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#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第9章|How To Make Natto-Champion|0.1秒の絶望──五感の化け物との戦い

コンコンコン___

ノックする方へ近づいてみると、

「三井田です。がんもさんまだ起きてますか?」

声の主はさっき別れたばかりの三井田さんだった。

「今、開けます」

すぐにドアを開けた。

「亀戸駅の近くに納豆料理が食べられる居酒屋があるみたいなので、
 ちょっと行ってみませんか?」

と、呑みのお誘いだった。
棚ぼたで決勝ラウンド進出できたのは、ラッキーだったので、明日はとことん楽しもうと思い、二つ返事で夜の亀戸の街に二人で繰り出した。

しかし、今思い返せば、食べログやホットペッパーなどが無い時代、彼はいったいどこでそんな情報を集めていたのだろう。

21:30にお店に着くと、席は半分空いていた。
生ビールでお互いの健闘を労いつつ、納豆の包揚げや納豆オムレツなどをつまみに、この日の戦いを振り返った。

ところで、三井田さんって本職は何しているの?
今更ながら彼のプロフィールが気になった。

「最近までは柏崎原発の職員だったけど、
 退職して今は妹と二人で納豆専門の料理店の開業準備中だよ」
「調理師免許は持ってるの?」
「それは妹がね…
 僕は経営担当で…」
「つまり、納豆そばや納豆鯛めしは、
 開業前の試作品ってこと?」
「そんな感じかな」

三井田さんは笑いながら、納豆オムレツを頬張った。
なんと20代で脱サラして兄妹二人で飲食店を始める予定だという。

「ところで明日の決勝は神田明神が会場らしいけど、
 なんで神田なのかな?」
「神田明神の傍に天野屋ってお店があって、
 江戸時代から『芝崎納豆』が作られてる老舗なんだよ」
「へー、さすが納豆学会の会長、なんでも知ってるね

「でも、明日の天気は雨の予報なんだけど、
 どうなるんだろうね」

等と、納豆料理に舌鼓を打ちながら、二人で納豆談義を2時間愉しみ、宿に戻るころにはポツリポツリと雨が降り始めた。


翌朝、朝6時に目を覚ますと、雨は止んでいたが、7時に三井田さんと朝食を食べるころには再び本降りの雨になった。
「神田明神の中で実施するのかな?」
「たぶん会場変更かもね」

9時になって、番組スタッフが迎えに来た。
「急遽会場が変更になり、貸スタジオで実施します」
「あぁ、やっぱり…」
そしてロケバスに乗ると、
「おはようございます」
既に乗っていた高野さんが挨拶した。
「今日もよろしくお願いします」
「今日は楽しく頑張りましょう」
まるで修学旅行の気分でホテルを出発した。

走ること20分で貸スタジオのビルに到着したが、
東京のどこなのかさっぱり分からなかった。

(ここが決勝の場所か…)

ビルの中に案内され、前日の調理実習室と同じ広さくらいのスタジオだった。もう少し、派手な舞台かと思ったが、急ごしらえの殺風景なスタジオは天気のせいもあってか、異様にムシムシした空気が漂っていた。
準備に追われる撮影スタッフがピリピリしていて、カメラや照明を向けられた僕たちへの視線は第2ラウンド以上に威圧感があった。

前方のひな壇の上ある長テーブルと椅子へ、僕たちはスタッフに案内された。

(こんなところで?)

席に着くと、スタッフから決勝ラウンド「超難関納豆カルトパネル勝負」のルールの説明を受けた。

  1. 「味」「映像・音」「加工品」「ノンセクションA」「ノンセクションB」の5つのジャンルから出題

  2. 各ジャンル10点、20点、30点の3問、全15問

  3. その問題を正解した合計点数でチャンピオンが決定

「さぁいよいよ決勝ラウンドの戦いが始まります!
 1問目は私が選ばせてもらいます。
 では・・・味の10からスタートです!」

そしてMCのジモンさんが宣言すると、目の前のパネルから味の10が外された。

すると目の前にクロッシュでフタをされたトレーがテーブルに置かれた。

「この中にある納豆はどこのメーカーの何という商品か当ててください!」

(第1ラウンドと同じ競技か?
 走らないだけマシだな…)
両手をテーブルの上に置き、ジモンさんの合図を待った。

「よーい、スタート!」

合図と共にクロッシュを開けると、目に飛び込んできたのは
小皿の上に納豆が一粒?!

ピンポーン!!

わずか0.1秒でボタンを押したのは、三井田さんだった。

(嘘だろ?食べてもいないし、ニオイも嗅いでいないのに)

「三井田くん!答えをどうぞ!!」
「朝日フレシアさんの『金のつぶ におわなっとう』」
「___三井田くん!___正解!!」

(マジか!見ただけで分かるなんて!!)

「どうしてわかりました?」
ジモンさんは興奮しながら三井田さんに質問した。
僕もその理由を知りたかった。

「常温に置かれた納豆は、普通なら開けた瞬間にアンモニア臭が立ち上るんです。
 でも、これはそれが全くなかったからです」

(やはり、三井田さんは味覚だけじゃなく嗅覚も化け物だな!)

三井田さんの即答に度肝を抜かれた。

10点先取した三井田さんは次の問題を選択した。
「加工品の10でお願いします」

すると今度はスタッフがアイマスクを配った。

「今からスタッフが皆さんの口の中にある加工品を一匙投入します。
 それがどこのメーカーの何という商品か当ててください」

(目隠しする必要はあるのか?)

と考えながら、上を向いて口を開けた。

「よーい、スタート!」
合図と同時にスタッフがスプーン一匙のナニかを口の中に入れた。

口に広がったのは、フリーズドライの納豆の香ばしさと、舌を刺激する絶妙な酸味。

納豆ふりかけ……それも、梅風味だ。
 どこだ、どこのメーカーだ……!?

脳内データベースを必死に検索していると、そのわずか1秒後。

ピンポーン!!

非情な電子音がスタジオに鳴り響いた。
またしても、三井田さんだ。

(これも分かったのか?)

「三井田さん!答えをどうぞ!」

これまで三井田さんを君付けで呼んでいたジモンさんが、
急にさん付けで呼んだのは、圧倒的な強さに敬意を持ち始めた表れかもしれない。

「野呂食品さんの納豆ふりかけ 梅風味」
「正解!!どうしてわかりました?」
「梅風味の納豆ふりかけは野呂食品だけなので…」

この問題は僕の脳内データベースには無かったので、完敗だった。

超難関カルトクイズのはずが、三井田さんはいとも簡単に瞬殺し、第1ラウンド同様、開始早々2問連取した。

(このまま三井田さんが独走して優勝?
 でも、僕が1問も正解しないで終われば、
 納豆開発委員会の名が廃る)

楽しむだけの決勝ラウンドだったが、いきなり逆境に追い込まれ、急に恐怖と焦りに襲われた。

(なんとか一矢報いなければ…)

第8章  第10章

第1章はこちらからどうぞ

#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #ドラマ脚本 #TVチャンピオン #テレビ東京

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