英雄_07【熱きアツキ】【シロクマ文芸部】
目をつぶると、あの劇的なゴールがスローモーションで脳裏に浮かんだ。試合終了後、選手たちが場内を回ってくるのを待つ間、敦輝は何度もその瞬間を思い返していた。
…
アツキから受け取ったスルーパスを、ヤマトがオシャレにトラップした。
「打てーーーっ!」
「打てーーーっ!」
敦輝は父と一緒に叫んでいた。ヤマトが放ったシュートは、相手のゴールキーパーが一歩も動けないままネットに突き刺さっていた。
「うぉーーーっ!」
「うぉーーーっ!」
二人で言葉にならない声で咆哮をあげていた。スタジアムは一気に沸騰して、真っ赤に燃えていた。ヤマトはゴール裏に向かって両手を掲げ、駆け寄ってきたアツキが後ろから羽交い絞めにする。『さいたまダイヤ』は、アディショナルタイムの劇的なゴールで勝利をつかみ取ったのだ。
「すごい!すごい!すごい!すごいよ、父さん!」
「ああ、鳥肌が立ったよ!」
「ヤマトのゴール、すごかったね!」
「ヤマトもすごいけど、アツキのスルーパスは世界レベルだな」
ヒーローインタビューを終えたヤマトとアツキは場内を一周し始めた。敦輝はタオルマフラーを掲げて、二人がやってくるのをゴールシーンを思い返しながら待っていた。
観客に手を振りながら、二人は敦輝の目の前までやってきた。敦輝が無我夢中で手を振っているとアツキと目が合った。アツキは白い歯を見せて手を振り返してくれた。
「父さん!アツキが、アツキが僕に手を振ってくれたよっ!」
「そうか、よかったな」
「僕もいつか、このスタジアムでサッカーしたいっ!」
「おう、いつかアツキと一緒にプレーができるといいな」
(つづく)
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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