深夜のカラオケ大会|毎週ショートショートnote|夜行性の黒板消し
こんにちは、きのころです。
今週の「毎週ショートショートnote」のお題、「夜行性の黒板消し」という言葉を聞いて、私は驚きました。
私の研究によれば、そもそも黒板消しは、夜行性に決まっているからです。
彼らが昼間に見せる、あの、静かに粉を吸い取る姿は、実のところ仮の姿に過ぎません。というか、単に、眠っているだけです。授業という戦場において、彼らは持ち手によって上下左右に動かされながら、吸いたくもないチョークの粉を、体全体に吸い込んでいるのです。
月が昇り、静まり返った深夜の教室。黒板消したちは教卓からむくりと起き上がり、真っ黒な黒板へと帰還します。そして、昼間に「消した」はずの言葉たちを、一つひとつ丁寧に戻していくのです。
昨日消されたはずの、難解な公式。英語の文章。誰かの落書き。それらは月光を浴びて、白い残像として黒板に浮かび上がります。
翌朝、私たちが登校して目にする「うっすら白い黒板」は、単なる消し残しではありません。それは、夜な夜な記憶を吐き出している彼らの、夜の活動の痕跡なのです——
とまぁ、最初は、このように、しっとりとした情景を思い浮かべたのですが、その後に出てきたのは、もう少し、騒がしい光景でした。
黒板消したちが、夜な夜な、カラオケに興じている姿——
それでは、今週のショートショートです。
『深夜のカラオケ大会』
深夜の教室で、最初にマイクを握ったのは、
一番若い黒板消しだった。
「数学、いきます」
黒板に、昼間消された公式がぼんやり浮かぶ。
黒板消しは、チョークの粉を撒き散らしながら叫んだ。
「サイン!コサイン!タンジェント!YO!」
他の黒板消したちが合いの手を入れる。
「斜辺!対辺!隣辺!」
次は古文だ。
熟練の黒板消しが、しっとりと前へ出る。
「春はァあけぼのォォォ」
ド演歌である。
サビではチョークの粉の紙吹雪が舞った。
続いて、英語。
黒板に浮かんだ英文を見て、
リーゼントの黒板消しがシャウトした。
「ロックンロォォォル!」
黒板消したちは机を叩く。
カラオケ大会は朝まで続いた。
化学はテクノ。
社会はフォーク。
道徳はバラード。
そして、東の空が白み始めたとき——
教室の火災警報器が、突然鳴った。
ジリリリリリ。
黒板消したちが一斉に固まる。
一番古い黒板消しが、おそるおそる返事をする。
「はい」
火災警報器はこう言った。
「お時間10分前です。延長しますか?」
(410字)
黒板消しラッパー

黒板消し演歌の女王

黒板消しロックンローラー

田原にかさんの「毎週ショートショートnote」、
13回目の投稿です。
今週のお題は、
「夜行性の黒板消し」でした。
今回は、いつもと趣向を変えて、
「あとがき」を本編の前に持っていってみました。
(世界はそれを「まえがき」と呼ぶんだぜ ♪)
なんとなく、「カラオケ大会」の後に読んでいただく文章ではない気がしたんですよね(笑)
これからも、臨機応変に対応していきたいと思います。
<お知らせ>
先日発表となった「毎ショセレクション」で、
私の作品が【勘当本屋大賞】を受賞しました。
ありがとうございました。
本日は以上です。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
【毎ショセレクション】選出作品
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
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