立派なお父さんほど、失敗する
メガネ屋で働いていると、子どもや奥さんの前でついつい“知ったかぶり”をしてしまうお父さんにたまに遭遇する。
「あ〜、やってんなぁ〜」と思うだけで済むくらいであれば良いのだけれど、これ悪いけれど恥かかせてしまうけれど、止めないといけないことだってある。
「最近のメガネはなぁ、すごいんよ!」
メガネについて私は知っていますという勢いで、子どもと奥さんに何かを語り出したお父さん。
何を知っているのだろう。ネットの記事で読んだのかテレビで見たのか知らないけれど、メガネにまつわる情報を得てきたのだろうか。
僕も一歩下がって何を話すのかワクワクしながら聞いていた。
「“形状記憶合金”って言ってなぁ!曲がっても勝手に元に戻るんよ!見とけよ〜……」
やめろ。曲げんな。この後に続く脳裏に浮かんだありとあらゆる暴言を僕は脳の中に留めておいて、「あ、ごめんなさい戻らないです〜」と止めに入る。
「これ戻らんやつなん!?」
日本全国どのお店を探しても戻らんやつしかないです。ターミネーターか。メイド・イン・スカイネットか。ふざけんな。
それにたぶん、“形状記憶合金”ってそういうことじゃない。
家族の前で恥をかかせたことは申し訳ないけれど、残念ながら戻らないし、メガネは金属によっては“弾力性”があるくらいの話だし、そもそも仮にそうだとしても購入前の商品を勝手に曲げるとか頭おか……
でもこの“知ったかぶり”をしてしまうお父さん、視点を変えてみると家族のことを愛しているんだなぁと最近思うようになった。
この“知ったかぶり”は、いわゆる劣等感からくるものでも、マウントを取りたい心理からくるものでもなさそうだ。
それよりも例えるならば、家族の前でマジックを披露するような、もしくは鉄棒で逆上がりをキメるような、そんな感覚。
「お父さんがやるのを見とけよ〜!」
と言ってがんばってる姿のようにも見えた。
つまりはサービス精神なのだ。
休日に家族揃って出かけた場で、物知りで頼りにもなって家族を楽しませる、そんなお父さんとしての“役割”を全うしようと張り切っている、そんな言うなれば素晴らしい姿のようにも見えた。
男性は“お父さん”という立場になると、これは本能なのだろうか立派な人という“立場”を求めて、まるでそうであるかのように見せるための“演技”をするのかもしれない。
けれどその演技、だいたいバレてる。
何も知らないけれど、子どもと奥さんと一緒に新しいことを発見して一緒に驚いて一緒に楽しむような、そのくらいの方が疲れないし恥もかかない。
“知ったかぶり”でメガネを曲げてしまうこともないし。
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路上にチップもらう用のシルクハットを置いてパントマイムするの、実はやってみたかったんです