また明日_10【シロクマ文芸部】【オートリバース】
「また明日」
「うん、また明日」
赤井がコサキンを録音した120分テープを、僕の教室まで持ってきてくれた。明日は僕たちが放送委員を担当する日だ。放送室でお互いの番組の感想を交わすのが、いつの間にか僕たちの決まりごとになっていた。
それまでの僕は、代わり映えのしない辛い日々を繰り返すのが嫌で嫌で仕方なかった。だけど、赤井と深夜ラジオについて語るようになってからは、明日がちょっとだけ楽しみだと思えるようになっていた。
僕は親に買ってもらった新しいミニコンポで『伊集院光のオールナイトニッポン2部』を録音して、赤井は『コサキン』を録音する。毎週テープを交換して、両方の番組を聴くのが習慣になっていた。
「武道館に行こうぜ!」
ある日、赤井から唐突に誘われた。ラジオで『コサキン』のイベントが日本武道館で開催されることが告知されたのだ。武道館に行ったことはないけど、屋根の上に大きな玉ねぎが載っていることは、爆風スランプの曲で知っていた。
でも、誘われたからといってすぐに行けるわけではない。まずは抽選で招待券を勝ち取らなければならないのだ。
以前、別の場所でイベントが行われた際に、スタッフは「招待券を送っても、実際に来るのは6割程度だろう」と踏んで、定員より多めに券を発行したらしい。ところが、当日は9割以上のリスナーが押し寄せて、会場に入れない人が続出したようだ。それほどまでにコサキンの人気は凄まじかった。
イベントの招待券を得るには、往復ハガキで応募することになっていた。僕は赤井と一緒に郵便局へ行って、往復ハガキを買った。その場で応募要領を書き込んでポストに投函した。ポストの前で両手を合わせて「当選しますように」と祈った。
九段下の 駅をおりて 坂道を
人の流れ 追い越して行けば
黄昏時 雲は赤く 焼け落ちて
屋根の上に 光る玉ねぎ
数日後、自宅にイベントの招待券が届いた。見事に当選したのだ!
次の日、学校に行って赤井の教室を覗いてみると、赤井は誇らしげに招待券を掲げて、クラスのみんなに自慢しているところだった。
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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