ツクツクボウシは迷っている——夏の終わりの見極めと、もっと上手な歌い方について。
ツクツクボウシの声が聞こえると、
「夏も終わりだな」って思います。
9月に入って少しだけ、一瞬だけ涼しくなったときに、
庭でツクツクボウシの声を聞くこともあったんですが、
また、聞こえなくなってしまいました。
セミも、
「しまった、まだ早かった!」
とか思ったんでしょうか。
私は、庭でツクツクボウシの声がすると、
「それ撮影だ!」と勇んで、玄関のドアを開けるんですが……
ツクツクボウシって、セミの仲間の中でも、
とびっきりのビビりなんです。
ガチャッとドアが開いたら、
急に黙ってしまうことがしばしば……
あるいは、ピューッと飛んで、一目散に逃げてしまうか。
先日の話。
ドアを開けたら静まり返ったものの、飛んで行った気配はないので、
こちらも、息をこらしながら、声がした方に近寄りました。
まぁ、サルスベリの木だろう、と当たりをつけて探したんですが……

ぜんぜん見つからないので、サルスベリの花と実の写真を撮って、
部屋に戻ろうと、ふと横のブロック塀を見ると……

いました!
こりゃ、見つからんわ……

真横から、しっかり写真を撮らせていただきました!
それにしても、隠れるの上手いですね。
<きのころ心の俳句>
夕暮れに 息ひそめ合う 我とセミ
ツクツクボウシの名前は鳴き声に由来しているといいますが、
よく図鑑とかに載っている鳴き声は
「ツクツクホーシ」
です。
……こんな風に聞こえる人、多いんでしょうか?
私の耳には、いつも、
「オーシー、ツクツク」
に聞こえます。
もっと言うと、ツクツクボウシの鳴き声は、
鳴いている途中で変化していきます。
もっと上手な歌い回し、
もっと(メスの)心に届くメロディーを追求するように。
こんな風に、鳴き声が途中で変わる虫は、極めて珍しいそうです。
ツクツクボウシの鳴き声(完全版)
【私の耳にはこう聞こえるver.】
<開始>
ジーーー(小声)
<メイン>
オーシー、ツクツク
オーシー、ツクツク
オーシー、ツクツク
……(繰り返しながらだんだん早くなる)
<最後>
ウィーウォーウィ、
ウィーウォーウィ、
ウィーウォーウィーーーーーィィィ、ィ、ィ……
(沈黙)
……皆さんには、どう聞こえますか?
きっと、百人いたら、百人が違う聞こえ方をするんでしょうね。
この鳴き声、文豪や歌人には、また別の響きに聞こえるようです。
夏目漱石は「おしいつくつく」。
「惜しいつくづく」という意味を掛けました。
島崎藤村は「おうしいつくつく」。
赤ちゃんが「美味しいちゅくちゅく」と言っているようだと例えました。
平安時代にもすでに、「つくつくぼふし」の名で呼ばれていたそうですが、
その声は、自由に聞かれていました。
たとえば、藤原高遠の『高遠集』の中には、
「屋の端に、つくつくぼふしの鳴くを聞きて」として、
「我が宿のつまは寝よくや思ふらむうつくしといふ虫ぞ鳴くなる」
という歌が収められています。
妻が寝ているときに、つくつくぼふしが
「うつくし」(現代語だと「いとしい」に近い)と鳴いた、というのです。
こんな風に聞こえたら、
ツクツクボウシのこと、好きになっちゃいますよね!
これから、ツクツクボウシの鳴き声を耳にしたら、
「私のこと、うつくしって言ってるのかも」と思うようにしましょう!
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