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特養で100人近くを看取った作業療法士が見た、最期まで元気な人の共通点

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「森下打ったよ」

そう声をかけると、その方は微笑んだ。

亡くなる数日前のことだ。食事はもう摂れなくなっていた。手足には痛みがあった。でも耳はしっかり聞こえていた。だから居室でできるだけ野球の試合を流した。阪神ファンだったから、試合の経過を声に出して伝えた。「村上抑えてるよ」と言うと、また微笑んだ。

これが私の考える「最期まで元気な人」の姿だ。


「元気」とはどういうことか

完全に健康である必要はない。

身体的な元気とは、日常の質(QOL)を保つことだと思っている。自分の足で歩く、自分の口で食事を楽しむ、生活の基本的な部分において可能な限り自立できている状態。加齢に伴う衰えや病気を完全に防ぐことは難しい。でもそれを悲観するのではなく、受け入れてうまく付き合いながら日常を送るしなやかさも、身体的な「元気」の重要な要素だ。

精神的な元気とは、好奇心と繋がりを持ち続けることだ。ささやかなことに喜びや興味を見出せる好奇心が、生きる活力に直結する。誰かと笑い合い、感謝を伝え合える温かい関係性がある人は、精神的に非常に健やかで力強い。


最期まで元気だった人のこと

同級生の父親だった。パーキンソン病で手足の拘縮が進みながらも、認知機能はある程度保たれていた。

朝はメジャーリーグの話をした。大谷の話、山本の話。センバツ高校野球を一緒に応援した。職場でWBCの応援もした。パーキンソン病の特徴として、どうしても表情が乏しくなったり声が出にくくなったりする。でも野球を観ているときだけは違った。笑顔が増えた。いつもより会話が多かった。

亡くなる1週間前、急に手足の痛みと共に食事が摂れなくなった。原因はわからなかった。でも耳はしっかり聞こえていた。だから居室で野球の試合を流し続けた。「森下打ったよ」「村上抑えてるよ」と声をかけると、本人は微笑んだ。

4年間一緒にリハビリをした。2年間は歩行器で一緒に歩く練習をした。徐々に寝たきりになっていったけれど、何も変わらずその人らしく生きた。その笑顔が、最期まで元気な人の答えだと思っている。


早く弱っていく人に共通すること

一方で、入居後に急激に弱っていく方もいる。

共通しているのは生きる気力が乏しいことだ。好奇心がなく、人との関わりを避け、ただ時間が過ぎていくのを待っているような状態。そういう方は比較的早く弱り、在籍日数も短くなる傾向がある。

身体の衰えより先に、心が折れてしまう。現場で見てきた実感としてそう思う。


特養という環境が人に与えるもの

終の住処という言葉がある。在宅扱いにはなる。でも利用者さんにとって、特養は本当の家ではない。

病院から特養に入所するケースが圧倒的に多い。環境が変わることへの戸惑いは必ずある。それに伴って認知症が進行していく例も多く見てきた。

ただ、自ら望んで入所してくれた方もいる。ある意味不自由な自由の中で、楽しく暮らしている方もいる。

大事なのは特養という環境そのものではなく、その人自身が特養という環境でどう生活するかだと思う。どう生活するかはその人の課題であって、私たちはそれをサポートするのが仕事だ。


100人近くを看取って変わった死生観

人は必ず死ぬ。

特養で働く前は病院で亡くなるケースも多く経験した。でも死を身近に感じるようになったのは、特養で働いてからだ。今は死を恐ろしいものだとは思っていない。

その人にとって最後の1%が幸せなら、その人の人生は幸せだったのではないか。

だからこそ看取り期になっても、しっかりその人を見ていく必要がある。野球の試合を流し続けたのも、その信念からだ。


「元気に老いる」ために今からできること

現場から見えるリアルな答えを言う。

筋肉貯金をすること。 身体のケアは若いうちからの積み重ねが全てだ。老後に取り返しのつかない差になって現れる。

生きがいを持って日々を生きること。 流されるまま生きるのではなく、やりたいことを持って生活すること。大きな目標でなくていい。好きなチームを応援することでもいい。小さな積み重ねが「元気に老いる」ことへとつながっていく。

結局のところ、身体面と精神面の充足に尽きる。特養で100人近くを看取ってきて、行き着く答えはいつもそこだ。


あわせて読みたい・聴きたい

この記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。 「最期まで元気」というのは、単に身体が動くかどうかではなく、好奇心を持ち、誰かと繋がり続ける「心のあり方」なのだと、現場で多くの方から教わりました。

もし今、あなた自身やご家族の「これから」について、少しでも不安や考えるところがあるなら、こちらの記事もきっとお役に立てるはずです。

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  • 「特養で見た「老後が不安な人」と「不安じゃない人」の違い。100人近くを看取った作業療法士が伝えたいこと」

  • 「『最後の1%が幸せなら、その人の人生は幸せだ』特養で100人を看取った作業療法士が伝えたいこと」

  • 「特養で見た、「最期に後悔している人」と「していない人」の違い」

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