開始_01【熱きアツキ】【シロクマ文芸部】
水たまりが残るグラウンドで、佐藤敦輝はサッカーボールを追いかけていた。ここのところ、ずっと雨続きでモヤモヤしていたのだ。
サッカー好きの父の影響で、物心ついたときにはボールを蹴っていた。小学3年生から入団できる近所のサッカー少年団に入ったのも自然の流れだった。コーチの方針は勝ち負けよりも楽しむことを優先していて、ボールをたくさん蹴ることができる。練習が終わると父が迎えに来てくれた。
「どうだ敦輝。楽しかったか?」
「うん!今日、ドリブルで抜いてゴール決めたんだっ!」
「そうか、すごいな!」
「ヤマト選手みたいな、すごいシュートだったんだよ」
ヤマトとは父が応援している『さいたまダイヤ』のエースストライカーだ。
「そうだ、スカパーで見るんじゃなくて、スタジアムに行ってみるか」
「うん!行きたい!行きたいっ!」
「次の試合はな、ヤマトだけじゃないぞ。アツキっていう凄いルーキーがベンチに入るかもしれないんだ」
「アツキ?僕と同じ名前だ!」
「ああ。去年、優勝した地元の高校から鳴り物入りで加入したんだ」
「へえー、すごい選手なんだね」
興奮気味に語る父と同じくらいワクワクした。自分と同じ名前の「アツキ」という選手。その響きだけで、まだ見たことがないスタジアムへの期待が胸の中で熱く広がっていった。
ショートストーリーをつなげて連載中です。毎週金曜日頃投稿予定です。目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
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