思い出の_12⭐【バッケン】【シロクマ文芸部】
思い出のなかに浸っていた。
惑星ガイアにいる息子のシオンと交信を終えたカイトは、スマートフォンのおすすめ画像に目が留まった。それは、カイトが幼い頃に暮らしていた惑星アースでの写真だった。
写真の中では、幼いカイトが砂浜で無邪気に笑っている。背景には色鮮やかな青い海とどこまでも広がる青い空が写っていた。スペースコロニーの人工的なビーチではなく、本物の海だ。アースで過ごした日々が懐かしく、胸にこみ上げてくるものがあった。
博士号を取得し、大学で社会人として働き始めた矢先、あの忌々しい戦争が始まった。とある大国の指導者が放った一発の核ミサイルが引き金となり、核の応酬が繰り広げられた。多くの命が奪られ、アースは生き物が住めない不毛な惑星と化してしまった。カイトの家族も、この戦争で命を落とした…
カイトはそっとスマートフォンを閉じると資源省に向かった。シオンが探索中の惑星ガイアに、水素吸蔵合金の原料となるダウニウムが豊富にあることを報告するためだ。
報告を受けた資源省は、早速担当者をガイアに派遣し、ダウニウムのサンプルを入手した。
ガイアでは核融合発電はまだ開発されておらず、主なエネルギーは原子力と火力発電だった。近年では自然エネルギーも積極的に活用されており、山の斜面を切り開いて大量の太陽光発電パネルが設置されていた。
ダウニウムは電気伝導率が高く、一般的には電気ケーブルとして利用されている。太陽光発電パネルは人里離れた僻地に設置されているため、人目を気にせずダウニウム製の電気ケーブルを回収することは容易だった。
資源省では、ダウニウムを使って水素吸蔵合金の試作品を作成した。結果は、従来の5倍以上もの水素吸蔵能力があることがわかった。更に配合次第では10倍以上になる可能性も秘めていた。
その頃、アースの国防省では、宇宙軍によるガイア侵攻案が国会に提出されようとしていた。
それっぽいフィクション(SF)のショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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