目覚めると_09【シロクマ文芸部】【オートリバース】
目覚めると、テレビの横にミニコンポはなかった…
ついさっきまで、そこにあったのに――夢の中では。
赤井から「黒田ん家で深夜ラジオが録音できたらいいのになぁ」と言われて以来、たびたび夢にミニコンポが現れるようになった。メタリックな銀色がピカピカに光っていた。やっぱりどうしてもミニコンポが欲しい。日に日に想いは強くなっていった。
誕生日が近づいたある日、僕はダメもとで父に「ミニコンポが欲しい」と伝えてみた。返ってきた言葉は「考えておく」という素っ気ないものだった。
…
誕生日を目前に控えた日曜日、父が「出かけるぞ」と僕を車に乗せた。どこへ行くんだろう?不安と期待が入り混じるなか、到着したのは大きなスーパーだった。店内を進み、父が向かった先は家電コーナーだった。
「欲しいのはどれなんだ?」
「えっ?ミニコンポ、買ってくれるの?」
ほんとに?ほんとにほんとっ!?嘘じゃないよね?嬉しさよりも、信じられない気持ちの方が大きかった。だから、何度も何度もほんとうに買ってくれるの?と確認したかった。だけど、しつこく聞くと父の機嫌を損ねてしまうので、僕はぐっと言葉を飲み込んだ。
前から目を付けていたミニコンポを指差そうとして、はっと父の目線が気になった。視線の先には値札があった。僕が欲しかった個々が分割しているセパレート型のミニコンポではなく、一番安い一体型のミニコンポの値札を見ていた。僕はゆっくりと一体型のミニコンポを指差した。
「これが欲しいのか?」
「…うん」
深夜ラジオを録音するためには、三つの機能が必要だ。一つ目はもちろん録音機能。二つ目は寝ている間に録音できるタイマー機能。
そして、三つ目はオートリバース機能だ。120分テープを使っても、A面からB面へ自動で裏返らなければ、A面の60分しか録音することができない。一体型のミニコンポは、この三つの機能をすべてクリアーしていた。
…
家へ帰ると、段ボール箱からミニコンポを取り出して、プラグをコンセントに差し込んだ。ウォークマンに入っていたカセットテープを入れ替えて、再生ボタンを押した。
ダイアモンドだね AHAH いくつかの場面
AHAH うまく言えないけれど 宝物だよ
ミニコンポのメタリックな銀色がピカピカに光っていた。
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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