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📚図書館編 04|森で一番考える男

開館5分前。
アキラはカウンターで今日の予約本を整え、
小さくうなずく。

「よし、完璧だ」

両手を軽くパンパンと払い、にこやかに微笑んだところで背後から声がかかる。

「アキラさん……それ、昨日の分です」

「えっ?」

振り返ると、今日分の本が台車の上にそのまま残っている。数秒だけ固まり、何事もなかった顔で台車を押し始める。

耳だけが、わずかに赤い。



昼休み。
弁当箱の蓋を開けた瞬間、アキラの動きが止まった。

「箸が……ない」

鞄をひっくり返し、ポケットを探り、
「もしかして……」と引き出しをかき回したが、ないものはない。

アキラはふと爪楊枝に目をやった。
それから、弁当を見つめ直す。

「爪楊枝2本なら……攻略できるか」

しばらく真剣に考えたあと、

「……理論上はいけるはずだ」

とつぶやいたところで、同僚に見つかる。

「いや無理ですよねそれ。割り箸ありますよ」

「どうぞ 」と差し出された箸を受け取る。

「……助かります」

視線を伏せたまま、しばらく動けなかった。

同僚が小さく笑う。

「アキラさんって、ちょっと天然ですよね」

「……反省している」

閉館後。
今日も一日、無事だったと息を吐く。

カバンの中には、新しいスマホの箱。
マダム・ザマスに薦められて以来、
ずっと気になっていたものだ。

一週間前に買ったまま、まだ開けていない。

少しだけ手に取って、また置く。

「……ちゃんと理解してからじゃないとな」

説明書を先に読むつもりで、そのまま時間が過ぎていた。しばらく使い方ガイドを眺めた後、ようやく箱を開ける。

中をのぞき込む表情は、どこか嬉しそうだ。

帰り際、同僚がぽつりと言った。

「アキラさんって、本当に不思議ですよね」

「……そうか?」

「ちゃんとしてるのに、どこか抜けてるし」

アキラは少しだけ考え込む。

「まぁ、僕らも助かりますけどね。面倒ごとって、結局アキラさんのところに集まるし」


「……おいおい」

同僚はくすくすと笑いながら帰っていった。


(便利屋になった覚えはないのだが……)


静かになった図書館に、一人分の足音だけが残る。鞄を持ち上げ、帰ろうとしたその時だった。

「アキラくん」

後ろから聞き慣れた声がした。
振り返ると、そこには館長が立っていた。

「ちょっといいかね」

その一言に、嫌な予感がした。

館長が髭を触りながらニコニコしている時は、大体ろくなことがない。

前回は誰も読めない古文書の見直しだった。
その前には、ちょっと意見を聞きたいと誘われたまま、気づけば三時間も拘束された。

館長は嬉しそうに笑う。

「少し、時間あるかね」

アキラは小さくため息をついた。

思い返せば、あの時も館長は同じ顔で笑っていた。

そう。あの時も──。


「アキラくん。実は森の外れで、面白いものが見つかってね──」


(続く)


アキラの図書館編

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スマホ選びに悩むアキラの話⬇︎

モコがアキラに初めて出会った日⬇︎


暮らしの森には、いろんな住人たちの
物語が詰まっています。
(好きな順路で自由に散策してみてください)



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