緊張☆_02【熱きアツキ】【シロクマ文芸部】
夜店から漂ってくるような匂いがすると思って振り返ると、ヤマトがクラブハウスに隣接するグラウンドの観戦スタンドに座って、なにかを食べていた。
「おーい、アツキ」
「なにしてるんですか?ヤマトさん」
「一緒に食べるか?たこ焼き」
「な、なんで、たこ焼きがあるんですか?」
こわばっていたアツキの顔が、少しほぐれたような気がした。練習が終わったあと、明日の試合のベンチ入りメンバーが発表された。自分の名前が呼ばれたときは流石に震えた。ついにこの場所にたどり着いたのだ、という実感が湧き上がってきた。
「さすがのアツキ様も緊張しているのかな?」
「違いますよヤマトさん、武者震いってやつです」
気軽に声をかけてくれたヤマトは、チームの精神的支柱であり、アツキの憧れの選手でもあった。
アツキは中学時代に怪物と呼ばれ、高校サッカーでは埼玉県に数十年振りの優勝をもたらした。その活躍が認められて、幼い頃から夢見ていた『さいたまダイヤ』にスカウトされたのだ。
しかし、入団してみるとプロの世界はそう甘くはなかった。スピード、フィジカル、判断の速さなど、どれをとってもレベルが高い。それでも、全く通用しないとは思わなかった。将来、欧州5大リーグで活躍するのがアツキの夢なのだ。ここでビビッてなんかいられなかった。
今日の練習中、控え組のビブスを渡された時点で、明日の試合がベンチスタートになることはわかっていた。たとえ数分でもいい。あのスタジアムのピッチに立ちたいと強く願っていた。
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートして頂いたら有料記事を購入します!