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戸隠五社めぐり。残ったのは、しおり一枚と、増えすぎた朱色の門の写真

戸隠神社の五社巡りをしてきました。

戸隠神社は、宝光社、火之御子社、中社、九頭龍社、奥社の五社からなる神社です。
同じ神社でも、社殿の大きさも、参道の様子もかなり違いました。

きれいにまとめれば「変化に富んだ五社巡り」。ただ、歩いている本人は、そんなに落ち着いてはいませんでした。

270余段の宝光社で、さっそく足がすくむ

最初に向かった宝光社では、木の鳥居の奥に急な石段が伸びていました。
左右には大きな杉。その先には社殿の屋根が見えます。

宝光社の石段は270余段あるそうです。数字を知っていても、実物の勾配までは伝わってきません。
とても急な傾斜でも登っている間は気になりませんでしたが、登り切って振り返った瞬間に足がすくみました。

よくここを上がってきたなと思ったと同時に、帰りはムリと早々に悟って女坂を降りることに決めました。

石段の上に建つ社殿は大きく、御本社ではないと分かっていても、十分すぎるほどの存在感がありました。下から屋根を見上げていた時とは違い、近くに立つと社殿の重さまで伝わってくるようです。

帰りは女坂でそこから見る杉もきれいでした。この時点では、後で歩く奥宮の杉並木への期待が膨らんでいました。

次の火之御子社は、宝光社から一転して小さい。
宝光社の石段と社殿を見た直後で、社殿は大きいものと勝手に思っていたので、逆に想定外でした。
五社を巡ると決めた時は、似た景色が続くのかと少し思っていました。二社目で、その予想は早くも外れます。

巨大な鳥居を前に、「大きい」しか出てこない

中社へ着くと、最初に木の鳥居の大きさが印象的です。

車で山門前を通った時から大きいとは思っていましたが、鳥居の下まで行くと柱の太く。これほど大きく、しかも真っすぐな木を、いったいどこから持ってきたのだろう。そんなことを考えながら見ていました。
本当に大きなものを前にすると、だいたい「大きい」しか出てこない。

社殿も大きな鳥居に負けておらず、宝光社とはまた違う堂々とした空気があります。

右手奥へ行くと、小さな滝がありました。
そこから届く空気が涼しく、大きな鳥居と社殿を見上げ続けて力の入っていた体が、ここでふっとゆるみました。

中社の門前には人気のな蕎麦屋さんがあり、自分もファンです。開店前に順番リストに名前を書くシステムですが、一番乗りは朝4時から順番待ちの記入があったと知りました。
「朝4時。早過ぎだょ!!」とツッコミを入れたいけれど、本当に美味しいものはここまでするのも何となくわかる気もします。でも、早朝から名前を書く人の気合いはすごい。

開店直前の時間に、店主が軽快に面白おかしく話していました。このトークだけでも聞く価値がありです。

樹齢400年の杉並木、写真で知っていた景色に会う

(蕎麦屋でなくて)中社を参拝してから車で、奥社参道の入口に移動しました。ここから奥社までは約2km、徒歩で約40分歩きます。

数字だけなら楽に歩けそう。実際、随神門までの道は、周囲を見ながら進む余裕があります。
この日の午前11時頃は、門へ向かう人が多く、奥まで人影だらけ。まるでどこかの商店街みたくて、静かな参道の杉並木への期待が一瞬で崩れさります。

でも、木々の緑の中に現れる随神門は、朱色が鮮やかでした。
茅葺き屋根にはシダが育ち、建物だけが自然から切り離されていません。朱色の門なのに周囲から浮くことなく、緑の中でちょうどよく際立っていました。

後で写真を見返すと、随神門ばかり何枚も撮っています。気に入ると同じものを何度も撮る癖は、今回も健在でした。

そして、門の先に杉並木が続きます。
樹齢400年を超える杉が並ぶ景色は、戸隠の象徴であって旅行雑誌の写真で何度も見て知っている景色のはずでした。

それでも、実物は別です。一本だけでも見上げる高さの杉が、奥へ向かって連なっていて視線を上げても幹の先が遠い。前を見ると、道の先まで杉が続いて写真の枠の外にも同じ空気が広がっていることを、歩きながら実感しました。

少し離れて振り返ると、戸隠山と奥社がつながる

静かな杉並木を抜けてさらに進むと、後半は傾斜が少しずつ強くなります。

ここからは、景色を味わう気持ちと、足を前へ出す作業が同時進行です。
体力を使いながらたどり着いた九頭龍社は、奥社の隣にあります。地主神の九頭龍大神を祀る社で、戸隠信仰の中核にある山岳・洞窟信仰を最もよく残す社らしく派手さより厳かな印象が残りました。
拝殿の後ろから右上に続く回廊の先に、本殿が洞窟に半分入り込んでいる不思議なつくりの社殿が印象的で記憶に残りました。

最後は御本社の奥社です。祀られているのは天手力雄命です。

参拝している最中は、目の前の社殿に意識が向いていました。少し離れて振り返ると、背後の戸隠山と社殿が一つにつながって見えたのです。
霧が岩山の半分にかかり、社殿が山の前に置かれているというより、山の中から続いてきたようでした。

五社を巡る間、ずっと目の前の石段や鳥居や坂に反応してきました。最後に少し離れたことで、ようやく全体が見えた気がします。

奥社と九頭龍社の御朱印を受け、五社参拝記念のしおりもいただきました。

薄いしおり一枚ですが、手にすると素直にうれしい。急な石段で足がすくんだことも、巨大な鳥居の下で黙ったことも、杉並木の先で足取りが重くなったことも、その一枚につながりました。

五社を一日で巡って何かを悟った、ということはありません。

ただ、帰って写真を見返すと、随神門の同じような写真が何枚もありました。しおりと、少し重い足と、増えすぎた朱色の門の写真。それが今のところ、自分の戸隠五社参拝の実感です。


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