Philadelphia Eaglesと自閉症──なぜ私はこれに「誇り」を感じるのか?
4月は自閉症啓発月間(Autism Awareness Month)。今回は自閉症関連の記事の第3弾だ。
自閉症の投稿となると、なぜか私のルーツであるフィラデルフィアに繋がることが多い。
そのフィラデルフィアを代表するプロスポーツチームと言えば、Philadelphia Eaglesだ。
日本ではアメフトはそれほどはメジャーではないが、アメフトはアメリカで断トツで人気があるスポーツだ。野球の比ではない。NFLの時価総額は、世界中のどのプロスポーツの時価総額よりも大きい。特にPhiladelphia Eaglesの時価総額は世界のプロスポーツのランキングで9位で、日本でも人気のNew York Yankees (10位)より実は上だ。

Philadelphia EaglesはNFLの中でも強豪の名門チームだ。フィラデルフィアは、アメリカでも特に熱狂的なファン文化を持つ都市の1つであり、ファンが相当に荒いことで有名だ。スーパーボウル優勝回数は2018年と2025年の2回。カンファレンス優勝は5回で、地区優勝は13回と、NFLを代表するチームだ。

アメフトが持つボディタックルの連続のスポーツという特性からは想像し難いが、Philadelphia Eaglesは世界のプロスポーツの中でも突出して自閉症の研究・支援・啓発に取り組んでいる。しかも、Eagles Autism Foundationという財団をも設立している。
https://www.instagram.com/eaglesautism?igsh=MXF1ZnR2ejh3aXB0cw==
Eaglesの元スター選手であるJason Kelce (世界的な歌手であるTaylor Swiftの義理の兄)の妻、Kylie Kelceが、上記のビデオで確認できるように、Eaglesを率先して自閉症の啓発に取り組んでいる。
私は、Philadelphia Eaglesのこの取り組みに、強い敬意を抱いている。Eaglesの取り組みは単なるチャリティではない。彼らは、自閉症というテーマに対して「本気で」向き合っているからだ。そして、それを数年前にInstagramで知った時、私は「これは“他人の話”ではない」と思った。
■ なぜEaglesはここまでやるのか?
Philadelphia Eaglesのオーナーの Jeffrey Lurie は、長年に渡り自閉症支援に関わってきた。何故か?その背景には、兄が自閉症という彼なりの個人的な強い動機がある。また、前述のKylieも、幼少期の隣人が自閉症であったことから、その特性に深い理解があると言う。
先日の投稿でも触れた通り、アメリカでは自閉症と診断される子供が急増している。自閉症はもう各家庭で取り組む話ではなく、アメリカ社会全体で取り組まなければならない問題なのだ。

しかし、ここで止まる話ではない。普通なら、「寄付はする、財団も作る、一応イベントもやる」で終わるものだ。
しかしEaglesは違う。フィラデルフィアの代表紙であるThe Philadelphia Inquirerの記事によると、2025年、EaglesのオーナーファミリーであるLurie家は、Children’s Hospital of Philadelphia とUniversity of Pennsylvaniaに対し、約5000万ドル(約80億円)を拠出し、フィラデルフィアに自閉症研究の中核拠点(Lurie Autism Institute)を設立したのだ。
これは単なる寄付ではない。分散していた研究・支援を「1つのシステム」に統合する取組みなのだ。普通の善意は、バラバラに存在する。病院は病院、大学は大学、支援団体は支援団体という風に。
それぞれが“良いこと”をしているが、繋がっていないがために、スケールメリットが出ないのだ。今回、Jeffrey Lurie がやったことは逆だ。構造を上から俯瞰して、統合したのだ。これは単に慈善ではない。社会の“設計”そのものを変える行為だ。
■ Phillyという都市の文脈
この話は、Philadelphia Eagles単体では成立しない。フィラデルフィアという都市が前提にある。フィラデルフィアの医療システムには独特の構造がある。エリート研究はUniversity of Pennsylvania (Penn)が担当し、世界最古かつ最大の児童病院であるChildren’s Hospital of Philadelphia (CHOP)がトップレベルの医療を担当、そしてTemple Universityが公共性とアクセスし易い医療の提供を担当するのだ。
この3つが同じ都市に存在している。そして今回、そこに巨大な文化重力と資金を持つPhiladelphia Eaglesが加わるのだ。
これが新しい巨大な"自閉症ケアのエコシステム”になる。つまり、つまり、今回のEaglesの取り組みは、チーム単体の善意ではなく、フィラデルフィアという都市全体の医療構造の上に乗っかるのだ。

■ Templeという存在
そして、この中にTemple University がいることが、私にとっては特別だ。Templeは私の母校だ。確かにTempleはPennのような華やかなIvy Leagueではない。しかし、Templeはフィラデルフィアの公共奉仕の核だ。より現実に近い大学だ。そこには、多様なバックグラウンドの学生、現実の社会課題、理想と現実の間にある緊張感があった。そして今、そのTempleがEaglesの自閉症支援のエコシステムに関わっている。これは偶然ではない。
■ あの頃の自分
正直に言うと、当時の私は自分の特性(ASD)を明確に理解していた訳ではない。ただ、こういう感覚はあった。「人と同じように動けない、無意味なことが苦痛、納得しないと動けない、1人で考える方が自然」といった傾向だ。でも、当時はそれが何なのかは分からなかった。
Templeで過ごした日々も、Eaglesを応援していた時間も、その時は全部バラバラだった。
■ 繋がった瞬間
それらが繋がったのは最近だ。Eagles Autism Foundationの取り組みをInstagramで知り、そしてこの記事を読んだとき、「あれ?」と思った。
EaglesがASDに本気で取り組んでいる。Templeがそこに関わっている。自分自身がその特性を持っている。全部、自分の中にあるものだった。その瞬間、バラバラだった点が一気に繋がった気がした。
■ 点が線になる
昔は意味が分からなかったものが、後から意味を持つ。なぜPhiladelphiaだったのか? なぜTempleだったのか? なぜ私はこの特性を持っているのか? 今なら分かる。それは、この構造を見るためだったのかもしれない。
■ Philly OSというもの
私はよく「Philly OS」「Temple OS」と言う。東海岸的な合理的で現実的でドライな考え方を指す。元からの特性なのか、フィラデルフィアにいたからなのかは不明だが、私にはこのOSが強く備わっている。フィラデルフィアで学んだことは、単なる思い出ではない。私の価値観の設計図 (architecture)になっているのだ。社会課題を直視する、個人の問題を社会の問題に変換する、そしてそれを構造として解決しようとする。Jeffrey Lurieが先頭になって、Philadelphia Eaglesという組織全体が取り組んでいることは、正にこれだ。
■ なぜ私は誇りを感じるのか?
なぜ私は、Eagles Autism Foundationの取り組みに誇りを感じるのか? 理由は1つではない。自分の大好きなチームが正しいことをしている。自分自身の特性が否定されていない。自分のルーツと繋がっている。そして、それにより全てに意味があったと感じている。私の全てが受け入れられている気がするからだ。
だから私は、こう思う。Philadelphia Eaglesを応援してきて良かった。Temple Universityで学んで良かった。この特性を持って生きてきて良かった。そして何よりも、この全てが、今、繋がったことが嬉しい。フィラデルフィアは、私が私自身でいることを快く受け入れてくれる場所なのだ。Philadelphia Eagles Autism Foundationを通じて、またフィラデルフィアがという街が大好きになった。
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