約束_13【シロクマ文芸部】【lpz.89】
眠れない夜を乗り越えて辿り着いた、ドイツ・ライプツィヒ郊外にある廃墟の研究所で、凌太とエリカは失踪した希実の痕跡を発見した。凌太はその痕跡から『256番のロッカー』に手掛かりがあると確信したが、追手であるペトロフ・コネクションの魔の手がすぐそこに迫り、二人は地下室につながる階段を駆け下りていった。
凌太とエリカは研究所の地下を二手に別れて入口を目指していた。上階から足音と怒鳴り声が聞こえるが、地下は静寂に包まれていた。
凌太は途中で足を止めた。更衣室を見つけたのだ。迷わずなかに入るとロッカーがずらっと並んでいて、番号が振られていた。
「256、256…」
焦る気持ちを抑えながら探していたそのとき、更衣室の奥でかすかな物音がした。凌太がスマホのライトを向けると、巧妙に隠されている簡易シェルターがあった。
凌太は警戒しながら近づいた。あともう一歩で扉に手が届きそうになったところで、シェルターの入口がわずかに開いた。なかから現れたのは、小さなナイフを構えた、埃まみれの女性の姿だった。
「ち、近寄らないで!」女性はかすれた声で警告した。日本語だった。
「の、希実?」
警戒していた希実の瞳は凌太の顔を見た途端に大きく見開かれた。その表情から、すべての緊張が崩れ落ちた。
「りょ、凌太なの?」
それは、間違いなく希実の声だった。彼女は、凌太を敵と勘違いして、この廃墟の地下で、簡易シェルターに身を隠していたのだ。凌太は希実が持っているナイフをそっと払い、彼女を強く抱きしめた。希実の瞳から大粒の涙がこぼれた。
「もう大丈夫だ。俺が来たから」
しかし、感動的な再会はすぐに中断された。階段を降りてくる足音が聞こえ、怒鳴り声が響いた。
「早く逃げよう」
「待って凌太。ロッカーよ。256番のロッカー。ギド・エンゲルスの居場所を解くカギが残ってるのよ」
幸運にも探し当てることができたロッカーの前に立ち、希実が鍵穴に鍵を刺そうとしているのだが、手が震えてなかなか入らない。見かねた凌太が鍵を受け取って開錠すると、扉を開いた。中には封筒が入っていた。
廊下から足音が近づいてくる。
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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