見出し画像

子どもにメガネを買う親、買わない親

子どものメガネを買いにくる親、だいたい2パターン存在する気がする。
1つは、子どものために必要だからと真剣な気持ちで買いにくる親。
そしてもう1つは、学校や眼科から必要と言われたから、仕方なく買いにきている親。

僕はそのどちらも正解だとは思っている。必要不可欠なものを買いにきているのだから、どちらも正しい。
正しくないのは、そのどちらでもないパターン。


あるときに、高校卒業間近の男の子の対応をしたことがある。
運転免許を取るために自動車学校に行ったら、「視力が足らないから試験に合格させられない」と言われたそうだ。

メガネの度数を測ってみたら、左右ともに-6.00だった。
これ、裸眼での生活は無理。はっきり見えるのは目から約17cmまで。つまりは日常ほぼ全ての景色がボヤけたまま生きてきたことになる。
しかもその子は度数-6.00のメガネをかけたとしてもギリギリ0.7が見えるかどうか。運転免許の合格ラインがその0.7だ。

その子の度数の測定中、ご両親は何をしていたか。僕はハッキリと視界の端に見えていた。
店の外で喫煙タイム。2人とも。それも測定しているおよそ20分間に絶え間なく。
これタバコ吸ったことがある人ならわかるはず。1本か2本吸う時間じゃない。4本か5本は吸える。
そういうことか。だからこの子も高校生なのにタバコの匂いが漂っているのか。あいつらの匂いだったのか。

本人に聞くと、小学生のころから視力はずっとC判定で、「メガネがいりますよ」とは言われてきていたらしい。
でもずっと買ってもらえず、運転免許証を取るときになってようやく初めて買ってもらえることになったそうだ。


僕はなんだか無性に悔しくなった。そこに言葉を挟めない無力感。1.0が見えるようにできない無力感。

度数-6.00も、視力0.7も、なにが原因なのかは断定できない。だから、
「お前らが早くメガネ買ってあげないから近視が進んだじゃないか!」
「0.7しか見えないのはお前らのせいだ!」
とは言えない。

しかし少なくとも、もっと早くから“見える”ということを与えてあげていたら、その子は自分や友達の顔もはっきり見えていたし、黒板も見えやすかったし、野球やサッカーをすればボールも見えやすかった。

もっとたくさんの友達に囲まれていたかもしれないし、
何かの学問に熱中していたかもしれないし、
スポーツで活躍していたかもしれない。
その可能性をただの煙と交換した大人に、僕は今でも腹が立っている。


親が子どもにメガネを買うとき、それってただメガネという物を買っているだけじゃない。
子どもの未来も一緒に買っている。僕はそういうものだと思う。

それって何よりのプレゼントやん?素敵やん?


いいなと思ったら応援しよう!

コリ|メガネ屋エッセイスト 路上にチップもらう用のシルクハットを置いてパントマイムするの、実はやってみたかったんです

この記事が参加している募集