建築士としての《判断軸》について
―― 建築技術者として、何を基準に設計しているのか
1・ 導入 設計者の《判断基準》はどこに置かれるべきか
家づくりにおいて、多くの方が重視するのは「間取り」「価格」「デザイン」「立地」でしょう。
しかし、もう一つ見落とされがちな要素があります。
それは、
設計者自身が、何を“判断基準”として設計しているのか
という視点です。
思想なのか、技術なのか、芸術なのか、信仰なのか。
建築には多面的な側面があり、正解は必ずしも一つではありません。
今回は、建築士としての私自身の《判断軸》について、具体例を交えながらお話ししたいと思います。
※あくまで個人の立場と考え方です。
価値観の提示であり、正解の押し付けではありません。
2・ 建築家と建築士の制度的な違い
まず事実として整理しておきたいことがあります。
「建築家」という呼称には、制度上の資格定義は存在しません。
ですから、あなたが明日から建築家と名乗ることも可能です。
一方で「建築士」は国家資格であり、設計・確認申請において登録番号の記載が義務付けられています。
つまり制度的には、
建築家 → 職能的・思想的な呼称
建築士 → 法制度上の資格者
という整理になります。
優劣の問題ではなく、役割と制度の違いの話です。
この違いを理解した上で、目の前の設計者が
どの立場・どの軸で仕事をしている人なのか
を知っておくことは、施主側にとっても重要な視点だと思います。
3・ 「家相」という思想について
ここから少し繊細な話題に入ります。
私は以前、家相について強い関心を持ち、多くの書籍を読みました。
歴史的背景や思想体系としての家相には、一定の文化的価値があることも理解しています。
宗教や思想、信仰を否定する意図は一切ありません。
ただし、ここでの立場は一貫して「建築技術者として」 という視点です。
4・ 技術者としての判断軸
私自身の判断基準は明確です。
建築技術者として設計に関わる以上、「良い」「悪い」という判断は、
安全性
構造
環境性能
合理性
生活動線
維持管理性
といった技術的・科学的根拠に基づくべきだと考えています。
家相的な思想や占術を否定するものではありませんが、
それを設計判断の基準そのものに置くことには慎重であるべきだと思っています。
5・ 思想と技術の線引き
ある家相専門書に、次のような一文がありました。
「現在の日本において、私はそのように判断しています。」
この一文を読んだとき、私は強く印象に残りました。
それは、
「これは思想であり、個人の判断である」という明確な自覚があったからです。
思想として語るなら、そこに否定の余地はありません。
しかし、技術として語るなら、基準は変わります。
この線引きが、建築においてはとても重要だと感じています。
6・ 建築技術者としての私の立場
だからこそ私は、クライアントから明確に要望されない限り
家相を営業トークとして前面に出すこと
思想的判断を技術判断として語ること
には慎重であるべきだと考えています。
もし思想として語るのであれば、
それは「建築士」ではなく「思想を語る設計者」として語るべきだとも思います。
7・ 実験体としての例
ちなみに、我が家のキッチンは南西角にあります。
家相的には「火」に関する忌避が語られる方位です。
しかし我が家にとって、
採光・動線・生活動線・構造計画を総合的に判断した結果、そこが最も合理的な配置でした。
ですがそれは、
家相に対して抗ったのではなく、技術的判断として最適だったというだけの話です。
あなたはどのように判断しますか? という問いかけに、最終的にはあなたが判断をしないと、建築士さんは設計を開始できないのかも知れませんね。
8・ 判断軸を持つと言うこと
これは家相に限った話ではありませんが、
設計者にも軸があるべきでしょう。
もちろん施主にも軸があるはずですし、それが明白である方か好ましいと思います。
重要なのは、
その軸が何なのかを可視化できているか
だと思います。
技術軸
芸術軸
思想軸
信仰軸
どれが正しいかではなく、どこに《あなたの軸足》を置くかの問題です。
9・ 終わりに 選ぶと言う行為
家づくりとは、「設計者を選ぶ」という行為でもあります。
もちろん、ハウスメーカーという設計者の場合もあります。
地元の工務店さんという設計者もあるわけです。
ただ、図面や価格だけでなく、
その人は何を基準に判断しているのか
どの価値観で設計しているのか
どの軸に立って仕事をしているのか
そこを見極めることが、
本当の意味での「後悔しない家づくり」につながると私は思います。
今後のシリーズ動線として
今後の予定として、
1・土地選びに関する概論
2・新築に関する概論
3・メンテナンスに関する概論
を順に整理し、
その後、それぞれの各論に展開していく予定です。
建築で悩んでいる方々の「判断軸づくり」の材料になれば幸いです。
また、建築のプロの方からの賛同・反論も歓迎します。
議論を深めることで、建築に悩む方々にとって
より良い情報空間を一緒に育てていけたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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またお目にかかれますように。
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