む

👁️ Vol.11|中国四千年という不思議
文明の始まりと、現在の国家の歴史は同じものなのか。「世界四大文明」や「中国四千年」という数字が、どのように常識として定着したのかを考えた一本です。
🔹 記事を読む

👁️ Vol.16|8月15日、靖国神社について考えてみる
靖国神社は、いつから「靖国問題」になったのか。A・B・C級戦犯の意味、戦後の国内での扱い、昭和天皇のご親拝、歴代首相の参拝、1975年の「私人・公人」論、そして1985年以降の中国との外交問題までを時系列でたどりました。
🔹記事を読む


制度と正義の構造を見る

制度や社会運動が掲げる目的だけではなく、その周囲にある組織、予算、産業、税、規制の仕組みまで視野を広げます。

👁️ Vol.1|IR汚職は“氷山の一角”
日本のカジノ計画が抱えていた深層
IRの是非だけではなく、公営競技、宝くじ、パチンコを含む日本の巨大なギャンブル市場と、所管省庁ごとに異なる制度や収益構造から、汚職の背景を考えた記事です。
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👁️ Vol.3|反捕鯨運動は“環境問題”ではない
その背後にある利権
何を食べるかという文化の違い、国際捕鯨委員会の成り立ち、反捕鯨運動を担った団体の組織と資金を重ねながら、「環境保護」という正義がどのようにつくられたのかを問い直しました。
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👁️ Vol.8パイプの煙と絶滅危惧種
パイプや煙管、映画に描かれた煙草の仕草から、喫煙規制、たばこ税、失われていく嗜好文化までをたどります。健康の問題だけで語るとき、私たちはどのような文化や時間を失うのかを考えた一本です。
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👁️ Vol.12|緊縮か、積極財政か——三十年間、順番を間違えてきた日本

三十年間、日本は何を優先してきたのか

消費税や社会保険料の負担を増やす一方、実質賃金や個人消費は伸び悩んできました。緊縮財政と積極財政を比べながら、日本に必要だった政策の順番を考えた記事です。
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👁️ Vol.13|レシートに書かれた「消費税」の正体——食料品だけの減税でいいのか

私たちが払っている「消費税」とは何なのか

価格転嫁できない事業者、赤字でも生じる納税、輸出還付など、レシートだけでは見えない消費税の仕組みをたどり、食料品だけの減税でいいのかを考えました。
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👁️Vol.14|円安か、円高か——どちらへ動いても政府が悪いのか

為替は、どちらへ動けば正解なのか

円安と円高で利益を受ける側、負担する側を整理し、プラザ合意後の円高や企業の海外移転までを振り返りながら、為替と政府の役割を考えた一本です。
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👁️ Vol.15|「財源がない」の正体——その一言で政策を止めていいのか

減税の話になると、必ず問われる「財源」。けれど、給付金では同じようには語られません。

政府財政と家計の違い、税収弾性値、減税による経済への波及、既存歳出までをたどり、「財源がない」の一言で政策を止めていいのかを考えました。
🔹記事を読む

👁️ Vol.17|大麻は、いつ「悪魔の植物」になったのか〈前編〉

【近日公開予定】

アメリカがつくった恐怖の物語
薬として使われていたカンナビスが、移民や黒人、ジャズと結びつけられ、「危険なマリファナ」へ変わっていく過程をたどり、大麻を悪魔の植物にした背景を考えます。
大麻を「悪魔の植物」にしたアメリカ側の物語を扱った前編です。

👁️ Vol.18|大麻は、いつ「悪魔の植物」になったのか〈後編〉

【近日公開予定】

日本に持ち込まれた「ダメ。ゼッタイ。」
日本の暮らしや神事にあった麻が、GHQの規制や麻薬追放運動を経て「絶対悪」へ変わっていく過程をたどり、日本の大麻規制がどう形づくられたのかを考えます。
悪いから禁止されたのか、禁止されたから悪いものになったのかを考えた後編です。


文化と価値の成り立ちを考える

料理やブランドなど、日常の中で当たり前に受け入れている価値が、どのような歴史や物語によってつくられたのかを見つめます。

👁️ Vol.7“世界三大料理”は誰が決めたのか──オスマン帝国の宮廷料理の真実
オスマン帝国の宮廷料理の真実
私たちが思い浮かべるケバブなどのトルコ料理と、「世界三大料理」と呼ばれたオスマン帝国の宮廷料理は、同じものではありません。
そもそも誰が三大料理と決めたのか。帝国の食材と文化を集め、外交や権力の表現にもなった宮廷料理から、消えてしまった食文化をたどりました。
🔹 記事を読む

👁️ Vol.10|私たちは「モノ」ではなく「演出された物語」に金を払っている。
ダイヤモンド、ハイブランド、ヴィンテージデニムを例に、素材や品質だけでは説明できない価格の仕組みを考えました。
私たちは何に価値を感じ、どの物語を選び、その幻想にいくら払おうとしているのかを問いかけた一本です。
🔹 記事を読む



✒関連シリーズ

このnoteでは、社会や歴史のほかに、仕事、音楽、日常についても書いています。題材は異なりますが、いずれも、目に見えている出来事の奥にある理由や構造をたどる記録です。

🎨「仕事場の記憶」シリーズ扉へ
広告やイベントの現場で、アイデアがどのように形になり、人の心を動かす体験へ変わったのかを記録しています。
企画、構成、台本、演出、運営など、完成した風景の裏側にあった仕事の話です。

🌍「記憶の針を落とす」シリーズ総合扉へ
音楽を入口に、自分の記憶と、その音楽が生まれた時代をたどるシリーズです。名盤や歌手を紹介するだけではなく、音楽がどこから生まれ、人から人へ渡り、長い時間を経て別の意味を持つようになったのかを書いています。

🌙 音と記憶の間に ― ひとりごとの記録(マガジン)へ
日常の中でふと引っかかった言葉や、心に残った小さな違和感から書き始めるシリーズです。身の回りの出来事を扱った短い文章もあれば、そこから文化や社会、歴史へと考えが広がっていく記事もあります。


世の中おかしい


なぜ、その説明だけが残ったのか。
なぜ、その数字を疑わずに受け取るのか。
なぜ、正義という言葉は、それほど強く響くのか。

違和感は、答えではありません。
けれど、考え始めるための入口にはなります。

このシリーズに書いていることが、すべて正しいとは思っていません。資料を読み、自分の経験と照らし合わせながら、現時点で見えたものを言葉にしています。

大切なのは、最初に与えられた説明だけで考えることを止めないことです。

当たり前だと思っていたものを、もう一度、自分の目で見直してみる。そこから、物事の見え方が少し変わることがあります。

ここに残した違和感が、あなた自身の中にある小さな引っかかりとつながり、もう一度考えてみるきっかけになれば嬉しく思います。


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浅川幸三 | クリエイティブプロデューサー 共感でも、違和感でも。 何かが残ったなら、それで本望です。 サポートは次の一行のために。