『大人は分かってくれなかったし、誰も分かってくれない』と思う気持ちと言葉にすることの間
あなたは「誰も分かってくれない」と感じたことがありますか?
大人は分かってくれない。
話の通じない大人がいる。
確かにそうかもしれない。
1
キレる17歳。2000年頃話題になりました。凶悪事件を私も友人も起こしていないけど、もし少年時代にマシンガンが手に入るなら、撃ったのではないかと思うくらい、多感な時期は激怒したこともありました。
だから、多感な時期はキレても不思議がないと考えています。
私の場合は、銃刀法や倫理以前に、言葉にする方が話が早かったから、結果的に凶悪事件と無縁でした。また、自分の行動をシミュレーション出来ることの不自由さと、見えるからせずに済んだことを両面、経験しました。
2
10代後半くらいは、まだ知らないことや経験したことがないことが多い。そのため前提や文脈を知らないからこそ、本質的な質問をすることがあります。
例えば世界に矛盾がある。「国際法があっても、世界情勢を見れば話が違う。我々は約束を守ることを教えられたのに、守られない現実がある。なぜ?」
大人は答えられない。それは、10代後半の方を軽く見ているからではなく、誰も説明できないから。仮に説明できても解決は出来ない。だから、生活に集中している。家庭や仕事の責任も重い。
大人は、胸を貸し、あなたと向き合うことの重要性を忘れるくらい、日常ですり減っているのかもしれない。自分もかつて、大人になる時に力を借りたのに、最初から大人だったかのような顔をして暮らしている。
3
個人的な思い出を話します。成人式は、地元の中学校のクラスメイトと会いたくないから行きませんでした。
その頃、事務系の夜間バイトをしていて、そのオフィスの偉い人が、「今年、成人?」と気にかけてくれて、おめでとうと祝ってくれたことが、私にとっての「成人式」です。その方は、背広を脱いでおり、青系統のノリの効いたドレスシャツを着た背筋は真っ直ぐで、ゴツゴツしてひんやりとした手のひらをした人でした。
お金が欲しいのではなく、特別扱いされたいのでもなく、一人の人間として対等に扱ってもらえて、「ようこそ大人の世界へ」と認めてもらえた気がした。その偉い人の意図は分かりません。気まぐれなのか、ずっとそうしてきて、彼が若者の頃も、そうしてもらったのか分からない。
いずれにせよ、私は嬉しかった。
4
大人とか子どもとか、単純に分類できないですよね。例えば、信頼に足る面倒見の良い5歳もいれば、信頼できない責任転嫁しがちな60歳もいるでしょう。あくまでも極端な例だけど、様々な人が我々の社会の仲間です。
5
5-1
そして、「大人は分かってくれない」を抽象的に深掘りすると、そもそも自分が自分をどこまで理解しているかを問えます。
5-2
世界のどこへ行っても、それは宇宙空間で重力が地球と異なるとしても、光を使うなら影は出来るし、我々の理性や客観視が機能する間は自分から逃げることは出来ません。
5-3
比喩的に、「肉体は牢獄と似ている」と私は言うことがあります。エクトプラズムみたいに自分から出ていくことは、出来ないと考えているからです。スピリチュアル的なことや、信仰体験の否定ではなく、依存に陥らないようにする個人的な戒めです。
中島らもさんが「自失への希求」と表現されました。お酒やドラッグに溺れる大きな動機が、これだと私は思っています。
つまり、一時的に理性を機能しにくくしても、自分からは出られない。解決策にはならないと考えています。自分の行動をシミュレーションすることの、一例です。
5-4
そんな「自分を見る自分という、正気と狂気の間」を生き抜く必要のある我々は、世代の違い以前に、自分も他人も理解することに限界があることが分かります。
だからこそ、バイトの偉い人が気にかけて祝ってくれたことが、私の胸に響きました。何もかも豊かに分かり合えるのではなく、限られたことしか出来ない人間なのに、それでも敬意を払われることは、嬉しいことでした。
6
大人は分かってくれない。
話の通じない大人がいる。
確かにそうかもしれない。
そこで、冒頭のマシンガンの例のように、言葉にして表現することを勧めます。誹謗中傷やプライバシー侵害に気をつけて、何がどうむかつくのか、不愉快とどう異なるのか、しっくりくる言葉を探そう。
言葉にすると、その瞬間、あなたから「それ」は表現として切り離されますよね。窯の火で感情を釉薬に変える陶芸作家が、器を割るみたいに、あなたも納得いくまで同じことを繰り返し表現する権利があります。
権利です。
義務ではありません。
言葉にせず、表現しないことは自由です。私も全てを言葉にできるとは考えていません。だけど、あなたの中でリフレインするテーマが、怒りや悲しみや矛盾があるはずだから、言葉にしたい時に言葉にする力を磨いておくことは、損はしません。
こうすることで、どんなに大人は分かってくれなかろうと、似たものと出会うからあなたの友達は言葉にできる人が多くなる。そして、あなたはパートナーと言葉でも非言語でも豊かにコミュニケーション出来る人になれるかもしれない。
大人は分かってくれない。
話の通じない大人がいる。
確かにそうかもしれない。
でも、あなたはそうじゃない。
自分をデザインできる人を増やそう。
時間をかけて、少しずつ。
このエッセイを書くキッカケのSubstackと、Medium
この記事を英語で書いて、今回のエッセイが生まれました。
あと、共通するテーマでレオンの映画評書きました。こちらはMedium。
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