#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第4章|How To Make Natto-Champion|「おかめ」の回し者!? 決戦の亀戸中央公園!
2000年8月12日(土)
東北新幹線で盛岡駅を出発して約3時間。
上野駅で下車して山手線に、秋葉原駅から総武線に乗り換え、生まれて初めて亀戸駅に降り立った。
駅前は容赦ない熱気に包まれて、まだ10時前なのに温度計は31℃だった。
盛岡の朝より5℃以上も暑い東京の夏に、長袖シャツを選んだ自分を早くも後悔し始めていた。
改札を出て北口に向かうと番組スタッフが目印の旗を持って待っていた。
「おはようございます。蒲生です。
今日はよろしくお願いします」
と番組スタッフにあいさつすると、スタッフの脇に立っていた青年二人のうち一人が話しかけてきた。
「がんもさんですね!
初めまして!
お疲れ様です」
納豆学会の三井田さんだった。
彼には前日、当日の服装をメールで伝えていた。
「はじめまして!三井田さんですね!
やっと会えましたね」
ウェブサイトを通じて何度もメール交換していたが、お目にかかるのは初めてだった。三井田さんはとても8歳年下とは思えないほど、礼儀正しく落ち着いていた。
「今朝、新潟から来たんですか?」
「僕は柏崎から、始発電車で来ました」
「こちらは北海道の古本さんです」
番組スタッフがもう一人の青年を紹介してくれた。
「はじめまして。がんもこと蒲生です。
岩手の盛岡から来ました」
「はじめまして。古本です。
僕は昨日札幌から飛行機で来て、前泊してました」
軽く自己紹介していると、
「おーい!がんも!!」
と叫ぶ声が聞こえたので、振り返ると、小柄な30代男性が手を振っていた。
「おーー!ぽち!横浜から、よく来てくれたね」
「ぽち」こと下田さんは「子育てチャット」のオフ会で2回会ったことがあり、「納豆開発委員会」の委員でもあった。
「居ても立っても居られないから、応援にきたよwww
マジでTVチャンピオンで出るんだね!スゲー!」
下田さんはまるで自分の事の様に興奮していた。
すると、女性二人も後から声をかけてくれた。
こちらは「納豆開発委員会」の都内在住の委員で、初顔合わせとなった。
「がんも委員長ですね?お会いできてうれしいです」
「応援してます。頑張ってください」
仲間たちから声援を受けて、さらに闘志が燃てきた。
「ありがとう!まずは第1ラウンド突破頑張るよ」
「あと二人もうすぐ着く頃なんですが…」
番組スタッフが不安そうに時計を見た。
「あと二人はどこから来るんですか?」
「どちらも東京の方です」
「全国納豆王選手権」と言っても、結果的に西日本出身の人は一人もいなかった。
しかし納豆の消費量から考えれば、仕方がないことかもしれない。
9:55になって、男女二人がほぼ同時に現れた。
「おはようございます。
遅くなって申し訳ございません。
くめ納豆の高野です。
今日はよろしくお願いします」
と言いながら、高野さんが名刺を配りながら全員にあいさつした。
高野さんは東京出身で、なんと茨城の納豆メーカー「くめ納豆」の東京営業所勤務だった。
(おいおい、マジかよ。納豆愛好家たちが集まるオフ会気分でいたら、納豆の営業マンの『プロ』が混ざっているぞ……!)
しかも「くめ納豆」の社員なのに、苗字は業界最大手のライバル会社「タカノフーズ」と同じ高野ときた。
(おいおい、まさか『おかめ納豆』の回し者じゃないだろうな……!?)
緊張のあまり、おかしなツッコミが脳内を駆け巡り、僕は思わず苦笑いしてしまった。
そして紅一点の女性は茨城出身で東京の広告代理店勤務の野口さんだった。
出場者4人は20代で、僕だけが30代で最年長だった。
応援団の前ではこの戦いに負けるわけにはいかなくなった――。
「みなさんお揃いなので、ロケバスに乗ってください。
第1ラウンド会場の亀戸中央公園までご案内します」
とスタッフに促され、我々5人はマイクロバスに乗り込んだ。
「僕たちは電車で現地に向かうよ」
と下田さんが言うと、東武線の改札に向かった。
応援団3人とは一旦分かれて、参加者は戦場へ向かった。
バスに乗り込むとそれまで和気あいあいとしていた空気が一変した。
誰も口を開かず、バスは「TVチャンピオン」という戦場に赴く、高機動車のようで、一気に緊張が張り詰めた。
亀戸駅からバスで3分足らずで亀戸中央公園に到着した。
公園の一角にひときわ人だかりがあり、そこは第1ラウンドの「全国納豆利き豆勝負」の会場だった。
スタッフからルールの説明を受けた。
①納豆のトレイを開け、添付の調味料を混ぜ、かき回す。
②ごはんの上に納豆を掛けて、完食したら駆け出す。
③50m先のパネルから、食べた納豆の銘柄を選び、早押しで回答する。
④2問正解で勝ち抜けし、1名が脱落となる
パネルには100銘柄が貼られているというが、まさか事前アンケートにあったあの納豆100銘柄がそのまま出題されるのか?
開始前のため幕で隠されているが、その数とパネルの大きさに圧倒され、背筋がゾクっと寒くなった。
スタッフから全員にゼッケンが配られた。
僕が青いゼッケンを身に着けたころで、応援団も到着した。
「ここがTVチャンピオンの戦いの場か!
お?がんもは青のゼッケンだな」
応援団長の下田さんの声と同時に、歓声が上がった。
人だかりの向こうから現れたのは、ダチョウ倶楽部の寺門ジモンさんだった。
ん? TVチャンピオンのMCといえば、あの中村ゆうじさんじゃないのか……?
いつもと違う雰囲気に、何が起こるか分からない空気が漂い始めた。
「さあ、始まりました!TVチャンピオン
第1回 全国納豆王選手権ー!」
ジモンさんの野太い声が公園に響き渡る。応援団の熱い声援を受けながら、僕の胸は、期待と、それを上回る圧倒的なプレッシャーで高鳴り始めていた。
この日は土曜日だけど、僕の頭の中で、ドリカムの『決戦は金曜日』が爆音で鳴り響き始めた。
心臓を落ち着かせるため、手のひらに「大丈夫」と、3回なぞって飲み込んだ。
近づいてくる。ついに始まる。僕たちの決戦の土曜日が――!
第1章はこちらからどうぞ
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