生成_19【シロクマ文芸部】【lpz.89】
洗濯機のようなプロテクトサーバーがフル稼働し始めた。サイバー攻撃の元凶である『レプロ』を停止させためのマスターキーコードの生成が始まった。
サーバー室の鉄扉が、外部からの激しい衝撃音と共に歪み始めた。ペトロフ・コネクションが侵入しようとしていた。
「もうすぐよ、凌太!マスターキーコード生成完了まで、あと30秒!」
希実の表情は極度にこわばり、その目はノートパソコンの画面に釘付けだった。凌太は周囲を見渡し、室内に残されていた古い金属製のロッカーを扉の前に押しやった。わずかな時間稼ぎにしかならないが、他に手はなかった。
10秒を切ったところで、扉は完全に破壊され、二人の男が雪崩れ込んできた。彼らは凌太と希実を一瞥するや否や、希実のノートパソコンに向かって突進してきた。
凌太は手前の男の足元に体当たりして動きを止めた。しがみつく凌太を振り払おうと、男は激しく抵抗する。その隙に、もう一人の男がノートパソコンに手を伸ばした。
「させないっ!」
希実は体を捻り、男の手を払いのけた。その背後から、うなり声を上げてゲルト・エンゲルスが入ってきて、男を羽交い絞めにした。
体勢を戻した希実がノートパソコンに目を落とすと、画面に警告が表示されていた。
「外部からの妨害コード!?ペトロフ・コネクションがハッキングを仕掛けてきたわ!」
画面上ではマスターキーコードの生成がフリーズし、進捗を示すバーが完全に止まっていた。
「希実、どうすればいい!」
「凌太、時間を稼いで!このプロテクトサーバー自体に、彼らの妨害コードを打ち破るためのトラップが仕掛けられているはず!直接アクセスするわ!」
希実は深く息を吸い込み、驚異的な速度でキーを叩き始めた。それは、セキュリティエンジニアとしての本能に導かれた動きだった。希実はペトロフ・コネクションの妨害コードにカウンターを仕掛けた。
「『リプロ』は悪を打ち破るためにあるっ!」
希実は強い意志を込めて叫んだ。ノートパソコンが熱を帯び、ペトロフ・コネクション側のハッキングを弾き飛ばした。同時に、フリーズしていたマスターキーコードの生成が、最終段階へと加速した。
「コード生成完了!」
希実は生成されたマスターキーコードを、あらかじめ準備していたユウヒ社のシステムへ向けて緊急送信した。送信完了を確認すると、ノートパソコンのケーブルを素早く引き抜き、ペトロフ・コネクションの侵入経路を完全に遮断した。
希実が勝利を確信したとき、複数のサイレンの音が響き渡っていた。サーバー室の男たちが、その音に顔を曇らせた。彼らが凌太たちを捕らえるべきか、逃走すべきか迷った、その一瞬の隙だった。警察官たちがサーバー室へなだれ込み、素早く男たちを拘束した。事前に警察へ通報していたのは、エリカだった。
…
日本。ユウヒ社。
マスターキーコードを受信したユウヒ社のシステムではサイバー攻撃が停止し、会社の危機はようやく去った。
しかし、希実の無実を証明するのは、これからだった…
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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