#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第10章|How To Make Natto-Champion|激突10点問題!一瞬の迷いと勝負の明暗
続いて三井田さんが選択したのは、ノンセクションAの10だった。
再びクロッシュでフタをされたトレーがテーブルに置かれた。
「この中に納豆の容器だけが入っています。
どこのメーカーか当ててください。
行きますよ。よーい。スタート!」
合図と同時にクロッシュを急いで開けた瞬間、風圧で納豆容器が飛び出した。
咄嗟に伸ばした左の指先が虚しく空を切り、視界の端で、白い容器がまるでスローモーションのように床を転がっていった。
しかもその容器は裏返しになってしまい、特徴を見極めることができなかった。
(シマッタ!)
床に落ちた容器を慌てて拾い上げようと、席を立った次の瞬間、誰かがボタンを押した。
ピンポーン!
(また三井田さんか?)
振り返ると、先にボタンを押したのは、くめ納豆の高野さんだった。
「東京の保谷納豆」
「高野くん!正解です!
どこで気づきました?」
「天面に『炭火造り』って刻印がされている容器は
保谷納豆さんのオリジナルです」
さすが納豆メーカーの営業マン。お膝元の東京のメーカーなら、詳しいはずだ。
しかも高野さんは会社の代表だけでなく、納豆業界の代表として出場しているのだから、負けるわけにはいかない。
ただ僕の脳内データベースにも「保谷納豆」はあったが、風圧で容器が飛ばされ、刻印が確認できなかったのが不運だった。
そして高野さんが選択したのは「映像・音」の10。
「それでは、『映像・音』の10点問題!
正面のモニターに映し出されるビデオの映像を見ながら、
どこのメーカーの何という納豆かを当ててください。
よーい!スタート!」
ビデオが流れ始めると、納豆の外装の一部がどアップになった静止画像だった。
身を乗り出してモニターを見ていると、画像はゆっくりとズームアウトすると、「宮川」の文字が見えた。
あ!あのメーカーの納豆だ!
でもどっちだ?どっちの納豆だ?
脳内データベースがスパークしたが、ボタンを押す手が一瞬止まった。
ピンポーン!
次の瞬間、先にボタンを押したのはやはり三井田さんだった。
「おーーっと、三井田さんがまた正解するのか?!」
「三重県、奥野食品さんの『宮川村のきゃらぶき納豆』」
____ブッブーーー!
「残念!なんとここで三井田さんがお手付きだ!」
ジモンさんがビックリした表情を見せた。
(それなら、こっちだ!)
ダダダダッ!
と、すぐにボタンを連打した。
ピンポーン!
「ここでついに蒲生さん!
答えをどうぞ!」
「奥野食品さんの『森の番人』!」
脳内データベースでは二者択一だった。
三井田さんが外したので、こっちしかなかった。
「正解!
蒲生さんも10点ゲットで、
高野さんに追いついたぁ!」
「蒲生さん、三井田さんも奥野食品さんの納豆だとわかっていけど、
その違いはなんですか?」
「三重県宮川村産の大豆を使った納豆で、
『森の番人』はすだれで包まれていて、
『きゃらぶき納豆』はきゃらぶきの佃煮が添付されたトレーの納豆です」
どちらの納豆も第1ラウンドで正解した「ブラック伯爵家」と同様、奥野食品からネット注文していた。
「宮川」の文字だけで賭けに出た三井田さんの痛恨の勇み足だった。
どんな形であれ、僕もなんとか1問正解したので、急に肩の力が抜けた。
____なお宮川村は2006年に大台町に吸収合併されている。
そして僕が次の問題を選択する番になった。
10点問題があと1つ残っていたので、
「ノンセクションBの10でお願いします」
とコールした。
同時に問題のパネルが抜かれた瞬間、言葉にできない爽快な気分になった。
「続いて、口頭問題です!」
ジモンさんが問題文を読み始めた。
「先ごろ、ある有名ミュージシャンがコンビュニ…コンビ、ニ…」
ジモンさんは少し噛みかけ、一瞬の間ができた。
ピンポーン!
まだ問題文を読み終わらないうちに三井田さんがまたしても、瞬殺でボタンを押した。
(マジか!?まだ問題文の途中だぞ!?)
呆然とする僕をよそに、三井田さんは自信たっぷりに笑みを浮かべた。
「このあとの問題の続きは、
『コンビニエンスストアのサークルKと共同開発した納豆は何?』
とおっしゃると思いますので、答えはTMナットワーク!」
「三井田さん!お見事!」
あの小室哲哉氏が率いる音楽ユニット「TMネットワーク」がFMの番組の中で、スポンサーだったサークルKと共同開発した3個パックのカップ納豆だった。
当時サークルK(のちにファミリーマートに吸収合併)は中京圏がメインのコンビニで、茨城や岩手にはなかったので、全文読まれたところで手も足もでなかった。
10点問題5問が全て終了した段階で、三井田さんが30点、高野さん10点、そして僕も10点。
完全に三井田さんが1馬身差をつけて独走態勢に入っていた。
しかし、勝負の神様はまだ誰にも微笑んでいない。
ここからはワンチャンスで全員に大逆転の権利が与えられる、運命の「20点問題」――本当の地獄は、ここからだった。
第1章はこちらからどうぞ
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