初陣☆_06【熱きアツキ】【シロクマ文芸部】
夏休みだけあって、さいたまスタジアムには家族連れの観客が多く詰めかけていた。地元出身のアツキは、幼い頃に自分も父に連れられて、このスタジアムへ応援に来ていたことを思い出していた。
スタメンの輪に合流して、一緒にシュート練習を始めた。アツキはヤマトの動きを目で追った。無駄のないステップ、正確なトラップ、ためらいのないシュート。これがプロの世界だ。
練習を終えてロッカールームに戻ると、福田監督が檄を飛ばした。円陣を組み、キャプテンのヤマトが声を張った。
「いくぞっ!」
「おうっ!」
スタジアムに入場曲が流れる。スタメンの選手が入場したあとに続いて階段を登る。圧倒的な熱気を受けながらベンチへと向かう。
キックオフ。
前半はお互いの長所をつぶし合う拮抗した試合展開だった。ヤマトへのマークも徹底されていて、放ったシュートはわずか一本にとどまっていた。
さいたまダイヤは選手交代なしで後半を迎えた。相手チームは2枚替えを行い、サイド攻撃に厚みを増してきた。その交代策が効き、一方的に押し込まれる展開となった。攻撃の手立てを失い守備一辺倒になると、急激に体力が削られていく。
特にボランチは攻守に奔走し、徐々に足が重たくなっていた。同じポジションのアツキは、いつでも出場できるようにウォーミングアップを行いながらピッチを見つめる。
「アツキ、いくぞ」
後半40分。ついに福田監督から声がかかった。交代ボードにアツキの背番号が灯る。ピッチに入るとスタジアムの熱気が肌に突き刺さった。ゾクゾクした。
「アツキッ!全部、俺によこせっ!」
ヤマトが近づき、鬼の形相で指示を出す。プレー再開。アツキはなかなかボールに触れることができないまま45分が経過して、アディショナルタイムに突入していた。
アツキは見つけたスペースへ走り込むと、ゴールキーパーから相手の意表を突く、刺すようなダイレクトパスを受け取った。反転して前を向くと、ゴールに向かって突き進むヤマトが見えた。
迷わず前線へスルーパスを通した。ヤマトは軽くトラップしてディフェンダーをかわすと、完璧なタイミングでシュートを放った。
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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